旅は道連れ
カルマが国門の近くまで来ると、まるで待ち構えていたかのようにカストリアの衛兵隊が整列していた。
(父さんの隊かな……?)
そう思っていると、一人の兵士が前に歩み出る。
「あ……」
「先日あなたに助けていただいた、ハウロス・ミラ・トリアです。隊長から聞きました。カルマ殿が本日旅立つと。」
「それで……お願いがあるのですが。」
「なんですか?」
次の瞬間、ハウロスはカルマの前に片膝をついた。
「俺を、あなたの従者にしていただけませんか?」
「……へ? 従者?」
この世界には“主従契約”という制度がある。
師弟関係のような形で結ばれることもあれば、主と召使のような関係になることもある。だが最も一般的なのは戦士団だ。
多くの戦士は戦士団に所属し、団長と主従契約を結ぶ。
ダグラスやフィルスのような単独行動の戦士は、むしろ少数派なのだ。
「つまり、ハウロスさんは僕についてくるってこと?」
「はい。すでにあなたの父上――隊長から許可はいただいております。」
(父さん……そんなこと一言も……)
「……でも、どうして?」
ハウロスは顔を上げ、まっすぐにカルマを見る。
「俺はこの衛兵隊、特にバトロフ隊長に返しきれない恩があります。ですがここは平和な国。恩を返す機会など、ほとんどない。
先日の魔人襲撃のとき、俺は命を賭してでも戦うつもりでした。だが、あっさりと倒された。あなたが来なければ、あの場は全滅していたでしょう。
カルマ殿。あなたの話は昔から何度も聞いてきました。隊長はあなたの話をする時、誰よりも嬉しそうにしている。
だから思ったのです。
あなたは強い。だが、まだ十二歳。世界を知らぬ子供でもある。
ならば――その旅を支えたい。
もしあなたに危険が迫るなら、俺が命に代えても守る。
それが、隊長への恩返しであり……命を救ってくれたあなたへの恩返しです。
どうか、よろしくお願いいたします。」
ハウロスは再び深く頭を下げた。
カルマは少し戸惑う。
正直、いきなり“従者”なんて重い。
でも――この真っ直ぐな気持ちを無下にするのも違う気がした。
「……まぁ、他国に行ったこともないし。案内してくれるなら助かるよ。」
「本当ですか!?」
「うん。よろしくね、ハウロスさん。」
「ですから、俺のことはハウロスと――」
「あーはいはい、ハウロスね。」
こうして――
カルマは新たな仲間を連れ、カストリアを後にした。




