カミルの魔術
翌朝、カルマはカミルに顔を小突かれて起きる。
「おい。起きろカルマ」
「……早いね。」
「当たり前だ。狩人の朝は早い。魔術の練習をするんだろう?いいから早く起きろ。」
カルマは目を細めながらカミルの顔を見る。
「……きみ、一応従者なんだよね。」
カルマが怪訝な顔をしながら問いかける。
「なんだ。主の自覚がようやく出てきたのか。」
「従者の自覚も持ってほしいものだよ……。」
カルマは起き上がり顔を洗うと、昨日の魔導書を広げ始める。
「カミル、一応お勧めの魔術を4つピックアップしたから、その中から君が選んでくれ。」
「わかった。」
「一応言っておくけど、目的は君の多量な魔力を消費することだけど、できれば戦いの中で実用できるものの方がいいと思うから。」
「私は魔術を使いながら戦うなど、器用なことはできないぞ?」
「簡単な物を選んだから、将来的に実用できれば程度で思ってくれればいいよ。」
「了解した。」
「うん。じゃあ一つ目は〈攻撃系 基礎魔術〉だ。」
カルマは一つの本を掲げながら魔術の種類を伝える。
「これを選んだ理由は一つ、僕が直接教えることができるから。」
「うむ。なるほど。」
「二つ目、〈強化系 基礎魔術〉
これは単純に君の戦闘スタイルに合っているから。それに魔力量が多い人と強化系魔術は相性がいい。
問題はコントロールが必要になるから扱えるかどうかだね。」
「……。」
カミルは眉を顰めながら聴いている。
「三つ目〈防御系 基礎魔術〉
個人的にはこれが一番おすすめかな。そんなに難しくない魔術だし。汎用性も高い。
回復魔術や結界術は専門性が高いからね。防御魔法くらいがいいよ。」
「ふむ。最後は?」
「んー最後は一応入れておいた程度だけど、〈召喚術〉」
「それこそ専門性が高くないか?」
「まぁ、そんなんだけどね。召喚術は少し意味合いが違うんだ。」
「意味合い?」
「召喚術は魔力コントロールも技術もいらない。発動方法は最も簡単なんだ。」
「何か問題があるのか?」
「召喚するためには魔獣と契約する必要がある。これが一番問題。」
「なるほど。」
「しかも魔獣が契約に合意の意思を示す必要があるから。何らかしらの方法で服従させるしかない。」
「なるほどな。契約してしまえば発動するのは簡単だが、その契約が困難と…」
「まぁ。まず、魔獣は人を見たら襲ってくるしね。それに、契約の合意の意思を見せるほど知性のある魔獣も少ない。」
「さあ、カミル、選んでいいよ。」
……。




