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5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
15/144

足りないもの



 それからもフィルスとの修行の日々は続き、気づけば半年という時間が流れていた。


 未だに一撃も当てられてはいない。だが、それでもカルマは確実に変わっていた。


 とくに剣術の成長は著しい。


 足運びは静かで鋭く、構えに無駄はない。踏み込みも迷いなく、振るう軌道も洗練されている。以前の荒さは消え、戦いの中で生き残るための動きへと変わっていた。


 魔術は主に牽制や隙を生むために使うことが多く、大技の習得には至っていない。だがその代わり、発動は格段に速くなり、発動時のモーションもほとんど意識させない域に近づいている。


 小さな魔術を、的確に。


 それが今のカルマの戦い方だった。


 一方のフィルスは相変わらず圧倒的だった。


 魔術はほぼノーモーション。剣の動きと魔術が完全に融合し、一つの流れとして成立している。攻撃と制圧、間合いと判断、そのすべてに一切の無駄がない。


 完成された戦士だった。


「カルマ」


 ある日の訓練後、フィルスが言った。


「お前の動きは確かに良くなった。速いし、無駄も削げてきた」


「ほんと?」


「だが――私はまだ、お前の剣に捕まる気がしない」


「なんで?」


「お前の剣には“怖さ”がない」


「怖さ?」


「今のお前は、動きを整えることに意識を割きすぎている。だがな、動きはあくまで一撃を通すための“過程”だ」


 フィルスは地面に転がる木片を拾い、軽く振った。


「打ち込む覚悟がない剣は軽い。威力も、重さも、迫力も、気迫も――すべてが足りん」


「……どうすればいい?」


「自分で考えろ」


 フィルスはそれだけ言って踵を返す。


「そういえば」


 去り際、ぽつりと呟いた。


「お前の兄は鈍重だが、あの剣は重い。振るうたびに、相手の命を奪う覚悟が見えた」


 その言葉が、胸に残った。


「一撃の……重み……」



___


 それから数日後。


 カルマはフィルスの小屋を訪れた。


「何だ?」


「フィルス。二週間ほど、戦闘訓練を休みたい」


「……ほう?」


 一瞬、フィルスの眉が動く。


 諦めたのか、とも思った。


 だがカルマの目は違っていた。


 逃げる目ではない。探しにいく者の目だった。


「何か掴んだか」


「まだ分からない。でも、このままじゃ駄目だと思った」


 少しの沈黙の後、フィルスは鼻で笑った。


「いいだろう。私はここにいる。再開するときは声をかけろ」


「ありがとう」



___


 それから数日。


 フィルスは森を巡ったが、カルマの姿は見当たらなかった。


 だが、森の奥へ進んだとき。


 違和感のある一角を見つける。


 そこだけ木々が焼け焦げ、地面は抉れ、黒く炭化していた。熱でひび割れた土がむき出しになっている。


 魔獣の仕業ではない。


 もっと制御の荒い、だが意志のある力。


 フィルスはしばらくその跡を眺め――


 ふっと、口元を緩めた。


「ようやくか」


 そう呟き、小屋へと戻っていった。


――――――――――

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