巨体の女戦士
午後。
カルマは庭で、落ち着かない気持ちのまま師の到着を待っていた。
やがて――重い足音が石段を踏みしめる。
現れたのは、黒髪に赤が混じった長髪を後ろで束ねた女だった。
ダグラスすら上回る巨体。背には常識外れの大剣。
「貴様がダグラスの弟か」
低い声が落ちる。
「あ、はい。カルマ・ミラ――」
次の瞬間。
地面が爆ぜた。
「なっ!?」
女は踏み込み一つで距離を消し、剣を振り下ろしていた。
ガァン!!
カルマは咄嗟に木剣で受けるが、衝撃に弾き飛ばされる。
「いっ……何するんだよ!」
立ち上がる間もなく、追撃が来る。
「うわっ!」
横へ転がり回避。反射的に手を構える。
「炎の鞭!」
炎が鞭となって走る――が。
女の姿が消えた。
「!?」
気づいた時には背後。
大剣が振り下ろされる。
(斬られる――)
刃は、カルマの首元で止まった。
「ふむ。反応は悪くない」
女は剣を収める。
「え……と……?」
「今日から貴様を指導する。ついてこい」
⸻
家から両親が飛び出してくる。
「フィルスさん!? 一体なにを……!」
「何を? 修行だ。ダグラスから聞いているだろう」
「どこで!?」
「この国ではぬるい。ラダの森へ連れていく」
「ラダの森!? あそこは――」
「だからいい」
説明は終わりだと言わんばかりに、フィルスはカルマの襟を掴んだ。
「行くぞ」
跳躍。
視界が空へ跳ね上がる。
「あっ!? ちょ、ちょっと待――!」
⸻
「……行っちゃったわね」
「ああ……」
両親は立ち尽くす。
ダグラスの推薦。それだけが拠り所だった。
⸻
カストリアは閉鎖国家。
外周は高い壁と門で囲われ、出入りには厳しい制限がある。
だがフィルスは止まらない。
国境へ着くや否や、地面を踏み砕く。
次の瞬間、二人は壁の上にいた。
「えぇ……」
「なんだ」
「これ、違法じゃ……」
「この国の法など知ったことか」
常識が、通じない。
こうしてカルマは、
日常から引き剥がされ、
強さの世界へと放り込まれた。
ラダの森へ――。
〈頭の中の整理用 メモ〉
フィルス= カルマの兄ダグラスに依頼され、カルマの修行をつけることになった女戦士




