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124話 ラブピースとの決着 その6


「はあああああ!」


「くっ! 強い……!」



 アインザーの攻撃をギリギリのところで躱すリッカだった。その躱しのテクニックにアインザーは疑問を覚える。先ほどからの攻撃……リッカは焦りながらも全て捌いていた。これは彼からしても信じられないことだ。


 アインザーはリッカのレベルが80程度だとは見抜いている。グリーンドラゴンより劣るレベルの人間。本来であれば自分の攻撃を避けることなど出来ないはずだが……。


「これは妙だね……」



 リッカが手加減しているという様子はない。全力で攻撃しているのは間違いないだろう。しかし、その攻撃はアインザーからすれば楽勝で弾けるレベルだった。それにも関わらず、彼女への攻撃は通じない。これは非常に矛盾な出来事だった。アインザーも疑問を感じずにはいられない。


「おかしいね。攻撃と防御の精度がまるで違う……」


「はあ? 何言ってんのよ……こっちはあんたの攻撃を弾くだけでも精一杯なのに……!」



 リッカが嘘を言っているようには聞こえなかった。おそらくは事実なのだろう。それにしても攻撃の能力と防御の能力が違い過ぎる。アインザーはその辺りで疑問を感じているのだ。攻撃は容易に捌けるのに、リッカへの致命傷は与えられない。こんな事態は今まで経験したことがなかった。


 リッカのレベルが自分よりも明らかに下……レベル80程度であることはアインザーも看破している。それはやられてしまったが、カイエルとアンバートとの戦いからも明らかだ。


 攻撃はそのレベル相当……しかし、現在の防御能力はそれをはるか凌駕しているのだ。こんな矛盾は本当に経験がない。22歳でレヴィンの片腕として賞金首ランキング4位になっている彼だが、驚きを隠せなかった。



「はあ……はあ……」



 息を切らしているリッカだが、なんとなく自分の中で起きていることは理解出来ていた。ランファーリと名乗る者がタナトスレーグを倒した時と同じ現象が防御面で起こっているのだ。自分の意識は失われていないことから、操られているわけではない。この現象は自動で行われているのだろうと推察した。


「妙な話よね……私を操る得体の知れない奴に、命を助けて貰っているなんて」



 リッカは本来であればアインザーの攻撃でやられているだろう。現在でも動けているのは、自動防御のおかげなのだ。フェアリーブーストの連中をすぐに退避させて正解だったと言えるだろう。リッカの判断は適切だった。



「アインザーが出て来ても、レーグは動く気配ないわね……」



 アインザー・レートルとリッカとのバトルはタナトスレーグも見ているはずだ。しかし、彼はこちらに来る気配がなかった。その行動に対してリッカは怒りを覚える。自分に従うと言っていたのに、なんだこの体たらくは、と。



「このまま戦っていても、決着は付きそうにないね。僕も忙しくて、そろそろ他のところに行かないといけないんだ」


「な、何言ってるのよ? そんなこと言ってどうするつもり? 逃げる気?」


「まあ、そのように考えてもらって構わないさ。洞窟内の仲間の無事は保証されるんだ、構わないだろ?」


「ふざけないでよ……!」


 アインザーの態度にリッカは怒りを覚えた。カイエルやアンバート達を見捨てる行為もそうだが、それ以上にここまで好きにしておいて、去る時は普通に去る……それが許せなかったのだ。アインザーからしてみればラブピースは組織の1つでしかない。このような判断を下すことも組織全体を見ればあり得ることだろう。だが、リッカには到底理解できないことだった。


「レーグ! いい加減に手伝ってよね!」



 渾身のリッカの叫びだった。レーグがこれに反応するとは思っていなかった彼女ではあるが……意外なことにレーグはリッカの前に降り立ったのだ。


「ふん。まあ、いいだろう。協力しよう」


「お仲間がいたのか? ん……これは……」


 アインザーとレーグが初めて対面することになった。その瞬間、アインザー・モグレフに戦慄が走る……。



「人間ではないのかい? いや、この威圧感は……」


「人間ではないという推理は正しいと言えるだろうな」



 レーグは普段のドクロの姿ではなく、魔法で変化した姿になっていた。外見的には人間そのものなのだが……アインザーは彼の纏う闘気を感じ取り、人間ではないと看破したのだ。そして……。


「済まないが、早急に逃げさせてもらおう。じゃあね」



 レーグの実力を察知したのかどうか……その辺りは不明だが、アインザーはその場から姿を消した。


「……去ったか」



 追うことはおそらく可能なレーグだが、敢えてアインザーの後は追わなかった。


「ちょっと、なんで追わないのよ?」


「逃げた相手を追う余裕がお前にはあるのか? お仲間が無事かどうかを確認する方が重要だろう?」


「うっ……確かに……」



 タナトスレーグから出た正論……リッカは腹立たしかったが、納得せざるを得なかった。早速、洞窟内に入り、仲間が無事かどうかを確認する必要があるのだから。



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「ナーベル! ミーティア! 無事でよかった!」


「リッカ……! 心配をかけて済まなかった……!」


「ううん、いいのよ! 本当に良かった!」



 牢獄から解放されたナーベルやミーティア。リッカは二人に抱き着いて安心を享受していた。ナーベルとミーティアの二人は彼女にとってなくてはならない存在なのだ。寄宿舎の近くで一緒に暮らしているのも頷けるというものだろう。



「大丈夫なの? 見たところ、そこまで大きな傷は負っていないみたいだけれど」


「一応は大丈夫さ、二人ともな。他の被害者たちも命に関わる怪我をしている者はいないようで安心だ」


「まあ、それは安心よね。あとは……ラブピースを構成していた奴らだけれど」



 アンバートとカイエル以外の者達……全員、リッカによって倒されていた。この連中は犯罪者としてギルドに報告することになるが。タナトスレーグは洞窟の入り口で追っ手が来ないかを見張っていた。彼が入口を見張っている限り、その内部はほぼ安全と言えるだろうか。



「しかし、驚いたな! カイエルとアンバートと言う者達をリッカが倒すとは……!」


「ま、まあ、そのくらい余裕よ。一応、フェアリーブーストの協力もあったけどね」



 リッカとしてはフェアリーブーストの協力があったとは言いたくなかったが、事実である以上は彼らの名前を出さないわけにはいかなかった。彼女もそのくらいの恩義は感じているのだ。



「フェアリーブーストの協力があったのか? なら、彼らには後で礼を言っておかないとな。まあ、まずはアーカーシャに戻るとしようか」


「そうね。他の被害者も気になるし」



 ネオトレジャーとしては、自分たちだけではないのだ。他の誘拐された者たちもアーカーシャに送り届ける必要がある。そういう意味ではリッカとしても、まだまだ安心するわけにはいかなかった。タナトスレーグの協力は非常にプラスになっていると言えるだろう。


 その後、ナーベルとミーティアの二人はタナトスレーグと知り合うことになるが……彼の闘気のすさまじさに恐れおののくことになってしまった。




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