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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
31/136

別れ


 一行はカルマの家に到着する。


家の前にイリーナの姿もあり、カルマに気づくと抱きついてきた。

突然連れて行かれて1年も経ったのだ。心配してくれていたのだろう。


 家に入り、両親の無事を確認する。


ティニエは久しぶりに帰ってきたカルマを優しく抱きしめた。


「ちょっと離れていただけだよ。お母さん…」


「わかってるわ。でも嬉しいの。」


カルマはなぜか前世の記憶にある母親のことを思い出した。前世の小林涼太は母親にキツく当たっていた。

とても優しい母親だったのに…

だからこそ小林涼太は後悔していた。


 カルマはティニエに手を回し優しく背に添えた。

今度は後悔しないようにしよう……。

カルマはそう思った。



 その後、家族+フィルスで団欒の時間は続いた。


話題はフィルスの旅立ちの話へ、


「フィルスさんはいつ発つんです?」


「ああ。今日の夜にはこの国を出るつもりだ。」


「今夜!?そんな急でなくても……」


「いや、いいんだ。この国には十分滞在した。」



「お前の家は…ガラフ村だったか、家に戻るのか?」


「ああ、私はお前のように依頼を受けていないからな。」


「そうか。だが、また戦場で会うこともあるだろう。

その時は宜しく頼む。」


「ああ。」



___


そしてその晩、カルマはフィルスに呼び出される。


「カルマ、お前は15歳になったらこの国を出るのか?」


「うん、そのつもりだけど…」


「戦士協会の風習に捉われる必要はないからな。」


「え?」


「私は師に連れられ旅に出たのは8歳の時だった。」


「15歳よりも早く国を出るべき…と?」


「いや、そういう道もあるのだと言いたかっただけだ。力があるならば救える命もある。」


「……」


「では私は行く。」


「え!このまま行くの?」


「ああ、長居する気もないのでな。」


歩き出すフィルスを慌てて追いかけるカルマ。


「あ、あの、フィルス!最初は怖い人だと思ったけど、フィルスが先生でよかった、ありがとうございました!」


フィルスは最後に笑みを見せながら手を挙げ、去っていった。カルマはその後ろ姿を見えなくなるまで見送った。


___


 フィルスはカルマと別れ、1人歩く。夜空の星を見上げ、カルマとともに過ごした日々を思い返す。


(弟子とは不思議なものだな。私は別れも感謝も伝えることができなかったが...

いまなら届くだろうか。先生…ありがとう。)


___



 それから数日して、ダグラスもカストリアを離れるという。


「またいつでも帰ってきなさい。」


「無理しないでね。」


「はい。ありがとうございます。お母さん、お父さん。」


ダグラスはカルマの前に立つ。


「カルマ、いいかもっと強くなってお父さんやお母さんを守るんだぞ。」


「うん!」


「それと……」


ダグラスはカルマに近づく


「フィルスに言われたこと…俺も同じように考えている。」


「え?」


 カルマはフィルスに言われた言葉を思い出す。

"戦士協会の風習に捉われる必要はない"と。

 カルマは悩む顔をして俯く。


「まぁ、お前の人生だ。よく考えてみるといい。」


ダグラスはカルマの肩に手を置くと、そのまま後ろに振り返り歩いていく。


「兄さん!待っててね!強い戦士になって兄さんの助けになるから!」


「おう、楽しみにしているぞ!」


ダグラスはカルマに笑顔を向け去っていった。

 こうしてフィルスに続きダグラスも旅立っていった。

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