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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
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カストリア襲撃③


 バトロフは思い出す。


 十二年前。

 カストリア周囲で発生した魔獣の調査のため、国門の外へ出た日のことだ。


 血にまみれ、倒れていた四歳ほどの子ども。

 それがハウロスだった。


 怪我は深かったが、一命は取り留めた。

 だが記憶は混濁していた。自分の出自も、両親の顔も思い出せない。


 覚えていたのは――


 自分の名前と、

 母と二人で“何か”から逃げていたということだけ。


 衛兵隊は数日かけて周辺を捜索した。だが母親らしき人物は見つからなかった。


 行き場をなくした少年は、兵舎に迎えられた。


 バトロフは、兵舎に泊まる日は必ずハウロスの様子を見に行った。

 少年はよく笑った。よく働き、誰よりも礼儀正しかった。


 そして――


 異様な才能を持っていた。


 魔鋼。

 魔力を流し込むことで形状を変える基礎訓練用の鉱物。


 熟練の魔術士でも、ゆっくりと時間をかけて形を変えるのがやっとのそれを――


 ハウロスは、まるで粘土でも弄ぶように自在に操った。


 薄く広げ、

 槍にし、

 盾にし、

 密度を極限まで高め、刃へと変える。


「……どうやっている?」


「作りたい形を、思い浮かべているだけです」


 それだけで。


 天才だった。


「すごい才能だ。魔術士会にでも行ってみたらどうだ。良ければ紹介するよ。君ならきっと素晴らしい魔術士になれる。」


 だが少年は、首を振った。


「ここで十分です。ここが……俺の居場所ですから」


 義理堅く、謙虚で、優しい少年。


 そして今――


 その少年が、魔人の前に立っている。



――――――――――


「離れろ、ハウロス!」


 バトロフの声を背に、ハウロスは魔鋼をナイフ状に変形させる。


「原理は知らんが、物質を自在に変形させる能力か」


「俺は魔術士じゃない」


 短く言い放つ。


 次の瞬間、魔鋼は弾丸へと分裂した。


「――魔鋼弾」


 鋭い軌跡を描き、魔人へ殺到する。


 だが。


 パチン、と。


 まるで埃を払うように、魔人は素手で弾丸を弾いた。


 硬度を極限まで高めた、殺傷用の弾丸を。


(……嘘だろ)


 違和感。何かがおかしい。


 一瞬の動揺。


「その迷いが命取りだ」


 閃光のような剣閃。


 盾を展開するが――砕かれハウロスの血が舞う。


「ハウロス!!」


 バトロフが飛び出す。


 だが。


「人間は本当に分かりやすい」


 魔人は振り返りもせず、剣を振り上げた。


 バトロフが飛び出すのをわかっていたかのように。


 間に合わない。


――その瞬間。


 炎が、夜を裂いた。


 轟音とともに魔人の体が吹き飛ぶ。


 家屋を貫き、瓦礫を撒き散らしながら転がった。


「……何だ?」


 立っていたのは、炎を纏う少年。


「父さん、大丈夫?」


「カ、カルマ……」


 バトロフの声が震える。


 炎の剣を構え、カルマは父の前に立つ。


 その姿は、無邪気で優しい我が子の姿ではなかった。


 小さな戦士の背中..


 瓦礫が崩れ落ちる。


 砂煙の向こう、魔人がゆっくり立ち上がる。

魔人は不思議そうにカルマを見つめる。


 若い。


 だがその魔力は、大きく。深い。


「ガキ……お前、何者だ?」


 カルマは答えない。


 ただ、炎を強く燃え上がらせる。


「父さん、下がってて」


 声は震えていない。


「こいつは、僕がやる」


「待て、カルマ!そいつは――」


 言い終わる前に。


 魔人が地を蹴った。


 夜が、裂ける。

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