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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
17/136

記憶だ


 カルマはその頃、フィルスの元を離れ、森の奥地へと来ていた。


そこには、積み上がった魔獣の屍の山の上に立ち、返り血で血まみれのカルマの姿があった。


「もう少しなんだ……」


 カルマはフィルスの元を離れてから魔獣を倒し続けていた、フィルスに言われた剣の重さを得るために。


 カルマは不休で魔獣との戦闘を繰り返しており、体力の限界が来ていた。

 カルマは眩暈がし、魔獣の上で足を滑らす。


「うわっ」

 疲れ切ったカルマは地面に落ちていく。


___


 目を開けるとそこはあの夢の世界での家の中...


「よう」


 声の先にはカルマと同じ顔の青年の姿があった。

前と同じ家の中だが、女性の姿は見当たらない。


「思い出したか?」


「いやわからないんだ。」


「そうか。」


「君の名前は?」


「俺?……」


 青年はそういうと口籠る。


「……?」


「俺はリョウタだ」


「リョウタ……?」


カルマは額に手を置き考え込む。その名前は知っている。記憶の片隅にこびりついている。何度も呼ばれたその名前を。


「リョウタ、君は一体誰なの?」


「もうわかるはずだ。俺がだれなのか。」


「君は...僕?」


 カルマの頭の中に"ある記憶"が流れ込む。

それは自分であって自分でない記憶。

別の世界の小林涼太の記憶。



___


 カルマは目を覚ました。魔獣の上から足を滑らしたカルマは地面に膝をつき、呆然と地面を見つめていた。


「僕は生まれる前、違う世界に住んでいた…」


 カルマは頭の中に蘇った生前の記憶に驚いた。

だが、同時になぜか冷静だった。


 生まれる前の記憶を思い出した話など聞いたことがない。そもそも生まれ変わりや前世などが他の人にも存在するのか、自分だけのことなのか。

だが、どんなに前世の記憶を思い返しても、カルマはカルマだった。まさにその記憶は自分のものではない他人の記憶でしかなかった。


 だがしかし、何だろう。この小林涼太の記憶には、強い後悔を感じる。


 そして、あの夢に出てきた女の人は母親だった。


この気持ちはきっと母親に対する強い謝意と後悔だ。



カルマの頭にバトロフとティリエの顔が思い浮かぶ。


「ちゃんと親孝行しないとな…」


 

 カルマは疲れて力の抜ける体に身を任せ、その場にうつ伏せで倒れ込む。

 地面がひんやりとして気持ちがいい。


 カルマはそのまま意識を失うように眠ってしまった。


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