軽蔑
《魔創暦827年カルマ誕生から7年》
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それから半年の月日が流れた。
「見ててね……」
カルマの手のひらの上に、ちり、と火花が散った。
次の瞬間、小さな炎が弾ける。
「こ、これは……火花!?」
「へへ、できた!」
ノーリエは思わず立ち上がる。
「七歳で魔術を発現させるなんて……君は本当に規格外だ」
カルマは誇らしく笑った。兄に少し近づけた気がした。
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その帰り道。
胸が弾んでいた。
早く父さんに見せたい。兄さんにも話したい。
その時——
「アラモのくせに生意気なんだよ!」
声が聞こえた。
路地の奥、少女を囲む少年たち。
「やめなよ!」
カルマは思わず駆け出す。
少女の目は怯えきっていた。
“アラモ”。
それはこの世界の3つあるミドルネーム[グラン・ミラ・アラモ]のうちの一つだ。古くは階級の差として用いられていた。そして"アラモ"はその中でも最も低い位にあたる。
それが理由だと聞いた瞬間、カルマの中で何かが弾けた。
そんなことで人を決めるなんて。
くだらない。間違ってる。
——許せない。
「離れろ!」
カルマは少年の1人にバチン、と頬を叩かれる。
視界が揺れ、眼帯が地面に落ちた。
——しまった。
左目に空気が触れる。
「なんだよ……その目」
カルマはゆっくり顔を上げた。
怒りで、視界が赤く染まる。
胸の奥が、熱い。燃えるみたいに。
「ひっ……緋眼……!」
少年たちの顔色が変わる。
カルマは知っている。この目が何を意味するか。
でも今はどうでもよかった。
守りたい。
止めたい。
——それでも足りない。
一瞬だけ、心の底で別の声が囁く。
“全部、消えてしまえばいいのに”
左手に炎が生まれる。さっきより強い、荒い魔力。
「許さないぞ」
その声は、いつものカルマの声ではなかった。
少年たちは悲鳴を上げ、逃げ去った。
路地に静寂が戻る。
カルマは立ち尽くしたまま、自分の手を見つめる。
炎がまだ、消えずに揺れていた。
それは——
彼自身の心の奥に生まれた“何か”のようだった。
〈頭の中の整理用 メモ〉
3種類のミドルネーム
・グラン
・ミラ
・アラモ
上位-中位-下位と差別的な使われ方をしている。




