カルマとカミル
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カルマは陽が落ちてから戻ってきた。帰るなり借りてきた魔導書を広げ、灯りの下で黙々と読み続ける。
「ボス、まだ寝ないんですか?」
「ああ、ごめん。うるさかった? もう少ししたら寝るから、先に休んでて」
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翌朝。
ハウロスが目を覚ますと、外が騒がしい。嫌な予感がして横を見るが、カルマの姿はない。
「……まさか」
急いで外へ飛び出す。
集落の中央に人だかりができていた。ざわめきの中心にいたのは――カルマと、牢から解き放たれたカミル。
今にも飛びかかりそうな姿勢で、白目を剥いたまま唸っている。
「長老! これは……!」
「カルマ殿が朝早く来られてな……カミルを出してほしいと」
「なぜそんな……」
「悪魔を祓える、と」
「え?」
ハウロスは息を呑む。
(ボス……悪魔祓いなんて、どうやって――)
カルマは剣を抜かず、素手で構えている。
次の瞬間、カミルが地面を蹴った。
一直線に突っ込み、拳を振り下ろす。
カルマは真上へ跳躍。
拳が地面に叩きつけられた瞬間、轟音とともに土がえぐれた。
「……すごい威力だな」
空中で体勢を整え、手をかざす。
「炎の玉」
二発の炎弾が一直線に飛ぶ。
「うがぁぁ!」
カミルはそれを拳で弾き飛ばし、再び跳躍する。
「炎の鞭」
炎が紐のように伸び、カミルの体を絡め取る。勢いを殺し、そのまま地面へ引き戻す。
着地と同時に左手を地面へ。
「範囲氷結」
足元が瞬時に凍りつき、動きを封じる。
「氷の鞭」
炎の鞭が凍り、強固な氷となって体を固定する。
完全に拘束。
それでもカミルは唸り、暴れ続ける。
「よし……これで」
カルマはゆっくりと歩み寄る。
ミドから借りた魔導書を取り出し、剣を抜く。そしてカミルの足元の地面を、一定の形で削り始めた。
「ボス! 何を――!」
「大丈夫。……まぁ、見てて」
集落の者たちが固唾をのむ。
カルマの刃が地面に刻む線は、ただの傷ではなかった。
何かの図形を描いている。
静まり返った空気の中、カミルの唸り声だけが響いていた。




