カストリア襲撃②
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〜約半日前〜
カストリア国内でのこと(カルマの父バトロフ視点)
バトロフは昼が過ぎた頃、仕事に出る。
この街での衛兵の仕事は案外暇なのだ。
午前中は朝勤務に就く者がいる。その他の者は昼飯でも食べてからゆっくり行けばいい。
多少遅れたところで文句を言う者もいない。
何故かって?今日もカストリアは平和だからだ。
バトロフが衛兵隊の詰所につくと、衛兵達が挨拶してくる。バトロフがこのカストリアの衛兵の部隊長だからだ。
部隊長といってもそこまで珍しくはない。
何人もいる隊長の1人だ。
バトロフは隊服に着替えると何名かの隊員を連れて市中の見回りに出る。
だが実際は、見回りとは名ばかりの市民との交流の時間だ。仕事という仕事といえば喧嘩の仲裁や泥棒などの小悪党を捕まえることくらいだ。
だが、バトロフはこの仕事に誇りを持っている。
普段は暇だが、有事の際には市民を身を挺して守る義務がある。衛兵のためにも市民のためにも彼らが暇な方が良いのだ。
だが、そんな理想は打ち砕かれる。
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バトロフが街中の見回りを行っていると地響きのような音が聞こえる。
そして、その後、悲鳴のような声が聞こえる。
バトロフは急いで声の方向へ走る。
そこには複数の魔獣が街中を走り市民を襲っている。
(国門が破られたのか?いや、だが、こんな街の中心地にいきなり…)
バトロフは常備している警笛を鳴らす。
するとそれに呼応し、街中に警笛が鳴り響く。
今はあれこれと考えている場合じゃないとバトロフは頬を叩く。今、正にカストリアの平和は脅かされそうとしているのだ。
国内に魔獣や魔人が侵入し混乱状態となった場合。
行うことは次の二つだ。
①混乱の原因である魔獣や魔人の討伐。
②市民の安全確保・避難誘導
そして、今目の前には魔獣がいて、それに気づいた市民達はパニック状態だ。
今避難誘導を行ったところで彼らを鎮めることなどできようもない。
ならば、①だ。やるしかない。この国には常駐の戦士はいない。救助要請をしたところで他国の戦士教会からでは最低3日はかかる。
「皆、剣を持て!3人1組になり、目の前の魔獣を駆逐するんだ。」
その場にいた兵士達は、ある者は覚悟を決めた顔で、ある者は恐怖でひきつった顔で、だが首を横に振る者はおらず、皆、剣を抜き魔獣に向かって進んでいく。
こうしてカストリア兵と魔獣との戦闘が始まった。
そしてこれは各地の別の部隊でも同様に起こった。
バトロフは国を、そして愛する家族を守るために剣を強く握る。
バトロフは考えた。この現状を引き起こした魔人がどこかにいると。その元凶を探し出す必要もあるのだが、それについては算段があった。
今、この国には息子であり天級の戦士ダグラスがいる。そして、国のすぐ外には天級戦士フィルスもいるのだ。
きっとこれは魔人軍にとって大きな誤算であると。
「あ、あれは…」
バトロフが上空を見上げると、跳躍しながら通り過ぎるある者の姿が目に入った。
「ダグラス…」
それは自身の息子であり今この国の中で最強戦力であるだろう戦士の姿だった。
ダグラスは国の中心の方向へ向かって跳躍している。
そして、ダグラスの姿が見えなくなった直後、中心街の方向で大きな爆発が起きる。
「早速始まったか…無理はするなよダグラス。」
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バトロフ達、衛兵は避難班と魔獣の討伐班に分かれ、
市民の安全を確保していく。
幸いそこまで強力な魔獣はおらず、衛兵が複数人で取り囲めば討伐することができる程度であった。
「よし、こっちはいい。半数だけ残ってあとは避難誘導に回れ」
「ぐわぁぁ!」
バトロフが指示を出す後ろで衛兵の悲鳴が聞こえる。
バトロフが驚き振り返ると、そこには1人の魔人の姿があった。
「おいおい、炎魔様が平和ボケした国だと言っていたが、まだ元気そうなのがこんなにいるじゃねーか。」
「魔人……」
すると、その魔人は素早い動きでバトロフに向かって襲いかかる。
「隊長……!」
一人の若い衛兵がバトロフの前に飛び出し。防御壁のような魔術でバトロフを守っている。
「ハウロス…すまん。助かった。」
「いえ、隊長、下がってください。」
ハウロスという若い衛兵が手のひらに出した盾のようなものがグニョグニョと形を変え、突然魔人に向け、鋭利な棘のように形を変えながら襲いかかる。
「おっ?」
魔人はそれを少し驚きながら避ける。
「なんだ?応徳魔術か?この国にも少しは魔術が使えるやつがいたんだな。」
このハウロスはバトロフを慕う部下だが、ハウロスはこの国の衛兵で最も優秀な兵士だった。
「ハウロス……」




