2015年お正月イベント~幸希&アレク&ルディー&ロゼリア編~
2015年1月中に、WEB拍手お礼としてUPしていたお話となります。
◇◆◇◆◇2015年・エリュセード神社へようこそ!◆◇◆◇◆
幸希
「アレクさん、ルディーさん、いきますよ~!!」
アレク
「準備は出来ている。……来い」
ルディー
「ひっめちゃ~ん!! いつでもいいぞ~!!」
新年を迎え、浮き立つ気持ちと共にエリュセード神社へと先に来ていた幸希の手には、何枚もの硬い円盤状のフリスビーが持たれている。
それを、一定の距離間離れている狼姿のアレクとルディーに勢いよく振り投げ、一枚、二枚とどんどん追加して飛ばしていく。
アレク
「ガウッ!!」
ルディー
「あらよっと!! 姫ちゃん、もっとこ~い!!」
幸希
「了解です! えい!! えい!! えぇええい!!」
神社の境内を駆けまわりながら、次々とフリスビーをキャッチしていく二頭の狼。
一枚も落とす事なく口でキャッチしてはポイッと投げ捨て、新しいフリスビーを捕えに飛び回る。
健康そうで楽しそうな光景ではあるが、……神社に訪れた『貴方』は思った。
この新年の朝早くから、この人達は何をやっているのだろうか、と。
戸惑いながら神社の階段の辺りで立ち尽くしていると、幸希が『貴方』の存在に気付いた。
幸希
「あっ!! すみません、いらっしゃってたんですね!!」
ルディー
「お!! 参拝人はっけーん!!
いやぁ、結構周辺が寒いモンだからさ、身体を温める一環で遊んでたんだよなぁ」
アレク
「気付かずにすまない。それと、新年あけましておめでとう」
幸希
「あけましておめでとうございます!!
新しい年を迎えての、最初の一日ですね。
今日、このエリュセード神社では、拍手を押してくれた方に、
『おみくじ』や『お神酒』をお配りしたりと、色々催し物があるんですよ」
ルディー
「あけましておめっとさん!!
姫ちゃんが今言った通り、拍手によって出て来る奴は違うんだけどな」
『貴方』の許に集まったアレクとルディーは人の姿へと戻り、幸希と共に『おみくじ』がある場所へと『貴方』を案内し始める。
境内に至るまでの道は賑やかで色々な屋台も出ていたけれど、境内周辺は不思議な静謐さに満ちているようだった。
神社の『おみくじ所』に辿り着くと、巫女服姿のロゼリアの姿が。
ロゼリア
「新年あけましておめでとうございます。
今日は微力ながら、私が巫女の役目を果たさせて頂いております」
幸希
「ロゼリアさん、お疲れ様です。
結構巫女服って寒そうなイメージがあるんですけど、大丈夫ですか?」
ロゼリア
「ご心配頂き、有難うございます。
ですが、この程度の気温では、騎士団勤めの私にとっては大した事はありません。
日々鍛練と、そう思い、何事にも屈さぬ心を鍛えております故」
幸希
「さ、さすがです、ロゼリアさんっ」
ルディー
「ロゼ、こっちの参拝者の子に、おみくじ引かせてやってくれないか?」
ロゼリア
「あぁ、これは……。新年あけましておめでとうございます。
今年一年が、貴方様にとって素晴らしき日々となりますように。
……と、おみくじでしたね。でしたら……こちらの専用おみくじ箱からどうぞ」
『貴方』に新年の挨拶を済ませたロゼリアが、おみくじの箱を手に持ち、差し出してくる。
ロゼリア
「ちなみに私は、『中吉』でした。
今年の運勢的には、仕事運が好調と書かれてあり、ほっとしております」
にこやかに微笑み、『貴方』が手に掴んだおみくじを受け取ると、ロゼリアはそれを代わりに開き、中身を確かめる。
「おめでとうございます。新年の幸先良い、『大吉』です。
健康運・仕事運・恋愛運・その他諸々、向かう所敵なしの結果とは……。
運試しとはいえ、『貴方』のこれからを祝しているかのようにも感じられますね」
ルディー
「おお~!! 『大吉』か~。いいなぁ。
俺やアレク、姫ちゃんはまだ引いてないけど、どうせなら良い結果が欲しいもんな」
幸希
「ロゼリアさん、私も引いてもいいですか」
ロゼリア
「勿論です。どうぞ」
今度は幸希の方におみくじの箱を差し出すロゼリア。
中をゴソゴソと掻き回し、――意を決しておみくじを掴む幸希。
「……ロゼリアさん、お願いします」
「かしこまりました。
幸希姫様の結果は……、おめでとうございます。『大吉』ですね。
何事も万事上手くいくと書かれてあります。
……おや、恋愛運の所に、運命の相手と結ばれる、との記載が」
幸希
「う、運命の相手、ですかっ」
アレク
「ユキの……運命の、相手」
ルディー
「今の所、本編では、アレクと皇子さんが候補って感じだけどなぁ……。
果たして勝敗はいかに!! ……と、面白がりたいとこだけど、
他にも伏兵とか、新キャラとか出てくんじゃね~かなぁ……」
アレク
「ルディー、新年から不吉な事を言わないでくれ」
ルディー
「悪ぃ、悪ぃ。そうなる前に、お前が姫ちゃんの心を射止めればいい話だもんな。
俺は団長として友人として応援してやるから、今年も頑張ってアプローチしていけよ!!」
アレク
「ユキ……、その、困らせるかもしれないが、もう少し積極的に行動してもいいだろうか」
幸希
「え? え~と、……あは、ははは。お手柔らかに、お願いしますっ」
(アレクからの大胆な宣言に、頬を染めつつ戸惑う幸希)
ロゼリア
「副団長は色々と真面目すぎますからね。
『貴方』も、そうは思われませんか? ユキ姫様に遠慮ばかりしていて、
結局、極限まで耐えた後に暴走してしまうのですからね」
同意を求めて来るロゼリアに、『貴方』は苦笑と共に頷く。
ルディー
「よぉーし!! じゃあ、次は俺が引くぞ~。……とりゃっ!!」
おみくじの箱から元気よく新年の運試しと共におみくじを掴んで取り出したルディー。
それをロゼリアへと手渡し、中身を確認して貰う。
ロゼリア
「団長は……、『中吉』ですね。
『吉』よりは上なので、良い結果と言えるでしょう。
あぁ、ですが……、旅行は少々控えた方が良いようですね。
今年の初めはあまり遠出をしない方が良いとあります」
ルディー
「出張でもない限り、ウォルヴァンシアにいる事の方が多いからなぁ。
今のとこは旅行予定もないし、問題ないな、うん」
ロゼリア
「失せ物が出て来る、とも書いてありますね」
ルディー
「そういや、前に出張先で買った面白アイテムがひとつ見たらないんだよなぁ……。
それが出て来るって暗示なら良いんだけどな」
アレク
「そういえば、去年に色々と買い込んで戻って来ていたな。
あまり余計な物ばかりを部屋に増やすのはどうかと思うんだが……」
ルディー
「多忙な騎士団長の、心の癒しなんだよ……ははっ」
ロゼリア
「団長のお部屋は、クローゼットを開けたら別空間に繋がっていましたよね、確か」
アレク
「あぁ、二つある内の片方の事か。前に無理矢理吸引されかけて驚いた記憶がある」
ルディー
「あはは、あの時は悪かったな。
新しく仕入れたアイテムを試してたら、誤作動しちまってさぁ」
幸希
「ルディーさんのお部屋って、一体……」
同じく戸惑っている『貴方』の傍に歩み寄って来た幸希が、お互いに顔を見合わせ、あはは、と苦笑を零す。
常日頃から団員達の面倒や世話を甲斐甲斐しく焼いてくれる騎士団長、ルディー・クラインだが、新年から彼の謎な一面が現れた一瞬でもあった。
ルディー
「あぁ、ほら!! 俺の事はいいから、次はアレクの番だぞ~」
アレク
「特に結果は何でも気にしない性質なんだが……。ロゼ、引かせて貰えるか」
ロゼリア
「どうぞ」
ロゼリアが差し出したおみくじの箱に手を差し入れ、何の気なく引き抜いたアレク。
それを手渡すと、ロゼリアがさっと中に目を通し……小さく、「あ」と、不吉な声を漏らした。
幸希
「ロゼリアさん?」
ルディー
「どしたー? あ、もしかして、『大凶』とか出たんじゃねーのか?」
ロゼリア
「……正解です、団長」
アレク
「……」
ロゼリア
「見事に、『大凶』を引き当てられました……。
今年一年は、自制に自制を重ね、慎ましく過ごすべし、と書かれてあります」
アレク
「普段と同じだな。特に問題はない」
ロゼリア
「中でも、特に恋愛運が最悪です。
意中の相手とは距離を取り、なるべく会わない方が良い、と……」
アレク
「……」
(真顔ではあるが、明らかに内心で動揺している)
ロゼリアからおみくじを受け取り、プルプルと指先を震えさせながら内容に目を走らせるアレクを、ルディーが哀れみの視線と共に肩を叩いてくる。
ルディー
「まぁ……運試し、だからな。
そこまで気にする必要もないだろ。ってか……」
アレクを姫ちゃんから引き離したら、それこそ騎士団の機能が低下の一途を辿る!!
……と、ルディーは二重に危惧している。
真面目で有能な副騎士団長が、おみくじの結果で精神を危機的状況に陥らせるなど、あってはならない。
幸希
「あ、アレクさん……あの」
アレク
「すまない、ユキ……。今年は、お前の傍にいてはいけないと、神が」
ロゼリア
「いえ、ただの運試しですから、書かれてある通りに行動する必要などないのですが」
アレク
「……本当か? ロゼ」
ロゼリア
「はい。ちなみに、その最悪の結果が書かれてあるおみくじは、
あちらの木に結び付けてください。厄払いにもなります」
ロゼリアの勧めを受け、早足でおみくじが沢山結び付けられている木へと向かうアレク。
その姿を見送りながら、ルディーが溜息と共に苦笑を零す。
ルディー
「ほ~んと、真面目な奴だよなぁ」
ロゼリア
「こと、ユキ姫様絡みになると、気にせずにはおられないのでしょうね。
あぁ……あんなにも真剣に拝んでいますよ。必死過ぎます、副団長」
ルディー
「姫ちゃんの事が大好きな証拠だなぁ。
なぁ、姫ちゃん、もうアレクに決めちまわね?
そしたら、俺も凄ぇ安心なんだけど」
幸希
「えっ、えっと、あの……アレクさんの事は大切な人だと思っていますけど、
恋愛感情となると……まだ、自分でもよくわからなくて、すみません」
ルディー
「あぁ、いいって、いいって!!
そうなったらいいな~っていう俺の願望なんだし。
姫ちゃんがいつかアレクを受け入れてもいいって思えたら、その時は、めいっぱい愛してやってくれよ」
幸希
「ルディーさん……。はい」
にかっと人好きのする笑顔を眩しく感じながら、幸希もその優しい声音に答えを返す。
ロゼリア
「出来れば、今年こそは副団長にゴールインしてほしいものですが……。
カイン皇子も、ユキ姫様にとっては特別な存在のお一人ですし、
まだまだ勝負の行方はわかりませんね。ふぅ……。
あ、そうでした。『貴方』はもう他の方々の所には行かれましたか?」
急に視線を向けられ、きょとんとする『貴方』は首を傾げた。
ロゼリア
「神社の境内周辺や、階段下の屋台の方にも、それぞれの催し物を出されていますよ。
よろしければ、足を向けてみられてはいかがでしょうか」
すっと、ロゼリアから差し出されたのは、神社周辺の案内パンフレットだった。
どこで何の催し物がされているのか、可愛らしい文字やイラスト付きで解説されてある。
十中八九、ウォルヴァンシア王宮に勤めているメイドのリィーン作だろう。
『貴方』はそう察しながら、次の場所に向かって歩き出した。




