森の集落
……
「くる!!」
次の瞬間、四方より大量の矢がカルマとハウロスに目掛けて飛んでくる。
ハウロスは魔鋼を広げ矢を防御し、カルマは炎の剣で矢を切って落とす。
「すみません。ボス、こちら側だけで手一杯でした。」
「うん。大丈夫。互いに自分の前だけ守ろう。」
矢がおさまり周囲が静まり返る。
……
カルマの背後からガサガサと草木をかき分ける音が聞こえる。
「……?」
森の中から出てきたのは1人の老人、手を挙げ敵意がないことを表している。
「すまんが。あなた方は魔人軍の者ではないですかな。」
「いえ、カストリアからミルズ王国へ渡る途中の者です。」
「ふぅ……」
老人が安心した様にため息をつくと周囲の森から弓矢を持った老若男女達が現れる。
「申し訳ない。勘違いをして攻撃してしまった。許してくだされ。」
「ああ、はい。それは大丈夫だけど、あなた達は?」
「私達は古くからこの森に住むゲド族の者。
「ゲド族..」
「近くに私達の集落がある。よければそこで話しましょう。」
カルマとハウロスはこの人達について行くことにした。
___
森の中を少し歩くと、木々の間に集落が形成されていた。
「これは……」
「こんな森の中に村が……」
「ここが私達の集落です。森の外から来られたあなた方には知られていない場所かも知れませんね。」
カルマとハウロスは長老だというこの老人の家に案内された。
話を聞くとこの集落に住むゲド族は魔創神グランが世界を開拓する以前からこの森に住んでいる原住民族なのだそうだ。
少し前、魔人軍の使者を名乗る魔人が来て、魔人軍の戦力となるように勧誘を受け、それを断ってから森の魔獣達が凶暴化し、手をつけられなくなったそうだ。」
「なるほど、それで森の奥地に来た俺達を魔人と勘違いした訳か…」
「はい…すまないことをしました。」
「いや、僕達も林道を外れて森の奥まで来てしまったから…。それと、女の人と叫び声が聞こえたけど、あれは一体..?」
「はい。うちの者が凶暴化した魔獣に追われていたので、仲間達が助けたところ。貴方たちが現れまして..」
「タイミングが悪かったんだな。」
「魔人軍はなんでここの人たちを勧誘に来たんですか?」
「私達は狩猟民族です。そしてその弓の腕はこの世界でも唯一のものだと思います。その力を欲したのでしょう。ですが、どこから私達のことを知ったのか…」
「なるほど……」
「お二人はミルズへ行かれるのでしょう。もう直ぐ日が落ちます。今日はここへ泊まって行かれてはいかがですか?」
カルマとハウロスは長老の言葉に甘え、ここに泊まることにした。いずれにしてもラダの森を抜けるにも数日かかるため、どこかで夜を明かす必要があったのだ。
野宿するにも魔獣のうろつく森の中だ。長老の提案は2人にとってもありがたいものだった。




