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追放先の呪われた森がいつの間にか聖域認定されていた。~【浄化】スキルに目覚めた俺、神竜や大精霊たちに囲まれて一国の王になる~  作者: 戸津 秋太
第三章

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第47話 ゼスの悩み

お待たせいたしました!

今話より三章開幕となります!

ソニアの設定や細かな部分の変更については書籍版に準拠しております。

(追々ウェブ版の方も修正いたします)

書籍版の詳報は後書きに書いております!!

 アークライト王国による大樹海への侵攻をきっかけに、ゼスは大樹海を領土とした国家の樹立を決意した。

 王国兵の中に紛れていた神聖セレスティア教国の使者から建国の承認という後押しを受け、王都へ直接乗り込み、多少(?)手荒な交渉の末にアークライト王国からも承認を得たことで、直近の災難は免れたと言える。


 ユグシル村は今まで通りの平穏な生活を取り戻した――とは、いかない。


【洗浄屋】から【清浄王?】への転職を果たし、ゼスは新たなスキル《清浄王の加護》を獲得した。

 バウマンやケイラスたちを《浄化》したことに併せて、《清浄王の加護》により多くの人たちに浄化の加護を与えたことで、ゼスのレベルと精神力のステータスは伸びた。

 そして、統治者としての意志を抱いたことで覚醒した神遺物『神権の王笏』の能力を用い、ユグシル村から王国までの浄化を完了させたのだった。


 これにより、王国から地続きでユグシル村へ移動できるようになり、建国を宣言してからというもの、圧政に苦しんでいた王国民たちが大樹海へと流入していた。

 文官たちの多くは移住者の手続きに追われ、ドワーフやエルフたちは新たな同胞たちが使う家屋や施設の建設に忙しなく動いている。

 その様は平穏な生活とは遠く、忙しない日々が流れていた。


 問題は国内だけではない。

 この大陸上には教国や王国以外にも力を持った大国が二つ存在する。

 西のエグリス帝国に北のコルド公国だ。


 この二国からも建国の承認を受けなくては、盤石の体制が整ったとは言えない。

 そのためにも各国の代表者を招いての大々的な式典――建国祭を開催することが、ユグシル村の民たちの現状で最大の目標だった。


 ユグシル村が――この地が元の日常を取り戻すのは、まだまだ先の話になりそうだ。




 ◆ ◆ ◆




(…………まずい)


 ユグシル村の自宅、そのダイニングルームにて。

 ゼスは椅子に座って両腕を組み、顔を顰めていた。


「待ちな、ララ! 今日のゼス様の担当はあんたじゃないだろ!」

「いいじゃないですか、メイド長〜」

「ダメダメ! 一人許すとお前たちはすぐに駄々をこねるんだから!」


 メイド長とララの賑やかな声が響く。


(まずい、まずいまずい……)


 んぐぐぐぐと、口をもごつかせて、首を捻る。


「がるぅ! 主様の周りでうろちょろするなぁ!」

「ガルルルッ!」


 ソニアが威嚇するような声を上げ、バサバサという翼の羽ばたきと共にハクが唸る。


「ゼスさん、本日の朝ご飯です。……って、どうかしたんですか?」


 朝食の配膳を行なっていたフローラが、神妙な面持ちのゼスに不思議そうに小首を傾げた。


「いや、なんでも……それにしても、今日もすごい品数と量だね」

「ふふっ、ゼスさんのお陰で王国との交易が容易になったので、食材の種類が増えているんです。ピーターが喜んでしました。それに、料理人の方も移住してきているので、競い合っているみたいで」

「それで張り切りすぎちゃったんだ」


 フローラの説明に納得しつつ、目の前のテーブルに並べられた料理の数々に目を落とす。


 ナッツとドライフルーツが混ぜ込まれたパンに薄切りで綺麗に盛り付けられたチーズとバター、きのこ入りのオムレツに塩漬けのハム、そしてコンソメスープ。

 当然のようにデザートのタルトも付いていて、とても朝ご飯とは思えないボリュームである。


「! ゼス様、私がお世話を!」

「いやいや、一人で食べれるって! というかそんなこと(・・・・・)王城でもされてなかったんだからっ」


 ゼスがカトラリーに手を伸ばすや否や、メイド長の叱責を浴びていたララが目敏く近付いてきて、食べさせようとしてくる。

 慌てて固辞しつつ、豪華な朝食に舌鼓を打ちながらも、ゼスの頭の中はその三文字でいっぱいになっていた。


(まずいまずいまずいまずいまずい――まずいッ! いやピーターのご飯は美味しいけどそうじゃなくて!)


 確信があった。


(このままだと、ダメ人間になってしまう!!)


 今の暮らしを続けるのは、まずい――と。




 ◆ ◆ ◆




 ユグシル村の中心にして、大聖霊が宿る大樹。

 その中腹の枝葉に腰を下ろし、ゼスは頭を抱えていた。


「……つまり、人が増えてやることがなくなったばかりか、みんな自分を甘やかしてくるから怠惰な人間になりそうでまずい……と」


 頭上にふわふわと揺蕩(たゆた)うユグシルが、ゼスの嘆きを纏める。


「それだけならまだいいんだけどさ、ユグシル、何か気付かないか?」

「……?」


 翡翠の瞳に困惑の色を宿すユグシルへ、ゼスは深く、本当に深く息を吐き出す。

 そして、手のひらをぎゅっと握り締め、真剣な眼差しを向けた。


「王都から帰ってきてから早一週間。《洗浄》を使う機会がないんだよッ!」


 カッと目を開き、血涙を流す勢いのゼスに、ユグシルは呆れ混じりに納得する。


「ゼスの《清浄王の加護》のお陰で、ここにいる人たちには《浄化》の加護がついている。ゼスのスキルが必要なほど汚れることはない。みんな綺麗」

「それに服も、今までは開拓とか作業とかで汚れた服が出ていたけど、それもみんな王城からやってきたメイドたちが引き受けちゃって、俺の出る幕がないんだよ。みんな揃って『ゼス様に任せるわけにはいきません!』とかなんとか。……王城にいた時は時々手伝ってたのに」


 ガックリと項垂れ、すぐにまた顔を上げて訴える。


「せめて自宅とかを《洗浄》しようと思ってもさ! みんな綺麗に掃除してくれてるんだよ! 本当にありがとう! みんな丁寧な仕事だね! うぁぁ! 汚れていないところを綺麗にしてもこの心は満たされないよっ!」

「ゼスの情緒、怖い」


 残念なものを見るような眼差しに、ゼスはようやく口を閉ざす。


「ゼスは王様になった。王様には王様としての振る舞いがある」

「……それはわかってる。ここが好きで、みんなが大切で、だからこれは俺の望んだことだ。そこに不満はないんだけど……栄えれば栄えるほど、人が増えれば増えるほど《洗浄》の機会が増えると思ってたのに、まさかその正反対の結果になるなんて……」


 完全に想定外だと、再び頭を抱える。

 そんなゼスの姿にユグシルはくすりと笑った。


「ガルゥ」

「! ハク、どうしたんだ?」


 その時、地上からハクが飛んできた。

 弧を描くようにしてゼスの頭の上に飛び乗ったハクは、何かを訴えるように鳴き声を上げる。


「ロバートが探しているみたい。建国祭について相談があるんだって」

「そっか、すぐに向かわないと」


 ユグシルの通訳を受け、ハクの頭を撫でながら「伝えてくれてありがとう」と礼を言うと、ハクは気持ちよさそうに身を震わせた。

この度、本作の書籍化が決定いたしました!

発売日は2月10日!(一週間後です!!)


タイトルを書籍用に改めまして、

『追放された転生王子、呪われた森を《浄化》スキルで聖域化する ~のんびり辺境開拓していたらいつの間にか国ができてました~』

カドカワBOOKS様より刊行されます!


riritto先生の素敵なイラストでパワーアップした本作、

すでに予約も始まっておりますので、何卒よろしくお願いいたします……!

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