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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編
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闇商店


 翌日、カルマはハウロスに教えられた商店へ向かった。頭巾を深くかぶり、衛兵の目を避けるように路地裏を進む。


 指定された場所に辿り着くと、そこにあったのは廃業したらしい古びた喫茶店だった。


「ここ……?」


 軋む扉に手をかける。鍵はかかっていない。

 慎重に中へ足を踏み入れる。


「すみませーん……?」


 返事はない。人の気配もない。

 だが奥に、地下へ続く階段があるのに気づく。


 カルマは息を整え、ゆっくりと降りていった。


 そして、目に飛び込んできた光景に思わず息を呑む。


 天井は高く、地上の狭さが嘘のように広い空間。

 壁一面、床から天井までびっしりと魔導書が並んでいる。


「……すごい」


 カストリアには魔導商店がなかった。

 ノーリエの家の魔導書はほぼ読み尽くしている。だが、ここは桁が違う。


「なかなか壮観じゃろう。」


 低い声が響き、本棚の奥から老人が姿を現す。


「魔導書の数でいえば、他国の並の商店より多いぞ。」


「あなたが……?」


「ああ。この店の主、ユバルバじゃ。」


 フードの奥から細い目がこちらを覗く。


「ここは事情ある者が集う場所。お主が何者かは聞かん。欲しい本を選べばよい。時間も気にせんでいい。」


「いいんですか?」


「本は読まれてこそ価値がある。好きなだけ見ていけ。」


 不気味な風貌とは裏腹に、声はどこか穏やかだった。


 カルマの目が輝く。


 そして次の瞬間には、本棚の間を縫うように歩き回っていた。



 数時間後。


 カルマはようやく顔を上げた。


「……読みすぎた」


 自分でも苦笑する。


 厳選した七冊を抱え、ユバルバの元へ向かう。


「これ、買ってもいいですか?」


「もちろんじゃ。毎度あり。」


 老人は本の背を一冊ずつ確認し、にやりと笑う。


「……ほう。なかなか良い目をしとる。」


「え?」


「いや、独り言じゃ。」


 カルマは首をかしげつつ、代金を払い本を抱える。


「ありがとうございました。近いうちにまた来ます。」


「ああ。待っておるよ、若き戦士よ。」


 


 路地に出る。


 人影が一つ、向こうから歩いてくる。


「あの、すみません。」


「……!」


 カルマは反射的にフードを深くかぶる。


 衛兵ではない。頭巾を被った女性だ。


「その眼帯……あなたがカルマ殿ですか?」


「……どうして俺を?」


 不用意に反応したことを一瞬で後悔する。


「あなたに内密のお話があります。」


「誰だ?」


 警戒を崩さない。


「昨日、少年を助けるために戦士と戦ったでしょう。

その件で、あなたに頼みがあります。」


「……味方だって言うのか?」


「ええ。少なくとも、あなたの敵ではありません。」


 フードの奥の目が、真っ直ぐこちらを見ていた。


「話だけなら、聞く。」



 その頃、宿屋では。


「ボス、遅いな。大丈夫かな。」


「ハウロス。お前が言っていた店、本当に安全なんだろうな。」


「兵の息はかかってません。少なくとも俺が知っている限りは。」


「“限り”か。」


 カミルが腕を組む。


 その時、扉が開いた。


「ボス!」


「ごめん、遅くなった。」


「何かあったのか?」


「魔導書に夢中になってただけ……って言いたいところだけど、少し進展もあってね。」


 二人の視線が鋭くなる。


「どういうことだ。」


「店を出たところで、ある人に声をかけられた。」


 カルマは荷物を置き、今日の出来事を語り始めた。

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