カストリア襲撃⑧
煙が晴れ、中からダグラスの姿が見える。
雷を直撃したにも関わらずそれでもなお立つダグラスの姿。
「確かに…。日々世界の情勢は変わっていく。だが、戦士には変わらないものがあるのだ!」
「なんだ?それは」
「各国に属しない戦士という職業は、世界の均衡を保ち、平和を実現するために存在している。それが俺たち戦士というものだ。」
「古いな、まるで50年前の老戦士と話しているようだ」
「……皮肉だな。」
「?」
「お前はここで倒す!」
ダグラスは大剣をスサノーに向け振りおろす。
スサノーは手から電流のような魔力を放出し、その剣を防御している。
「ふ、力押しの一辺倒、芸がないな。」
「それはどうかな?」
ダグラスがニヤリと笑みを浮かべると、スサノーの後ろにある煙の中からフィルスが神速を使い現れる。
「神速無斬!」
その超スピードのまま、スサノーの背中を切り裂く。
「がっ……」
スサノーはよろけた後、バックステップで二人との距離を置く。
そして超広範囲の放電を行う。
「ぐっ…近づけない…」
ダグラスもフィルスも放電を防ぐのに手一杯である。
「天級剣士ダグラス、狂戦士フィルス、やはり侮れんな…だが、我々の目的はすでに達成している。
部下もかなり減ってしまったようだしな。
ここは退かせてもらおう」
「なっ貴様!まて!」
「いい。フィルス…あいつはまだ余力を残してる。
このまま戦ってもおそらく勝てん…」
魔人スサノーの後ろに門のようなものが現れ、そこにスサノーが入ると、その姿は消え去った。
「奴の魔術か?」
「いや、各地の襲撃の時も奴らは突然現れ、消えたようにいなくなる。おそらくそういう魔術を持ったものがいるのだ。」
スサノーが入ったその門は扉を閉ざすと、まるで砂のように崩れ消えていく。
そして、それはカストリア国内各地で起こった。
魔獣や魔人達は、突如としてその姿を消したのである。
こうして、一旦はカストリアに魔人の脅威はなくなった。
街の建造物の多くと一部の人達に被害が出たが、
大部分は衛兵達によって素早い避難ができており、最悪は防げたと言っていいだろう。
___
フィルスはカルマに向かって歩き出す。
(あ……)
「貴様はなぜここにいる?」
フィルスは激怒した表情でカルマ睨みつける。
「あ、いや…僕も役に立ちたくて…」
「貴様は修行したとはいえ、まだまだ非力な青二才だ!魔獣との戦闘は許可したが、魔人に遭遇していればタダでは済まなかったかもしれないのだぞ!」
「魔人…なら一人あったけど…」
「!?」
「カルマ、魔人に遭遇したのか?」
横で聞いていたダグラスが話に入ってくる。
「どんな奴だ」
「ラジャとかいう魔人…炎魔の配下とか言ってた」
「あの…変な術を使う魔人か」
「二人も戦ったの?」
「いや、雷魔と戦う前に絡んできたが無視してやった」
「……はぁ。」
「それで?カルマ、そいつはどうしたんだ。」
「とりあえず戦って逃げていったよ。」
「なに!?」
(今日この国に来ていた魔人はおそらく全員上級以上……そして、あのラジャとかいう魔人は応徳魔術持ちだった…)
「まぁ、いい。お前をもう見てやることもないしな。」
「どういう意味?」
「合格だと言ったはずだ。お前の修行は終わり、私はこの国を発つ。」
「え!もう行っちゃうの?」
「ああ、私のやることは終わったからな。」
「昔からこういう奴なんだ。まぁ、一回うちに帰ろう。久しぶりに戻ってきたんだ少しくらいゆっくりしてもいいだろう?」
「……まぁ、そうだな。」




