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逆行転生者は黒歴史の夢を見るか?

 


 再会した泉と「またサッカーをやろう」って約束を交わして別れた。


 お互いにレベルを上げて、また同じ高校のサッカー部で合流することを確かめ合った。

 今度はまさかの2回戦敗退を再び繰り返すようなことにはならないだろう。

 なにしろ11人のチームメイトが、あの試合から時間を巻き戻って現在にいるって話だ。みんなが今のうちから本気で頑張ったら選手権のいいところまで行くことだってできるかもしれない。


 全国優勝は……さすがに夢を見すぎか?


 いや、そうとも言いきれないか。

 5年の時間はでかいからな。やり方次第では、天才の集団みたいな全国の強豪校にも互角でやれるかもしれない。

 才能がすごいって言ったって同じ人間だ。

 やれるところまで、やってみないとわからないよな。


 ──あの試合。

 あの場にいた11人に同じことが起きたってことは、やはりあれが過去に戻ることになった原因なんだろう。

 たぶん、あんだけ悔しい思いをしたからだ。


 心が昔に飛んでしまうくらい悔しいってなんだよって他人からしたら思われるかもしれないけど、俺にしてみればそうなってもおかしくはないほどの敗戦だった。

 もちろん今でも悔しい。


 なんで同じ目にあったチームメイトが一緒に巻き戻っているって可能性に思い当たらなかったんだろうか。

 そんな不思議なことが同時多発するはずないって適当な決めつけもいいところだった。


 本当に泉がフットワークの軽いやつで良かった。


 そうじゃなきゃ何年か、下手したら高校入学までこの事実を知らないところだったかもしれない。


 ・

 ・

 ・


「浅尾くん、起きなさい!」

「ふぬ……ぉ、お早うございます」


 授業中、寝てしまっていたら数学の女性教師に起こされた。

 泉と会ったことで色々と妄想していたら眠れなかったのだから仕方ない。

 まあ教室に和やかな笑いを提供できたから良しとしよう。


 それにしても今さら中学1年の授業はさすがにイージーすぎて逆にしんどい。

 めっちゃ勉強できるキャラを目指す気もないから適当にやっているが、それでもそこそこテストじゃいい点が取れてるので変に目立つ気もするけど、まあこんなもんかなって感じだ。

 教師のみなさんからは真面目にやればもっとできるのにって言われがちだが。


 進学する先も決まってるんだから、そんなに勉強は頑張らなくていい。

 そういう自分の進路とかの悩みからは無縁なのはメンタル的にすごい楽だ。

 おかげでサッカーに集中できるってものだ。


「じゃあ、睡眠学習をしていた浅尾くんに問題を解いてもらいましょうか」


 嫌みな感じで教師が言ってきたので、俺は問題をさらっと解答した。

 クラスメイトから「おーっ」と歓声が上がる。

 前とまったく同じ教室の顔ぶれだが、俺を見る目がまったく違うな。学力的にはいたって普通の男子生徒で別に特段できるやつってキャラでもなかったから当たり前か。



 ◇



 同じ中学に通うと嫌でも過去にあったことを思い出させられる。

 いいことも悪いことも両方だ。


 前に通っていたときにはバスケットボール部に入っていたんだよな。

 当時のことを考えると今よりもかなりコミュ障みたいな傾向のあった俺だが、とりあえず身体を動かすのは好きだった。

 それでサッカーから距離を置くことにした俺が選んだのがバスケだ。


 運動部はバスケ部、バレー部、サッカー部の3種しかない学校だからなにしろ選択肢が少ない。

 俺が入学するつい昨年に廃部になったっていうテニス部が残っていたらそっちに行っていた可能性が高かった。だとしたらその後はまったく違う運命だったかもしれない。


 バスケ部に入った俺だったが、結果としてはとある先輩と上手くいかなくて1年でやめることになる。


 中学からバスケを始めたばかりの俺よりもある意味じゃ下手な人で身体がデカいだけが取り柄のがさつな先輩だったが、自分よりもバスケの技術で劣る後輩を見つけるととにかくなじるっていう最悪な人物だった。

 今も同じ学校のどこかにいるんだろうけど、今回は面倒くさいので係わりはなしでいこうと思う。


 規模の小さい学校だから嫌でもすれ違ったりはするけどな。


 まともに思い出すと今でもうんざりする。

 なんとなくバスケをやり始めた俺とは違って、下手だけどすげえバスケが好きな同級生がいて、先輩がそいつに酷いパワハラをぶちかましているところに「そういうの、格好悪いんじゃないっスかね」とか言ってしまったのがアウトだった。

 いや俺も若かったんだ。また若返ってるんだけど。


 それからの1年間、バスケットボールをとても綺麗に磨いて時間を費やした俺は2年になってバレーボール部に移籍した。


 ちなみに俺の中学はバスケ、バレー、サッカーの順で本気度が落ちていく。

 残念なことにサッカー部はスポーツやって、ちょっとモテたりしたいけどそこまでマジでは頑張りたくないやつらが集まるところだ。学校のほとんどのやつが、そういう評価を下していた。


 活躍の場を求めてバレー部に移った俺だが、どうにもバスケ部からの圧力だか忖度だかがあったらしくて、実力からすると試合に普通に使われてもよさそうなものだがまったく起用されなかった。

 これだから田舎の狭い社会は嫌だ。


 そんなわけで俺は2年のあいだをバレー部のとなりのコートで活動している女子バレーボール部を観察することに時間を割いたのだった。

 いつのまにか『エロの観察者』なる不名誉な呼び名を授かっていたことを知るのはわりと後になってからだ。


 3年になって、さずかに運動部はもういいやと考えた俺は漫画研究部に在籍し半年かけて部室にあったマンガをことごとく読み尽くした。

 そして夏くらいに部を引退した。

 漫研時代に俺が描いた四コママンガは知る人ぞ知る名作だったから、これが後の世に残らないとすると全人類にとっては文化的な損失だという気もするな。


 だが俺が再び同じ部活歴を繰り返すことはない。

 まわり道はしたけど今度はずっとサッカーをするって決めたんだから。



 ◇



「ねえっ、私っ浅尾くんのこと好きになっちゃった!」


 旧校舎との渡り廊下に呼び出されたと思ったら女子から告白された。

 こんなイベントがリアルにあるんだなってのが感想だ。


 同じ学年でもかなり可愛い子だ。

 なんか頭悪そうな言動が気にかかっただろうが、巻き戻らない段階の中1の俺がこのイベントを起こしていたなら普通にオッケーしていたかもしれない。


 だが俺はこの話を受ける気はなかった。


「うーん……俺は君のことをあんまりよく知らないし」


 断る気なのだが、いまいちバッサリとは断れない。

 精神的には高校を出ている頃なのに中1と付き合うとかは犯罪の感じが強すぎて無理ってのもあるがそれだけじゃない。


 実のところよく知らないと言いながら、そんなこともないのが実態だ。

 中学の3年間のこの子の所業はちゃんと記憶にある。


 この子って、例のバスケ部の先輩と付き合ってたはずの子なんだよな。

 たしか春から秋くらいにかけて、バスケ部の3年が引退してしばらくまでは付き合っていたし、ふたりでイチャついている場面を見たこともある。


 それから先輩と別れたあとも運動部の目立つやつと、とにかく片っ端から付き合っては別れていた印象だ。

 まあいいイメージはないわな。


 俺がサッカー部で目立ったから告白されたってことか。

 そんなところだとは思う。


 それであの先輩と付き合うはずだった運命が変わったんだとしたら何て言うか略奪愛? NTR的な?


 まああの人は知るよしもないわけだけど、それはそれで気が引けるのはある。

 付き合うとなれば、あの顔が何度もよぎるって考えただけでも何の呪いだって気分だ。


「じゃあ、友達からってことで!」

「ん、いや、それは……」


 さすがに後に百戦錬磨の恋愛を展開する女子だ。

 恋の駆け引きで俺が勝てる相手ではなかった。


 断られる気配を察して、押しきらずに引くことにしたらしい。

 さすがに友達ですらお断りするのは人間としてどうなんだってのがあるから拒否できない。


「じゃあ、私と付き合うことも真面目に考えといてね~」

「あ、待てよ……」


 なんとか付き合うところまでは回避したのだが、しばらく付きまとわれることになってしまう俺だった。


 中途半端に拒否るから余計に火がついた面は否定できないが、その間、あの子の毒牙?にかかる男子がいない期間をつくれたってことで、たぶん学校の平和に貢献したんだろうと思う。


 それから後の話だが例のバスケ部の先輩は他に彼女を見つけることもなく、この学校を卒業していくことになる。

 だがそれは俺にとっては何か責任が取れるようなことでもなく、彼が本当に魅力的な男であれば別の誰かと付き合えてもよかったわけだし、わりとどうでもいい話ではある。



 ◇



 夏の大会に向けた予選でも、俺は1年生ながら試合に出て活躍した。

 地元の地区自体のレベルがそんなに高くないのもあって、超弱小中学ながらうちの学校は俺の2得点で1戦目を突破。大会予選でうちが勝つなんて何年ぶりの快挙だろうかなんて話になった。


 だが俺がひとり気を吐いたところで勝ち続けられることもなく、次の試合で守備が大崩壊し2-6のスコアで敗退した。


 たったひとりの選手が入っただけで弱小チームが生まれ変わって快進撃なんてマンガみたいなことはやはり起こらないわけで。


「浅尾~!」


 俺のアシストから得点を決めたイケメン先輩からは試合後に泣きつかれた。


「俺が点を決めるなんて思わなかったよ! マジで最高の思い出になったわ!」


 なんしろ前から練習試合をするたびにフルボッコにばっかされてた学校が相手ということもあって、イケメン先輩にしてみれば感極まるようなことだったらしい。

 俺としては失点の多さがなんとかならなかったのかって思いはあるけど、それでも部のみんなが手を抜いていたわけじゃない。


 本気でやって頑張ってるのはいつもの練習から考えてもわかったし、それで先輩たちを責める気もなかった。


「浅尾のパス、マジ最高だったよ!」


 しばらくそればかり言う先輩。


 だけど俺は、泉のパスが欲しかったと思った。

 あいつのパスがあれば、もっと点が取れたはずだった。


 今は他のどこかにいる未来のチームメイトがいればと思った。

 あいつらならきっとゴールを守ってくれるから。


 あの仲間たちとサッカーができる日を、俺は待ち遠しいと思うようになっていた。



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