別れ
一行はカルマの家に到着する。
家の前にイリーナの姿もあり、カルマに気づくと抱きついてきた。
突然連れて行かれて1年も経ったのだ。心配してくれていたのだろう。
家に入り、両親の無事を確認する。
ティニエは久しぶりに帰ってきたカルマを優しく抱きしめた。
「ちょっと離れていただけだよ。お母さん…」
「わかってるわ。でも嬉しいの。」
カルマはなぜか前世の記憶にある母親のことを思い出した。前世の小林涼太は母親にキツく当たっていた。
とても優しい母親だったのに…
だからこそ小林涼太は後悔していた。
カルマはティニエに手を回し優しく背に添えた。
今度は後悔しないようにしよう……。
カルマはそう思った。
その後、家族+フィルスで団欒の時間は続いた。
話題はフィルスの旅立ちの話へ、
「フィルスさんはいつ発つんです?」
「ああ。今日の夜にはこの国を出るつもりだ。」
「今夜!?そんな急でなくても……」
「いや、いいんだ。この国には十分滞在した。」
「お前の家は…ガラフ村だったか、家に戻るのか?」
「ああ、私はお前のように依頼を受けていないからな。」
「そうか。だが、また戦場で会うこともあるだろう。
その時は宜しく頼む。」
「ああ。」
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そしてその晩、カルマはフィルスに呼び出される。
「カルマ、お前は15歳になったらこの国を出るのか?」
「うん、そのつもりだけど…」
「戦士協会の風習に捉われる必要はないからな。」
「え?」
「私は師に連れられ旅に出たのは8歳の時だった。」
「15歳よりも早く国を出るべき…と?」
「いや、そういう道もあるのだと言いたかっただけだ。力があるならば救える命もある。」
「……」
「では私は行く。」
「え!このまま行くの?」
「ああ、長居する気もないのでな。」
歩き出すフィルスを慌てて追いかけるカルマ。
「あ、あの、フィルス!最初は怖い人だと思ったけど、フィルスが先生でよかった、ありがとうございました!」
フィルスは最後に笑みを見せながら手を挙げ、去っていった。カルマはその後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
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フィルスはカルマと別れ、1人歩く。夜空の星を見上げ、カルマとともに過ごした日々を思い返す。
(弟子とは不思議なものだな。私は別れも感謝も伝えることができなかったが...
いまなら届くだろうか。先生…ありがとう。)
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それから数日して、ダグラスもカストリアを離れるという。
「またいつでも帰ってきなさい。」
「無理しないでね。」
「はい。ありがとうございます。お母さん、お父さん。」
ダグラスはカルマの前に立つ。
「カルマ、いいかもっと強くなってお父さんやお母さんを守るんだぞ。」
「うん!」
「それと……」
ダグラスはカルマに近づく
「フィルスに言われたこと…俺も同じように考えている。」
「え?」
カルマはフィルスに言われた言葉を思い出す。
"戦士協会の風習に捉われる必要はない"と。
カルマは悩む顔をして俯く。
「まぁ、お前の人生だ。よく考えてみるといい。」
ダグラスはカルマの肩に手を置くと、そのまま後ろに振り返り歩いていく。
「兄さん!待っててね!強い戦士になって兄さんの助けになるから!」
「おう、楽しみにしているぞ!」
ダグラスはカルマに笑顔を向け去っていった。
こうしてフィルスに続きダグラスも旅立っていった。




