王位継承問題
カルマが魔導商店を出て、話しかけられた女性はアマンダと言い。元はミルズ王国の秘書官をやっていたそうだ。
現在の王はドルドスといい、ドルドスが王位を継承する前、ドルドスの父が王だった頃にアマンダは王家に勤めていたという。
先王は偉大な王だったそうだ。王には2人の子がいて、アマンダは兄の第一王子グラリスの秘書官だった。
弟の第二王子は現王のドルドスだ。
第一王子グラリスは人格者で、誰に対しても平等で優しく、そして民を想う王の資質のある人物だったそう。
それに比べ第二王子ドルドスは身勝手で他者を蔑む様な人物であり、誰しもがグラリスが王の後継となると思っていた。
そんな中、王が急死した。突発性の病によるものだったそうだ。
そして、問題が起こる。
それは王が残した遺言だ。この世界での遺言は魔導符と呼ばれる紙に、残したい意思を持って魔力を込めることで、その意思が文字となり、魔導符が残る限り、本人の魔力を刻むことができる。
その魔力こそが本人が残したことの証明となるのだ。
王が残した魔導符ではこのように書かれていた。
"王の地位、資産、権威、統治権、その全てを第二王子ドルドスに継承する"
それを聞いた王家の者達は愕然とした。
まさか、偉大な兄王グラリスではなく、暗君となる可能性を秘めたドルドスが王位につくとは、この時まで誰も思わなかった。
それからドルドスはこの国の王となり、絶大な権力を持った。
それに反発したグラリス派の兵隊が反乱を起こしたという。
ハウロス達、カストリア兵が援助のためミルズへ来たのもその時期だ。
グラリス派の兵達はドルドスと国軍に鎮圧され、処分された。
兄である元第一王子グラリスも国のどこかに幽閉されてしまったが、その居場所すらわからないという。
そして、カルマはアマンダにグラリスを救い出してほしいと懇願された。
彼女は涙を流して見ず知らずのカルマに頼んだ。
きっと藁をも掴む想いだったのだろう。
....
「と……いうことなんだけど。」
「なるほどな。だが、それは私たちにとっては好都合だろう」
「と、いうと?」
「バランの母を奪還した後の問題があったが、グラリスを解放し王位をグラリスのものになれば解決するだろう?」
「んー、まぁ…でも現王を失脚させて、どこかに幽閉されているグラリスまで救い出すって難しくないか?」
「まだ、調査の必要があるな。」
「でも、失脚させることはできるかもしれませんよ。」
「え?」
「元々、グラリスが後継としてふさわしいと思われていたんです。今もドルドスに不信感を持つものは多いでしょう。それに、先王の急死、そして遺書、そんな都合の良い話がありますかね?」
「ドルドスが先王を消した…?まぁ、確かに、急死したのにしっかりと遺書は残してあるし、しかも愚かな次男を王に据える奇行……」
「それほど、当時のミルズ王国は混乱そのものでしたよ。」
「よし、じゃあ明日から、各々調査しよう。くれぐれも王宮には近づかないでね」
「了解」「わかりました。」
「あと、カミル、明日の午前中少し時間ある?
魔導書から使えそうな魔術をやってみようよ。」
「ああ、わかった。すまないな。」
こうしてこの日の打ち合わせは終わり、それぞれが睡眠をとる。明日は作戦実行のための調査と、カミルの魔術の練習を行うこととなった。




