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ウォルヴァンシアの王兄姫~番外編集~  作者: 古都助
~WEB拍手小話・季節のイベント編&その他~
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2015年お正月イベント~サージェス&カイン編~

2015年お正月中に、WEB拍手のお礼にUPしていたものです。

◇◆◇◆◇2015年・エリュセード神社へようこそ!②◆◇◆◇◆



サージェス

「はーい、次の人どうぞー。

 ……はい、熱いから舌を火傷しないように飲んでね」


 パンフレットを手に足を向けた場所は、境内の一角にある『お神酒』&『玉子酒』を配るテントだった。

 宮司さん達が身に着ける白い上衣と、水色の袴を身に着けているサージェスティンの姿を見つけ、傍へと歩み寄って行く。


サージェス

「はい、次の人ー。……と、あ、君は……。

 いらっしゃい、来てくれて嬉しいよ。ちょっと待っててね。

 あと数人分配り終えたら、休憩だから」


 と、『貴方』に笑顔を向け、並んでいた人達に温かい飲み物を各種配り終えると、サージェスが天との中に『貴方』を招いきれ、丸椅子を勧めてくれた。

 そこに腰を下ろすと、サージェスは飲み物のカップが並んでいる長机に向かい、二つのカップを持って戻って来た。


サージェス

「はい、玉子酒だけどいいかな?」


 コクコクと頷く『貴方』の隣に置いてある丸椅子に腰かけ、カップを手渡してくるサージェス。


サージェス

「いやぁ、新年のおめでたい日だけど、やっぱり冷えるよねー。

 清らかな風と思えば、心も洗われるような気もするけれど」


 サージェスは手に持っているお神酒をひと口、舌全体に馴染ませると、飲んで飲んでと『貴方』を促してくる。


カイン

「うぅ……さ、寒ぃっ」


 熱い玉子酒をふぅふぅと冷まし、それを『貴方』が飲もうとした瞬間、自分の両腕を擦りながらテントの中へとカインが駆け込んで来た。


サージェス

「あれ? 皇子君、自分の仕事は終わったの?」


カイン

「おう、一応な。……てか、寒すぎてやってらんねぇ」


 サージェスと同じく、日本仕様の装束に身を包んでいるカインは、ガタガタと身を震わせている。

 話を聞くと、神社の屋根に積もっている雪を術で溶かしていく作業を延々とやっていたらしい。


カイン

「はぁ……、雪のせいで滑るわ転ぶわ、散々だったぜ」


 お疲れ様です、と、挨拶を向けた『貴方』に、カインの視線が定められる。


カイン

「お。お前も来てたのか。あけましておめでとさん。

 新年早々神社参りか、マメな奴だな」


サージェス

「大半の人はお参りに行くものなんだよ。

 ほら、そこに立ってられると、この子も落ち着かないでしょ。座って座って」


 遠回しに立っていられると邪魔だの抗議を受け、カインは端に置いてあった丸椅子を引き寄せて、腰掛けた。

 両手に息を吹きかけ、「寒い、寒い」と小声で繰り返しているカイン。


サージェス

「はい、お神酒でも飲んで温まりなさい。

 ごめんね? 傍でガタガタ震えてる皇子君のせいで落ち着かないよね」


 いえいえ、と、微笑ましそうに笑う『貴方』の手に、サージェスは幾つかの包み紙に入ったチョコを手渡した。


サージェス

「こんな物しかなくてごめんね?」


カイン

「サージェス、俺にもチョコ」


サージェス

「はいはい。仕方のない子だねー。

 っと、あ。そういえばもう、おみくじ所には行ったのかな?」


 その問いに頷くと、ロゼリア達といた場所で何があったかを話した『貴方』に、サージェスは「アレク君も新年最初がそれじゃ、可哀想だねー」と、目尻に笑いの涙を湛える。


カイン

「はっ、占いの類で一喜一憂してたまるかよ。

 そんなモンでへこんでるようじゃ、番犬野郎も俺の敵じゃねぇな」


サージェス

「おやおや、凄い自信だね。

 じゃあ、君も新年の運試し、やってみようか?」


カイン

「は?」


サージェス

「ロゼちゃんにおみくじの箱をひとつ借りてたんだよねー。

 何を引いても動じない皇子君なら、……迷いなく出来るんじゃないかな」


カイン

「……俺への挑戦状ってわけかよ。いいぜ? 何でも来いってんだ」


 一瞬だけ動揺の気配を真紅の瞳に浮かべたカインではあったが、右手を箱の中にがばっと差し入れ、乱暴におみくじを掴みだした。

 それを横からひょいっとサージェスが奪い、中を確かめる。


サージェス

「おおー。男らしくいったねー。

 えーと、……何々? 『大凶』」


カイン

「――っ!」


サージェス

「凄いね。滅多に出ないよ? 大凶なんて……。

 あ、ちなみに俺は『大吉』だったんだよ。ごめんね?」


カイン

「はっ!! 『大凶』が何だってんだよ!!

 さっきも言ったが、こんな事で動揺なんかしねぇからな!!」


サージェス

「『恋愛運』、意中の人の神経を逆なでして、心の距離が遠のく可能性、あり」


カイン

「――っ!!!!!!!」


 威勢よく大声を上げたカインに、無情にも告げられる『恋愛運』最悪の言葉。

 ゴイィィィン! と、特大の除夜の鐘を頭に打ち付けられたかのように、カインが丸椅子から派手な音を立てて転がり落ちる。


サージェス

「まぁねぇ……。皇子君の口は最悪に悪いし、ユキちゃんの逆鱗にも、余裕で触れるもんね」


カイン

「うっ……、ぐぐっ。

 そ、そんな結果、なんか……俺は気にしねぇからなっ」


サージェス

「はいはい。動揺してる事が丸わかりだからね」


カイン

「くそっ……。サージェス、俺はもう行くからな! 

 その紙、寄越せ!!」


サージェス

「おみくじを結ぶ木は、おみくじ処の奥だからねー」


 ドカドカと不機嫌をまき散らしながら去って行くカインを見送り、サージェスは『貴方』へと向き直った。


サージェス

「騒がしくてごめんね?

 それと、遅ればせながら、あけましておめでとう。

 まだ言ってなかったよね。今年一年が君にとって良い年になりますように。

 最初に挨拶を済ませなきゃいけなかったのに、俺としたことが、駄目だねぇ。

 ところで、次はどこに行くのかもう決めた?」


 パンフレットを開いた『貴方』に、サージェスは一緒にそれを見ながら解説を入れてくれる。


サージェス

「次は……、お守りやお札を売ってるとこが近いと思うよ。

 ルイちゃんと、お姉さんのセレスちゃんがいるし、

 他にも売り子の役目でクラウディオとユリウスもいるはずだしね。

 あとは、階段下で、ウォルヴァンシアの王様一家がやってるたこ焼き屋さんと、

 イリューヴェルの王様とウチの女帝陛下とシュディエーラがやってるクレープ屋さん。

 ……何で王族まで屋台営業やってるんだろうねぇ」


 ちょっとだけ遠い目をしたサージェスと一緒に、『貴方』も首を傾げる。

 お正月といえば、確かに神社の境内の周辺に出店を出す人達もいるが、何故に王族が水から屋台営業なのか……。

 二人でクスリと笑い合った後、『貴方』は次の目的地へと向かって歩き出した。

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