カストリア襲撃⑦
「おまえぇ!」
その光景を見た瞬間、カルマは地面を蹴っていた。一直線に魔人へと突っ込む。
「魔剣フレイア!」
炎の剣が唸る。
だが魔人は予知していたかのように、わずかに上体を逸らして回避した。
手を離されたフィルスが、地面に膝をつく。
「フィルス!!」
カルマが一瞬そちらへ視線を向けた――その刹那。
目の前にいたはずの魔人が、ばちばちと弾ける電流だけを残して消える。
「っ!?」
気配は、背後。
(速すぎる……)
振り向く間もない。
魔人はすでにカルマの背後に立ち、片手を向けていた。
「大放電!」
轟音とともに、雷の奔流が解き放たれる。
(やばい――この規模をまともに受けたら……!)
視界が白に染まった。
……
しかし、痛みは来ない。
目を開けると、目の前に立ちはだかる大きな背中。
大剣を構え、雷を真正面から受け止めているダグラスの姿だった。
「兄さん!」
やがて放電が収まる。
「弟が来たんだ……座り込んではいられないな。」
ダグラスは地を蹴り、跳躍。
「地砕剣!」
振り下ろされた大剣が地面を叩き割る。
魔人は間一髪で回避するが、凄まじい衝撃波が石畳を粉砕した。
「うっ、うわぁ!」
スサノーは即座に反撃する。
「電磁砲」
雷光が一直線に放たれる。
「くっ……避ければ街が……!」
「兄さん!」
ダグラスは退かない。
大剣を盾に、雷の奔流を受け止める。
「うおぉぉぉ!!」
雷光と火花が四散する。
やがて、光が消える。
「はぁ……はぁ……」
膝をつきかけながらも、ダグラスは立っていた。
その姿を見て、カルマは理解してしまう。
――自分では、まだ届かない。
「カルマ。こいつは〈緋衣の十魔〉の一人――[雷魔]スサノーだ。
お前が今、戦える相手ではない。」
低く告げる。
スサノーが鼻で笑った。
「ふん。人間はいつもそうだ。他人を思いやるふりをする偽善者の集団。
自分のためだけに戦えば、幾分か強くなれるものを。」
「お前たち魔人には分かるまい。それこそが戦士の強さの源だ。」
「話にならんな……」
スサノーは冷ややかに続ける。
「お前たちは、我らの目的を“支配”と呼ぶ。
だが問おう。人間に支配欲はないのか?」
「……」
「魔創神グランがこのグランダムを創って以来、世界は国へと分かれ、統治し、争い、戦を繰り返してきた。違うか?」
「それは世界の繁栄のためだ。
お前たちのように、無差別に人を襲うのとは違う……!」
「我々も同じだ。支配と繁栄のために動いているだけ。
そして私は、魔人軍こそがそれを成すと信じた。
だからこうして〈緋衣の十魔〉としてここにいる。」
雷が指先で弾ける。
「世界も、人も、時とともに変わる。
今まさに、この世界は変わろうとしている。
変わりゆく世界に――貴様らは邪魔なのだ。」
スサノーが手を掲げる。
空気が震え、雷光が凝縮する。
「兄さん!」
巨大な雷が、ダグラスへと降り注ぐ――。




