歓喜の宴
「カミル!」
ミドがやってきてカミルに抱きつく。
「心配かけたようだね、ミド」
「間に合って良かった。あなたを失っていたらギルに顔向けできないわ。」
「すまないな。ありがとう。」
「僕が一日で結界術を使うことができたのはミドさんのおかげなんだよ。」
「どういうことです?」
「ミドさんはゲド族で唯一、カミルの症状に気づいていたんだ。そしてその対処法も。
だけど、魔術士ではないミドさんには結界術を使う程の技量はなかった。」
「そこにボスが現れた…と」
「そういうこと。ミドさんの知識と僕の魔力コントロールがあったからこそ助けることができたんだ。」
「カルマ君。私からもお礼を言うよ。ありがとう。」
ミドはカルマに深々と頭を下げる。
「大丈夫だよ。ミドさん。役に立てて良かった。」
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その晩はゲド族の宴が開かれた。
カルマとハウロスもその宴に参加した。
その夜は飲んで食べては踊って、まさにどんちゃん騒ぎの夜であった。
引きこもっていたミドまでもが酒で顔を赤らめ騒いでいる。
「ボス、旅っていうのも悪くないですね。」
「そうだね。」
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次の日、カルマ達はこの集落を出るべく荷物を背負い、家を出る。
「お?」
すると扉の前にカミルが立っている。
「君に一つお願いがあるんだが」
「なに、どうしたの?」
「私ともう一度戦え!」
「え…?どういうこと」
「私は戦士ギルの妹だ。そんな私が君に一度敗れた。」
「敗れたって勝つために戦ってないし、君も意識なかっただろ?」
「そうだ。だからこそだ。私は意識ある状態で君としっかり戦いたい。君はその歳で凄腕の魔術と剣の使い手なのだろ?」
「えー…僕にメリットないし……」
「しょうがないな。私が負けたら君の従者となろう。」
「お、従者獲得のチャンスですね!」
「いや従者はもういいよ…」
「すみませんなカルマ殿。言い出したら聞かなくて…」
長老が申し訳なさそうにカルマに謝る。
「長老、"アレ"はあるか?」
「ああ、持ってこよう。」
カミルが長老に何かを持ってくるように伝える。
カルマ達は場所を移動し、森の開けた場所で向かい合う。
「さっき言っていたのは"ソレ"か」
「ああ、これが私の双刃弓だ。」
それはカミルの武器で他のゲド族の物より大きな弓で、両側に刃が付いている。
「戦うなら僕も本気で行くからね。」
「ああ。頼む。ではいくぞ」




