闇商店
翌日、カルマはハウロスに教えてもらった商店に行くことにした。頭から頭巾を被り、衛兵に見つからないよう注意を払って路地裏を進む。
ハウロスに言われた場所まで到着すると、そこには既に廃業したと見られる古びた喫茶店があった。
「ここ……?」
カルマがガタついた扉を引っ張ると鍵がかかっておらず、恐る恐る中に入る。
「すみませーん。ん?」
中は人が住んでいる気配がなかったが、奥に地下へと降りる階段があることに気づく。
カルマはゆっくりとその階段を降りる。
階段を恐る恐る降りると、カルマはその光景に驚いた。
そこには天井が高く、入口や一階部分の大きさとは裏腹に広いスペースが確保されており、四方の壁には床から天井までびっしりと魔導書が並んでいたのだ。
「すごい……」
カストリアに魔導商店はなかったので、カルマはノーリエの家にある魔導書のほぼ全てに目を通していた。
この商店にはその何倍、何十倍もの魔導書があるのだ。
「なかなかのもんじゃろう。魔導書の数でいえば他国の一般的な魔導商店よりも多いぞ。」
カルマが驚いていると、老人が本棚の奥から姿を現す。
「あなたはここのお店の人?」
「ああ、そうじゃ。この商店を営んでいる。ユバルバじゃ。ここは事情ある者が集まる裏の商店、お主がどんな人物かは聞かん。何時間でも見ていくといい。」
「いいんですか!」
「ああ。ええよ。」
見た目はフードを被った不気味な老人であったが、カルマはユバルバの言葉に目を輝かせた。
そしてカルマは片っ端から本を読む。
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それから数時間が経った。カルマは魔導書を読むことに集中しすぎてしまったと反省する。
読んだ本の中から自分の魔術の向上に必要な魔導書と、カミルに合う魔導書を合計7冊ほどピックアップし、ユバルバに声をかける。
「これを買っていってもいいですか?」
「もちろんじゃ。毎度どうも。」
カルマは購入した7冊を抱え、今日のところは帰宅する。
「ユバルバさんどうもありがとう。明日か明後日か、近いうちにまた来ます。」
「ああ、待っておるよ。」
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カルマは魔導書を抱え地上へ出る。
宿へ帰ろうと歩き出すと路地の向こう側から人影が見える。
「あのすみません!」
「!!」
カルマは声をかけられたことに驚き、慌ててフードで顔を隠し様子を伺う。
その人物は衛兵などではなく、頭から頭巾を被った女性であった。
「その眼帯...あなたがカルマ殿ですか?」
「え?どうして俺を?」
カルマはしまったと思った。その女性は衛兵には見えなかったので安易に反応してしまったが、ミルズの関係者である可能性は十分にあると考えた。
「あなたに内密にお話があります。」
「あなたはだれ?」
カルマは警戒しながら問いかける。
「昨日あなたが少年を助ける為に、衛兵と戦士に狙われそれを退けたことは知っています。
そんなあなたに頼みがあるのです。
安心してください。私はあなたの味方です。」
「味方……?」
___
その頃、宿屋では__
「ボス遅いな。大丈夫かな?」
「ハウロス、お前が紹介した商店というのは大丈夫なんだろうな?」
「ミルズの兵の息がかかってないのは確かだよ。」
「それも数年前の話だろう?」
ガチャッ
そんな話をしていると、カルマが扉を開け部屋に戻る。
「ボス!」
「ごめん、遅くなった。」
「なにかあったんです?」
「いや、魔導書を読み漁ってて遅くなったんだけど、ちょっと進展もあってね。」
「なんだ。話してみろ。」
カルマは部屋に着くやいなやハウロスとカミルに追求される。
「いや、魔導商店をでたらとある人に話しかけられてさ。」
カルマは今日起こった出来事を振り返り2人に話し始める。




