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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
33/144

旅立ち


 数日後――


 カルマは荷物を肩に担ぎ、剣を携える。

 旅立ちの日だ。


 家には両親のほかに、イリーナも来ていた。



「あ……すみません。」


 扉をノックする音とともに、か細い声が響く。


「あなたは……」


「ノーリエさん!外に出るなんて珍しい。」


「君には世話になったからね。」


 バトロフは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにノーリエを快く招き入れた。

 ノーリエは照れくさそうに礼を言い、家の端へと静かに下がる。


 それを見て、カルマはくすりと笑った。


 バトロフはカルマの前に立つ。


「カルマ。今日はお前の旅立ちの日だ。まだ十二歳だが、その才能は天級の戦士たちのお墨付きだ。お前ならきっと立派な戦士になるだろう。


 だが――困ったことがあれば、いつでも帰ってこい。

 ここにいる皆は、いつでもお前の力になる。」


 その場の全員が、静かに大きく頷いた。


 バトロフは、器に並々と注がれた赤い液体をカルマに差し出す。


「これは……?」


「この国の伝統だ。戦士として旅立つ者は、ギラムの実のジュースを飲む。」


「ギラムの実って、町外れにたまに生えてるやつ?」


「そうだ。あれは“腐らない果実”と呼ばれている。もいで十年経っても水々しさを失わない。


 それを飲むことで、何事にも耐えられる強い意志を得られると言われている。」


「へぇ……」


 カルマは赤い果汁を見つめ、覚悟を決めるように一気に飲み干した。


「がっ!?!?」


 次の瞬間、喉を押さえて地面を転がる。


 焼けるように、辛い。


「カルマ!」


 イリーナが慌てて駆け寄る。


「はっはっは。言わなかったが、ギラムの実は激辛だ。」


「うぅ……辛い……」


「だが腐らないうえに栄養満点だ。旅先で困ったら食べるといい。」


 バトロフはギラムの実を一つ、カルマの荷に忍ばせた。


「父さんから多くは語らん。立派になって帰ってこい。」


「うん。父さん、ありがとう。」


 ティニエも涙をこらえながら近づく。


「どれだけ優秀な戦士になっても、あなたはあなたよ。

 いつでも帰ってきなさい。」


「うん。母さん。行ってくるね。イリーナも、ありがとう。」


 扉へ向かうカルマの肩に、ノーリエがそっと手を置く。

 言葉はない。ただ静かな微笑みだけがあった。


 イリーナはずっと下を向いている。


 扉を開けると、空がいつもより広く見えた。


 ――自分は今、人生の一歩を踏み出すのだ。


「カルマ!!」


 イリーナが外へ飛び出し、呼び止める。


「今の私には、まだあなたについていける力はない。でも……必ず、あなたの力になれるようになる。


 そしたら……私もあなたについていく……から!」


 カルマはふっと笑い、振り返る。


「イリーナと旅ができるの、楽しみにしてるよ。」


 そして、再び前を向いて歩き出した。


 イリーナは涙を流しながら、その背中が小さくなるまで見送った。

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