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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
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魔剣フレイア


 フィルスは小屋を出て、静かな森を見渡した。


 カルマが「二週間ほど休みたい」と言い残し姿を消してから、三週間が経っていた。


「……そろそろか」


 戻らなければ、終わりだ。


 死んだか、逃げたか。


 どちらであれ、ここまでだと判断し、カストリアを離れるつもりでいた。


 小屋へ戻ろうとした、その時。視線の先に、小さな影が立っている。


「ごめん。遅くなった」


 血の匂いをわずかにまとったまま、カルマがそこにいた。


 痩せた。だが、目の奥が違う。


「ふっ……死んだものと思っていたが。何か見つけたか?」


「んー、まぁ色々」


 曖昧に笑う。だが、その足取りに迷いはない。


「いいだろう。成果を見せてみろ」


―――


 開けた平原。


 向かい合う二人。


 風が止む。


 先に動いたのはカルマだった。


「……!」


 地面を蹴る音が、以前より軽い。

いや、速い。


 フィルスの予測より半拍、早い。


 懐へ潜り込み、斬撃を放つ。


 金属がぶつかり合う。


「まだ軽いな」


「どうだろうね」


 カルマは押し返され、距離を取る。


 だがカルマは止まらない。


 剣に魔力を集中させる。


「また同じか――」


「魔剣……フレイア!」


 瞬間、剣が炎を纏った。


 揺らめく赤ではない。


 圧縮された熱の刃。


「……!」


 踏み込みと同時に振り下ろされる一撃。


 受け止めたフィルスの足が、わずかに沈む。


 重い。


 以前とは明らかに違う。


「ふっ……面白い」


 押し合い。


 炎が唸る。


「ぐっ……!」


 カルマはさらに魔力を込める。


 炎が膨れ、爆ぜるように剣圧が増す。


 フィルスの身体が、後方へ弾かれた。


「……よし!」


「もう勝ったつもりか?」


 声が、背後から響く。


「あっ――」


「応徳魔術:神速」


 空気が歪む。


 視界から消えたフィルスは、既にカルマの背後。


 鈍い衝撃。


「ぐあっ!」


 カルマは地面に叩き伏せられる。


「最後まで隙を見せるなと言ったはずだ」


 フィルスは見下ろす。


「その一瞬が、命取りになる」


「くそ……今の、なんだよ」


 悔しさに歯を食いしばるカルマ。


 フィルスはゆっくりと近づく。


「だが、惜しかったな」


 わずかに口元が緩む。


「私に応徳の技を使わせた者は久しい」


 炎を思い出す。


「あの剣……我流か?」


「ああ。魔術と剣術を一緒に考えててさ。属性魔術を剣に乗せられたら、重くなるかなって」


「なるほどな」


 フィルスは短く笑う。


「お前も、応徳の領域に足を踏み入れたらしい」


「その“応徳”って何?」


「……知らんのか?」


「うん」


 フィルスは剣を肩に担ぐ。


「いいだろう。少し魔術の話をしてやる」


 風が吹く。


 師の目は、初めてわずかに“期待”を宿していた。


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