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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
二章 ミルズ王国 動乱編
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牢獄の少女



 カルマとハウロスは、使われていない家屋を借りることになり、ひとまず腰を下ろした。


 陽が落ちるまでまだ時間がある。カルマは一人、外へ出て集落を歩いてみることにした。


 子供達は弓の練習をし、

 大人達は木材や食材を運び、

 あちこちで談笑の声が上がっている。


 森の奥とは思えないほど、穏やかな光景だった。


 ……


 集落の外れまで歩いた時だった。


 奥の大木に、木材で組まれた不自然な建造物がぶら下がっているのが見える。


 近づくと、それは牢のようなものだった。


 中には、部族と同じ装束を着た一人の少女が閉じ込められている。


 カルマと目が合った瞬間、少女は喉の奥から唸り声をあげた。


「うーっ……!」


 今にも飛びかかりそうな勢いで牢を揺らし、カルマを威嚇する。


 その目は焦点が合っていない。


「すみません。変なものを見せてしまって。」


 いつの間にか、長老が隣に立っていた。


「あの人は?」


「あやつはカミル。この集落で育った者です。」


「どうして、あんな……」


「母親を亡くしてから、手がつけられぬほど暴れるようになりましてな。」


「だから牢に?」


「……あやつは“悪魔憑き”なのです。」


「悪魔憑き……?」


「徐々に凶暴になり、今では言葉もほとんど通じません。」


 少女は再び牢を揺らす。木が軋む音が森に響いた。


「さ、あまり近づかぬ方がよい。戻りましょう。」


「……はい。」


 カルマは最後にもう一度だけカミルを見ると、集落へ戻った。



 その夜、長老達と共に食事を囲む。


 森の実りと、狩猟で得た獣の肉。豪快に焼かれたそれは驚くほど美味だった。


 だが、カルマの頭からは牢の少女の姿が離れない。


「長老。さっきのカミルの話、詳しく聞いてもいいですか?」


「気に掛かりましたかな。」


「僕と同じくらいの子が、ああやって繋がれてるのを見ると……」


 長老はゆっくりと頷いた。


「カミルは昔は元気な娘でした。母と、歳の離れた兄ギルの三人暮らし。」


「兄?」


「ええ。ギルは戦士になると言って集落を旅立ちました。一族総出で見送ったものです。」


 そこまでは希望の話だった。


「その後、母親が病で亡くなりました。医者もおらぬ森の暮らしです。珍しいことではありません。」


 そして、カミルは一人になった。


「カミルは私の家で引き取りましたが、部屋から出なくなりましてな。」


 そして、ある日。


「突然、家から出てきたかと思えば、暴れ出したのです。白目を剥き、まるで何かに操られているように。」


 男達が総出で取り押さえたという。


「その力は異常でした。」


 その後、正気に戻ったが――


「定期的に暴れるようになったのです。しかも、回を追うごとに間隔が短くなっていった。」


 つい先日。


「子供を襲いました。」


 命は助かった。だが、隔離が決まった。


「今は……寝ているか、暴れているかのどちらかです。」


 ……


 部屋に戻り、寝床につく。


「ボス、気の毒ではありますが……これはゲド族の問題です。あまり深入りしても。」


「うん……」


 カルマは天井を見つめる。


 森は静かだ。


 だが、あの少女の唸り声が、耳の奥に残っている。

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