【ファン限定】『古畑任三郎』で好きなエピソード【前編】
『古畑任三郎』が好きな人!
はーい! リアルタイムで追いかけたのは第3シーズンからでしたが、再放送を観てファンになりました。三谷幸喜さん原作の小説も買っちゃいました。
説明するまでもないでしょうが、『古畑任三郎』は倒叙ミステリーのドラマです。
刑事コロンボが有名ですが(先日BSで『二枚のドガの絵』観た。よかったなぁ)、犯人の視点から物語が始まり、刑事(探偵)の推理により真相が看破される形式になっています。
視聴者に犯人はもちろんのこと、トリックもすべて明かされた状態でスタートするんですね。
探偵役がそれをどう暴いていくかが見どころになります。
さて、古畑任三郎。
大人気ドラマで3つのシーズンの他、スペシャルドラマも放映されました。各話の出来の優劣はありますが、その中でも私のお気に入りのエピソードをテーマごとに紹介します。
以下ネタバレがあります。そして、古畑ファンの方でないと厳しいかも(;´∀`)ごめんなさい。
* * *
☆ホワイダニットの帰結の美しさ――『死者からの伝言』
中森明菜さんが出演された、記念すべきファーストシーズン第一話です。
古畑登場、ともいえる作品ですね。
少女漫画家の小石川ちなみ(中森明菜)は、交際している編集者に弄ばれていたことを知り、彼を殺す決意をする。その手段はなんと、彼女所有の別荘の一室に閉じ込めるという残虐なもの。
しかし発見された死体の頭部には鈍器で殴られた痕跡があり、その手には漫画原稿とペンが握られていた……。
ペンのインクも切れておらず、文字が書ける状態だったのにもかかわらず、犯人の名前どころか何も書かれていなかった。どこか別に場所にメッセージを残しているのか?
死者からの『伝言』とは何か?
これが本作のメイン謎となります。犯人もなぜ被害者がこんな行動を取ったのかわからないまま、物語は進みます。ドキドキですね。
「名前が書かれていたら間違いなく消していたけど、何も書かれていないならば……」
勘のいいミステリーファンの皆様ならお気づきでしょう。まさにこれ自体が被害者からのメッセージ。
自分を最初に発見するのは犯人とわかっていたから、何も書かなかった――。
(自らを鈍器で殴ったのはただの事故と処理されないようにするため)
何ともシンプルで強烈なロジックですね。
犯人が何故それに気づかなかったのも自然な流れで描かれており、出演者の話題性もさることながらシリーズ第一作として視聴者を引き込む魅力的な作品でありました。
☆犯人の動機がトリックを喰った――『動機の鑑定』
第二シーズンで放映。シリーズのなかでも最高傑作と名高いエピソードです。
骨董商の春峯堂(澤村藤十郎)は、美術館の館長と結託して贋作を真作と鑑定する。
しかし、それは陶芸家の川北百漢が二人を陥れるため作った壺だった。春峯堂は川北を殺害し、川北が持っていた真作の壺を持ち去る。さらに、自首しようとした美術館館長を自殺に見せかけて殺害し、罪をなすり付けようとするが……。
「六半、うずくまる、かなり寒い」
骨董界の独自の用語がミスディレクションとなり、これだけでも謎解きミステリーとして十分成立していますが、視聴者の心を射ぬいたのは犯人の最後の語りでした。
犯行を暴き、春峯堂の主人に自白させた古畑ですが、ひとつ腑に落ちない点が。
凶器として使われたのは本物の壷。
犯人が古美術に通じるものなら、ニセモノで殴ったはずなのに、これはどういう事なのか?
いぶかしむ古畑に、春峯堂の主人は穏やかに語ります。
『古畑さん、あなたひとつ間違いを犯してます。
あの時、私には分かってました。どっちが本物か。知っていて、敢えて本物で殴ったんです。
用は何が大事で何が大事でないかということです。
なるほど、慶長の壷には歴史があります。しかし裏を返せばただの古い壷です。
それにひきかえて、もうひとつは現代最高の陶芸家が焼いた壺で、しかも私1人を陥れるために、私1人のために、川北百漢はあの壺を焼いたんです。
それを考えれば、どちらを犠牲にするかは……物の価値というのはそういうものなんですよ、古畑さん』(原文ままはおこがましいので、ちょっとだけアレンジしています)
まだ十代だった私の心にも響いた名言でした。
物の価値とは何か――よく考えさせられました。
長くなったので後編へ続きます! ラインナップは、
☆犯人を追い詰める華麗なる一撃――『しゃべりすぎた男』
☆気高く手強く、あっけないほど潔い犯人――『笑わない女』
☆タイトルと「凶器当て」の駆け引きがお見事――『偽善の報酬』
こちら↑です(>_<)




