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「中野さん、木村さんの部屋なんだけど、奥の835号室はどうかしら」
和多部師長に、木村さんの移動先の部屋を相談していた。
「四人部屋で比較的大人しい方が二名入られているところですね。右奥か右の手前。どちらにしますか?」
「奥の窓がある方にしてあげたらどうかしら。気分転換になれば良いと思うから」
「わかりました。お部屋の準備します」
「お願いね」
木村さんの大部屋移動の準備をする。朝の回診や検査出しが終わって落ち着いた頃に木村さんを大部屋にベッド移動をする。
「木村さん、今からお部屋変わりますね。835号室四人部屋のお部屋です。荷物などはこちらでお纏めさせていただきますね」
看護助手の大原さんがテキパキと棚に置いてあるオムツや病衣、靴や杖などサッとひとまとめにして、忘れ物がないか確認して新しい病室へ持っていってくれた。木村さんをベッドごと新しい病室へ。
「木村さん、こちらの病室の右側の奥ですよ。皆さん木村八重子さんです。よろしくお願いします」
そう声をかけて病室に入りベッドのセットをする。特に点滴とかがないので、比較的病室移動も楽にできた。
「木村さん、明日から少しずつリハビリが始まりますからね」
せん妄がなくなり、痛みのコントロールがうまくいっていて入院生活にも慣れてきたのか、泣き出すことはなくなった。安定してきているような感じが見てとれた。
食事も少しずつ完食する回数が増えてきた。
「木村さんのリハビリを担当する方をお連れしましたよ」
そう言って、理学療法士の西山さんと場所を入れ替わる。
「木村さん、はじめまして。理学療法士の西山太智です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「少しずつ無理のない範囲で進めていきましょうね」
「はい」
このやりとりを見届けて、ナースステーションへ戻り、看護記録に記載する。
「杏奈ちゃん、木村さんリハビリ始まった?」
「はい。西山さんが担当されてます」
「西山君かぁ。木村さんに合うかもね。じっくり本人に合わせてあげることができる人だから」
「そうですね。木村さんにはリハビリ頑張って欲しいです」
今日は、ベッド上で、手足のリハビリから始めるそうだ。まぁ、いきなりは歩けないからね。
「木村八重子さんのリハビリ終了しました。今日の感じからリハビリのスケジュールを組んでみます」
「わかりました」
「それでは失礼します」
「お疲れ様でした」
木村さんの様子を見てこようかな。そう思い木村さんの病室へ向かう。
「木村さん。リハビリお疲れ様でした。リハビリはどうでしたか」
「西山さんが、丁寧に教えてくれたのでできました」
「良かったです。木村さんの状態に合ったリハビリメニューを組んでくださるそうですから、頑張りましょうね」
「はい。頑張ります」
ナースステーションへ戻ると和多部師長が居たので、木村さんの現状を報告をした。
「リハビリも意欲的に取り組んでるそうです」
「頑張り屋さんみたいだし、元の生活に戻れると良いわね」
「そうですね。しっかりお手伝いします」
「お願いね」
午後からの業務をしっかり行い、配薬の準備をしていると木村さんのお孫さんがナースステーションへ顔を出した。
「木村八重子の孫の吉村香織です。祖母がいつもお世話になってます」
「こんにちは。どうされました」
「祖母が靴下が欲しいって母に伝えたらしくて、私が今日お見舞いに行くって話したら靴下とリップとハンドクリームを頼まれたんですが、靴下買ってきたんですけどハサミなくて留めてあるのが切れなくて、お手を煩わせて申し訳ないのですが、切ってくださったら助かります」
「わかりました。大丈夫ですよ。今、切りますね」
孫の香織さんから靴下を預かり、束になって留めてある部分を切って、お渡しする。
「ありがとうございました。助かりました」
「いいえ。どういたしまして」
木村さんと同室の患者さんのナースコールで病室に行ったので、ナースコール対応をした後、木村さんのベッドを仕切るカーテンが開いていてチラッと見てみると、お孫さんに靴下を履かせてもらっている微笑ましい姿を見て
「木村さん良いですねぇ。お孫さんが来てくれて楽しそうですね」
そう声をかけると
「靴下買ってきてくれたんです。それで履かせてくれてます。嬉しくてありがたいです」
「可愛らしい花柄の靴下ですね」
「はい」
木村さんは嬉しそうに微笑んで、孫の香織さんと話をしていたので、病室を後にしてナースステーションへ戻る。
「木村さんの病室、賑やかね」
先輩看護師に声をかけられた。
「木村さんのお孫さんが見えてて、靴下履かせてもらってましたよ」
「それは木村さん嬉しいだろうね。娘より孫だからね。可愛さは段違いだよ!」
「そんなもんですか?」
「そりゃそうだよ。娘はケンカ相手だからね」
「えぇ〜」
「娘さんのお見舞いの時とお孫さんの面会の時の木村さん全然違うでしょ」
「うんうん。違いました。終始笑顔で微笑んでおられました」
「そんなもんだよ」
「勉強になります。先輩!」
「まぁ、頑張りなさいな。その内わかってくるよ」
そんな会話をしていると面会時間を少し過ぎ香織さんが帰っていくのが見えた。




