カストリア襲撃④
大剣。
身の丈に迫るほどの巨大な刃を、魔人は両手で持ち上げている。
(でかい剣……パワーはありそうだけど、あれじゃ速くは振れないはずだ)
カルマは地を蹴った。
小さな身体が弾丸のように前へ出る。
間合いに入る寸前、フレイアの炎が噴き上がった。
「はああっ!」
火花を散らして斬り込む。
魔人は迎え撃つように大剣を振る。
「――速い…!」
重いはずの刃が、空気を裂く。
質量を感じさせない、鋭い風切り音。
カルマは咄嗟に頭を沈め、すれ違うように回避する。
その瞬間――
耳元を掠めた刃が、遅れて“重さ”を叩きつける。
ゴウッ、と鈍い圧。
遅れて押し寄せる質量の気配。
「……?」
魔人は口角を上げた。
「どうした? その炎の剣の強さ、見せてみろよ」
カルマは息を吐く。
(大丈夫。動きは見えてる。力勝負なら負けない)
再び踏み込む。
距離が縮まる。
魔人は、先ほどまで両手で握っていた大剣を、今は片手で軽々と持っていた。
「……!?」
振り下ろす。
だが――
(重い……!?)
剣が、振り抜けない。
まるで刃の先に巨大な錘でもぶら下がったかのように、腕が引きずられる。
その直後、衝撃が体を走る。
弾き飛ばされたのはカルマだった。
「なっ……!?」
炎を纏った一撃が、軽い木剣のように跳ね上げられる。
魔人の大剣が地面を叩きつける。
土石が爆ぜ、衝撃波がカルマを吹き上げる。
カルマは着地するが、強烈な違和感を覚える。
地面に足首までめり込んでいる。
「動け……ない?」
魔人が一歩、近づく。距離は三メートルほど。
「はっ……軽いな。お前も、その剣も」
「何をした……!」
炎が、わずかに揺らぐ。
地面が柔らかいわけじゃない。
足が重い。
(違う……地面じゃない。俺が重い……?)
魔人はゆっくりと歩く。
焦りはない。逃がすつもりもない。
“届く距離”の中。
その視線が、魔剣フレイアへ落ちる。
「その炎……応徳魔術か?」
「……だったらどうした!」
「おまえ、名前は?」
「カルマ・ミラ・フィーラン」
魔人は笑う。
「そうか、カルマ。俺の名はグラヴィス」
炎の揺らめきを見下ろしながら。
「いずれ緋衣の十魔になる者だ」
「緋衣の十魔……?」




