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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編
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解呪


 カルマが剣で削った跡は、魔法陣だった。

 カミルを囲うように、正確な線が地面に刻まれている。


「あれは……結界術の魔法陣?」


 カルマは一歩下がり、手をかざす。


「――抗魔結界」


 足元の魔法陣が淡く光を放つ。

 光は円を描きながら立ち上がり、やがて水晶のような半透明の殻となってカミルを包み込んだ。


「うぅ……う……」


 暴れていたカミルの動きが、徐々に鈍くなる。

 やがて力が抜けるように、その場に崩れ落ちた。


 眠るように、意識を失う。


 



 


 しばらくして。


 カミルはゆっくりと目を開けた。


「……ここは」


「おお、カミル。わかるか?」


「あれ?……長老?」


 混乱した様子で周囲を見渡す。


 長老は、これまで自我を失い暴れていたことを静かに説明した。


「私は……取り憑かれていたのか?」


 驚くほど落ち着いた声だった。


「いや、取り憑かれてなんかいないよ」


 カルマが答える。


「ボス、どういう状態だったんです?」


「昔、カストリアの魔術士から聞いたことがある。

 悪魔憑きや呪いって言われるものの多くは、魔術か――魔力の暴走だって」


「魔力の暴走……」


「ハウロス、君は魔力のコントロールが上手いよね?」


「まあ……それくらいしか取り柄が」


「魔力は魔術士だけのものじゃない。誰の体にもある。

 魔術士はそれを意識的に使うけど、普通の人も無意識に少しずつ放出してる。余った魔力を自然に逃がしてるんだ」


「それが……?」


「カミルは体内の魔力量が、たぶん普通よりかなり多い」


「私が……?」


「でもコントロールができていない。

 発散が追いつかないと、魔力は溜まり続ける」


「……やがて?」


「限界を超えると、暴走する。

 戦士の間では“狂人化バーサク”って呼ばれてる」


 ハウロスの顔が強張る。


「英雄レインの……」


「うん。最終的には石化する」


 集落の空気が凍る。


「だから急いだんだ。石化が始まる前に、魔力を抜く必要があった」


 


 長老がその場に崩れ落ちる。


「カミルを悪魔憑きと決めつけ……石にしてしまうところだったのか……」


「ここは魔術が広まってないんだ。知らなくて当然だよ」


 カミルが静かに言う。


「長老のせいではない。これは私自身の未熟さだ」


「あの結界は?」


「あれは基礎結界術の抗魔結界。

 対魔術士用で、内部の魔力を徐々に奪う結界だよ。本来は広範囲に張るものだけど……今回はカミル一人分で十分だった」


「言ってくだされば俺も――」


「時間がなかったんだ。ごめん」



「助けてくれて、本当に感謝する」


「……ありがとう」


長老とカミルが、深く頭を下げる。



 カルマは少し照れくさそうに笑う。


「うん。間に合ってよかった」


 ハウロスが横で小さく息を吐く。


「さすがですね、ボス」


「たまたまだよ」


 でもその目は、少しだけ誇らしげだった。


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