142話 闇の軍勢、討伐戦 その6
「死ね! 高宮春人!」
アルフリーズにて行われている戦い……レヴィンは春人に向けて闇の騎士達を差し向けていた。通常の騎士よりも強力な連中だ。纏っている闘気が違う。
「春人、気を付けて!」
「ああ、わかっているよ!」
「マスター、私もお手伝いさせていただきます!」
敵の強さを考慮に入れ、最初から全開で挑む春人だった。30体もの騎士達を相手にするのだから当然と言えるのだが。サキアは死角からの攻撃を警戒してオートガードを全力で展開していく。
「その黒騎士のレベルは200を超える! それが30体だ! お前一人ではどうしようもあるまい! コンビで戦いに挑まなかったことを後悔するんだな! フハハハハハハ!」
レヴィンは勝利を確信しているのか余裕を持っていた。しかし、その表情は真剣だ。全力で戦っているのが分かる。レベル200を超える騎士達を30体も呼び出したのは凄まじいことであるが、春人はヘルスコーピオン達を倒した経験がある。
敵の攻撃を捌きながら反撃で確実に仕留めて行った。数の暴力が通用していないのだ。ここでもユニバースソードが大活躍していた。
「……少しはやるようだな。流石は最強の冒険者と言われているだけのことはある」
黒騎士達がやられていってもレヴィンは焦っている様子はなかった。ゆっくりを手を上に上げる。
「自爆! 終わりだ!」
「なっ……!?」
その直後、生き残っていた黒騎士達が一斉に爆発したのだ。春人は爆炎に巻き込まれてしまう。
「フハハハハハ、これが黒騎士達の正体というわけだ! 特別製の爆弾人形というわけだ!」
「は、春人!」
アメリアは焦った様子で春人の名前を呼んでいた。安否不明だけに心配になっているのだ。
「無駄だよ、あの威力の爆発に耐えられる人間などいるわけがない。瞬間火力なら、グリモワールの誇るテラーボムよりも強力なのだからな! フハハハハハ、さて残りは貴様だアメリア・ランドルフ!」
「あんたは……」
今にもキレそうな表情のアメリアだった。彼の挑発に冷静な対応が出来ていないのだ。
「くくく、今頃は粉々になって……ん?」
「いててて……流石に痛かったよ」
爆炎が止み、煙の中から出て来たのは服が破けた状態の春人だった。身体がすすだらけになっているが、無事なようだ。
「ば、馬鹿な……そんな馬鹿な! なぜ生きている!」
「かなりの威力の爆弾だったと思うよ。普通なら避けることなんて出来ない間合いで、いつでも爆発させられる。非常に強力な手段だ。サキアがいなければもっとダメージを受けていただろうし。でも、俺を倒すほどではなかったみたいだな」
「春人……良かった」
春人は歯を見せて笑っていた。その視線はアメリアに向かっている。事実、レヴィン・コールテスの能力は強力であった。爆弾人形を30体も作り、そのレベルは各々が210。そのレベルの敵を倒せる相手だったとしても回避不可能な距離からの爆発が待っているのだから。二重の意味で強力な攻撃方法だった。
しかし……レベル1000を超える春人が規格外だったのだ。レヴィンの攻撃は効かなかったのだ。春人にある程度のダメージを与えているだけでも彼が強いことへの裏返しではあるが。
「心配かけたて、アメリア。ごめん」
「大丈夫よ、生きてるって信じてたから」
アメリアも心配になる程の威力だったことは間違いない。彼女ではレヴィンの攻撃を捌けなかった可能性すらあるのだから。レヴィンは今までの連中と比べてもかなり強いことは間違いなかった。
「切り札がなくなったみたいだね。大人しく捕まるなら、手荒な真似は控えるけど? どうするんだ?」
「ふざけるな……ふざけるなよ!」
「レヴィン様……! あのレヴィン様がこれほどに取り乱すなんて……高宮春人……何者なんだ」
レヴィンはかなりキレている様子だった。しかし、こちらに向かって来る気配はない。挑んだとしても勝てないことが分かっているのだろう。シルバ・ケレンドも非常に驚いていた。
マシュマト王国を裏から操っていたはずの組織アンバーロード。そのトップと、さらにその主人を前にしても春人は格上の存在だったのだ。レベル1000という人外の領域に到達している春人ならではの経験と言えるのかもしれない。
「従う気がないなら仕方ない。意識を失って貰おうか」
「なんだと……? うっ!」
ダメージを負っていても春人の速度は変わらなかった。ユニバースソードの柄の部分でレヴィンに強打撃を加える。同時にサキアの攻撃もお見舞いした。
「がふっ……!」
レヴィンはその場で動けなくなった。意識を失ったのだ。本来であれば殺した方が良かったのかもしれないが、無抵抗の人間を殺すことに春人は躊躇していた。
「よし……後は」
「ギルド本部に任せておけば大丈夫でしょ。ザックさんに報告ね」
「うん、そうだね」
この戦力分散の戦いはザックも知っている。彼からの許可が出たからレヴィンと戦うことが出来たのだから。彼に報告することが第一条件となっていた。
戦局はこちらが有利に進んではいたが、一部の戦いではギリギリの場面もあった。春人達からしてみれば、反省点も残る戦いだったと言えるだろうか。
その後はアンバーロードの雑魚狩りをしていたレヴァントソードと合流し、ザック・ボンバーディアのところに戻る春人とアメリアであった。その場で北の者達の勝利の報を聞き安心するのであった。




