歓喜の宴
「カミル!」
駆け寄ってきたミドが、勢いのままカミルに抱きつく。
「心配をかけたようだな、ミド」
「……間に合ってよかった。あなたを失っていたら、ギルに顔向けできないわ」
「すまない。ありがとう」
「僕が一日で結界術を使えたのは、ミドさんのおかげなんだよ」
「どういうことです?」
ハウロスが首を傾げる。
「ミドさんは、この集落で唯一カミルの症状に気づいていた。そして対処法も知っていた。でも……」
「私は魔術士じゃない。結界を張れるほどの技量はなかった」
「そこにボスが現れた、と」
「そういうこと。ミドさんの知識と、僕の魔力コントロール。どっちかだけじゃ無理だった」
ミドが静かに頭を下げる。
「カルマ君。ありがとう」
「大丈夫だよ。役に立ててよかった」
カルマは少し照れたように笑った。
⸻
その晩、ゲド族は宴を開いた。
焚き火がいくつも灯り、肉が焼かれ、酒が回る。
歌声と足踏みの音が森に響いた。
引きこもっていたミドまでもが杯を掲げ、顔を赤くして笑っている。
「ボス、旅って悪くないですね」
「そうだね」
カルマは火を見つめながら、小さくうなずいた。
⸻
翌朝。
荷を背負い、家を出たところでカルマは足を止める。
「……お?」
扉の前に、カミルが立っていた。
「君に一つ、お願いがある」
「なに?」
「私と、もう一度戦え」
「え?」
「私は戦士ギルの妹だ。そんな私が、意識のないまま敗れたままでいいはずがない」
「勝つために戦ったわけじゃないし、君も正気じゃなかったよ?」
「だからこそだ。今度は意識ある状態で、正々堂々と」
「僕にメリットないよね……」
「私が負けたら、君の従者になろう」
「お、従者ゲットのチャンスですね!」
「いらないよ従者……」
長老が苦笑する。
「申し訳ない。言い出したら聞かぬのだ」
カミルが長老を振り返る。
「“アレ”はあるか?」
「ああ。持ってこよう」
森の開けた場所。
向かい合う二人。
「それが“アレ”か」
「ああ。私の双刃弓だ」
大きな弓。その両端には刃が仕込まれている。
射撃も斬撃も可能な武器。
「戦うなら、本気でいくよ」
「望むところだ」
風が抜ける。
「――いくぞ」




