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8話 とある竜人、国王と対面!

 夜。

 あの後ラグナスは拘束され、謁見の間のド真ん中に座らされていた。


(……ちっ、めんどくせえ)


「なんでお前までここにいんだ」


 横を見ると、正座をしたリュエルの姿があった。


「仕方ないだろ。元を辿れば、僕も一割くらいは悪いんだから」

「残りすべて俺が悪いみてぇな言い回しじゃねえか」

「当たり前だ。じいやを負傷させた借りは高くつく」

「あ? あのジジイが勝手に入ってきたのが悪いって言ってんだろ!」

「なんだと! お前が力加減を考えなかったのがケチのつき始めだ! このデブ!」

「あ? テメェこのガキ!」


 再び喧嘩が勃発した。

 やはりこのふたりを同じ空間に入れるのは間違っているのかもしれない。


「――静かにしろ! 国王様がお見えだ」


 同じ間にいたひとりの近衛兵が、一喝した。

 背後。

 後ろの扉が開き、のそのそと入ってきたのは国王様。その隣には、国王と腕を組んだ女王様がいた。なんと派手な登場なのだろうか。

 国王様は金髪で、女王様は白髪である。

 

「――やあやあ、待たせてすまなかった」


 国王は片手を上げ、そう発した。

 そこへ、ひとりの近衛兵が走って行き、国王に耳打ちをする。

 

 ゴニョゴニョゴ二ョ


 チラ。


 ゴニョゴニョ……


 一瞬ラグナスたちの方を向いて、またつづけた。

 一方ラグナスたちは。


(ちっ、拘束されてやったはいいが、後ろを向けねぇのが不便だ)


「おいガキ、俺たちはこれからどーなんだよ」

「知るか。でも、僕はきっと怒られるだけで済むだろうけど、お前は処刑がお似合いなんじゃないか」


 他人事みたいに、平気な顔して言うリュエル。

 ラグナスたちも、囁きながら会話をしていた。


「あ? ふざけんじゃねえ。もしそうなったら俺様は城を壊してでも家に帰る」

「ふっ、ざまあみろ」

「てめぇ」


 そして、再び喧嘩が始まろうとした時。

 ラグナスたちの横を、国王らふたりが通った。鋭い目つきをした女王と、ラグナスの目がすれ違う。

 

「――ふっ」


 嫌悪した笑みをあからさまに浮かべ、通り過ぎていった。

 近衛兵は大回りして、元居た定位置にすみやかに戻る。


(ちっ……)


 玉座までつづく長いレッドカーペットを歩き切り、ふたりはゆっくりと腰を下ろした。

 咳払いをして、国王が口を開く。


「よくぞ参った。私は、この『ゼルカ神聖王国』の国王レーヴェンだ」

「わたくしは、王女のフィネットよ」

「話は聞かせてもらったよ。どうやらさっそく不祥事を起こしたらしいじゃないか」


 ラグナスに向けて、レーヴェンが言った。

 が、ラグナスはフル無視のようだ。


「「おい! 国王様が申されているぞ! なにか言ったらどうだ、この無礼者!」」


 半目を開けて、あくびをしたラグナス。

 リュエルはその光景を隣で見て、こいつマジでありえない……みたいな表情してた。

 

 近衛兵が武器を持ち、ラグナスに向かっていこうとした瞬間。


「――まぁ待て」


 国王は肘置きを軽く叩き、静止を促す。それを見て、仕方なく衝動を収めた近衛兵。

 国王は咳ばらいを挟んで、進めた。


「君は、スィル盾将(じゅんしょう)が言っていた、リュエルの護衛となる者で間違いないな」


 盾将。

 すなわち、忠騎である聖騎士らの長。そのリーダーを務めているのが、スィルであった。


「ああ、なんか文句あんのかよ」


 初めて公に口をきいたラグナス。

 が、そのあまりにも無礼すぎる返答に、再び周囲がざわついた。


「「あの野郎……」」

「「おいお前! もう少しマシな口の利き方はできないのか!」」


 リュエルも小さく文句を言った。

 が、ラグナスはめんどくさそーにあくびをする始末。

 しかし、国王が再び話始めると、周囲もやむおえなく口を閉ざすのだった。


「名前は、なんであったかな」

「ラグナスだ」


 一瞬、国王の目が見開いたように見えた。


「ラグナス……あなたが」


 そう小声で発した国王。


「どうかした、あなた」

「いや。ゴホン! ではラグナスよ、この国で竜人がどのような印象を持たれているか知っているのかね」


(……ちっ、嫌味聞かせやがって)


「ああ、よく思われてねぇだろうな」

「うむ、その通りだ。歴史ひとつを見ても、ドラゴンは幾度となく人族を殺し、神々に対抗した唯一の存在である。ゆえ、そもそもこの国に足を踏み入れること自体許されざる行為なのだよ」

「「そうだそうだ!」」

「「さっさと帰れ!」」


 ガヤがうるさい。


(クソうぜぇぜ……やっぱ来るべきじゃなかった)


「ちっ、じゃあおめぇらの望み通り帰ってやる。だからはやくこの縄を解け」


「「やっと観念したか」」

「「あんなドラゴン、返す価値もない。処刑にしろ」」

「「そうだそうだ!」」

「「醜いドラゴンを排除しろ!」」


 ガヤは火種を浴びて、さらに火力が増した。

 そこで女王が口を開く。


「ふっ、当然の報いね」


 死んだ魚を見るような目で、ラグナスを見下ろした。リュエルは、ただその状況を当然と頷くばかり。

 しかし、ここで再び国王が話し出す。


「――待て」


 周囲が静まり返った。


「先ほど私たちは、各国の国王らが集まる重大な貿易会議を終えて帰還してきた。そこで、深刻な魔族の襲撃に備えて、各国がより一層協力体制を敷くことになったのだ。差し当たっては、我が国の兵力を他国に貸す必要性が出てきてな。それほどに事態が深刻化しておるゆえ、ひとつ。――彼に執行猶予を与えるのはどうだ?」

「「……っ!」」


 周囲は唖然とする。


「「……し、しかし国王様。ではせめて、この竜人を兵士として送り込むのはどうでしょうか」」

「「おおそうだ……それがいい」」

「「まだマシだな」」

「「よかった……」」


「――うむ、そうしたいところだが、彼が派遣された先でまた今回と同様不祥事を起こした場合の示しがつかん。行動次第では、我が国の尊厳に関わる重大な牙にもなり兼ねんからな」

「「……確かに」」


 ラグナスが堂々と顔を上げ、笑った。


「ふっ、まぁそうだな。俺様は悪い悪い竜人様だからな」


「「おいコラ!」」

「「あいつ……すぐ調子に乗りやがって」」

「気持ちはわかるが、王都内の戦力が薄くなっては元も子もない。スィル盾将からの押しゆきもるゆえ、最終判断は私に委ねられているが、今すべき決断としては使えるものは使うべきではないだろうか」

「「ぐぬぬ……」」

「腕のほどは申し分ないようだぞ」

「ふっ、想像に任せる」


 ラグナスは適当に言い払った。


「――うむ、では決まりだ。が、もしリュエルになにかあったり、王国に害をなすようなことがあれば、我が国の全兵力を持って彼の首を飛ばしに行く。これはいかなる理由があれど絶対だ。国王命令!」

「ふっ」


 ラグナスが薄っすら笑みを浮かべた。

 同時に、リュエルも頬をつり上げる。


「みな、これで異論はないな?」

「……ちっ」


 女王が不満げな顔を浮かべたが、異議申し立てる者はいなかった。


「「……んだよ」」

「「まぁ仕方ねぇ、ただでさえ人手が足りてねぇんだ」」

「「使えるだけまだマシか」」


「では解散だ。この瞬間をもって、この一件のすべてをおさめるものとする」


 全員が早々に後を絶っていく。中には不満げな顔をあからさまにラグナスへとちらつかせる者もあった。

 そして――


「――が、ラグナスよ、君だけこの場に残れ。それ以外の者が残るのを禁じ、盗み聞きは死刑に値する」


 国王が、ラグナスの元へと歩み寄ってきた。

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