壁ドン!シチュエーション~アレク編~
壁ドンというシチュで何か話を書いてみよう、とノリで書きました。
IFルート仕様の、アレク×幸希でお送りします。
カップリング苦手な方はご注意ください。
~もしも壁ドンされたなら~
『アレクディースの場合』
――ドン!!
「あ、アレクさん……?」
「ユキ……」
いつもの真面目な表情ではなく、熱で潤んだような眼差しが注がれる。
背中には、ひんやりとした硬い壁の感触。
アレクさんの左手は壁の上部に添えられ、もう片方の手は私の頬を包んでいる。
どうしてこんな状態になっているんだろうか。
確か、王宮内の廊下でアレクさんと出会って……。
「(カインさんとレイル君と一緒に城下町に出掛けた事を話しただけ……なんだけどっ)」
最初は穏やかに私の話す内容を聞いてくれていた。
なのに……、途中から様子が変わり始めたというか……。
咳を零すようになり段々顔が赤らんできたから、これはおかしいと思って話を中断した途端。
壁に身体を押し付けられ、気が付けばこんな状態に……。
「そんなに……、カインやレイル殿下との一日は楽しかったのか?」
「え……」
「お前が悲しい顔をしているよりはいいが……、
その笑顔を引き出したのが、……他の男という事実が、……辛い」
寂しそうに瞳を揺らしたアレクさんの声音には、苛立ちや切なさといった複雑な感情が見え隠れしている。
私が、カインさんとレイル君と出掛けのは初めての事じゃない。
親しい友人として、一緒に城下町や王宮内で時を過ごす事は多々あるし、
それは、アレクさんだって知っている事なのだけど……。
いつもなら、「ユキが楽しい一日を過ごせたようで良かった」って、優しく笑いかけてくれるのに。
私を見下ろすアレクさんの視線は、どこか責める意図を含んでいるかのようでもあり、どう反応を返していいかわからない。
「アレクさん、急にどうしちゃったんですか?
私……、何か、悪い事でも……」
「安心……出来ないんだ。
お前の心が俺に在ると知っていても……、いつお前を奪われるのかと思うと……」
「な、何を言ってるんですか……っ」
私達は、お互いの気持ちを通わせ合って、ちゃんと恋人同士になったのに……。
信じて貰えていない、わけではないのだろう。
多分、アレクさん自身の心の問題というか、とにかく、何らかの要因により大きな不安に陥っている状態だ。
「私が好きなのは、アレクさんだけですよ?
カインさんとレイル君は、友人なんです。それ以外の気持ちはありませんっ」
わかってもらえるように、アレクさんの深い蒼の眼差しを見上げて慎重に言い含めるように伝える。
壁から左手が離れ、私の背中と腰に手を回したアレクさんが、首筋に吐息を零し、強く抱え込むように抱き締めてきた。
それは、まるで子供が庇護者に縋るかのような必死さを秘めたもの……。
密着したアレクさんの体温はとても高く、私に対するアレクさんの強い気持ちを熱として伝えてくるかのようだ。
「ユキがそうであっても、……俺は」
「大丈夫です! 私は、誰に何を言われても、アレクさんだけなんですからっ」
こういう時は、私がしっかりと揺らがない意志をアレクさんに伝えないと!
恋愛的な意味で好きになって恋人にまでなったのは、世界で唯一人、アレクさんだけ。
不安がっているのなら、何度でも私の気持ちを言葉にして伝えよう。
それで、アレクさんが落ち着くのなら……。
けれど、事態はさらに予想外の方に行ってしまう。
「なら……、今すぐにでも……、俺だけの存在になってくれるか?」
「は、はい?」
意味を理解する前に、アレクさんの唇が、私の吐息ごと呑み込むように言葉を封じてきた。
熱が浸食するかのように、呼吸さえままならないキスが続く。
「んっ……、お、落ち着いてくださっ、いっ」
「俺だけだと……、ん、信じさせてくれ」
完璧に暴走してます、アレクさん!!
私が少しでも怯えたり抵抗の意志を見せれば、すんなりと引いてくれるのは通常状態。
なのに、何で今日に限ってこんなに強引仕様なのっ。
しかも、最初に心配したとおり、アレクさんは正気じゃなかった。
あの時零していた咳、赤らんでいた顔、それが何を意味するのか……今なら正確に把握できる。
アレクさんは……熱を出している! しかも、相当体調が悪いはず。
キスをしている今この瞬間も、息をする事自体辛そうだし、蒼の瞳は頼りなく潤んでいる。
常の状態であれば、彼がこんな意味不明な行動に出る事は、よっぽどの時以外にはない。
「んんっ!!」
そろそろ呼吸が苦しくなってきて、ドンドンとアレクさんの背中を叩く。
でも、お互いの間に呼吸できる隙間が開くのは一瞬の事で、また深く奥まで入り込んでくるかのようなキスが押し付けられる。
こんな事している場合じゃないのに、早く彼を自室に戻して安静にさせないと体調が悪化してしまう。
「(お願い! 誰か通りかかって私を助けて~!!)」
神頼みよろしく心の中で大声を上げて叫ぶと、アレクさんの口から小さな呻きが漏れた。
ずるりと……、私の肩を掴みながら崩れ落ちていく彼の身体。
何が起こったのだろうと、急いでその身体を支えるように手を伸ばそうとすると、
アレクさんの襟首がグイッと後ろに引かれていった。
「ろ……、ロゼリアさん?」
「ユキ姫様、副団長が無礼を働き、大変申し訳ありませんでした」
深々と、謝罪を口にしながら頭を垂れているのは、騎士団の副団長補佐官、ロゼリアさんだった。
どうやら彼女が、私のピンチを救ってくれたらしい。
気を失ったアレクさんを溜息と共に見下ろして、向こうからゆっくり歩いて来る人物に向かって投げた。
あれは……、ルイヴェルさん?
「ルイヴェル殿、診察と薬の処方、すみませんがよろしくお願いします」
「アレクが体調を崩すとは珍しいからな。念入りに診ておこう」
「あ、あの、お二人とも……、どうしてここに?」
呆気にとられている私が、お二人を交互に見遣り疑問の言葉を向けると、
ロゼリアさんがもう一度私に向かって頭を下げた。
「実は、副団長が休憩に入られる前から、どこか様子がおかしいとは思っていたのです。
早めに仕事を終えられてはどうかと提案したものの、副団長は真面目な方ですから……。
どうにか休憩だけとって貰う事には成功しましたが、……時間を過ぎても帰って来なかったので、
もしやと思い、ルイヴェル殿に同行して頂いて探しに来たのです」
「そうだったんですか……」
説明を聞き、視線をアレクさんの方に向けると、ルイヴェルさんが膝を着いて診察をしているところだった。
さっきよりも顔が真っ赤になって、苦しそうに胸を上下させているアレクさん……。
私がもっと早くに気付いて、自室に戻る事を勧めていれば……。
「よもや、ユキ姫様に無体を働いているとは……。
本当に申し訳ありませんでした」
「い、いえ! 私なら大丈夫ですから。
それより、早くアレクさんを部屋に運んであげないと」
「……性質の悪い風邪と、寝不足が原因だな。
ロゼリア、アレクは俺が部屋まで連れていく。
ユキと一緒に後をついて来い」
背中に軽々とアレクさんを背負ったルイヴェルさんが歩き出すのを確かめて、
私とロゼリアさんもその後を追い始めた。
そして後日、熱と体調不良のせいで自分が何をしたかを思い出せずにいたアレクさんに、
ロゼリアさんとルイヴェルさんが事実そのままに伝えてしまった。
当然、それを聞いた真面目なアレクさんは顔面蒼白になり、私の部屋へと駆け込んできた。
同意も得ず、自分勝手な行いを私にぶつけたと心底反省した声音で謝罪をし、
自分の愛剣を私に差し出して、「俺を叩き斬ってくれっ」と一言……。
あの目と声は本気だった……。だけど、私がアレクさんを傷付けたりなんて出来るわけもなくて、
後から駆け付けてくれたルディーさんとロゼリアさんと三人で、どうにか宥める事になった。
真面目すぎるといえば、真面目なんだけど……。
普段から自分を抑えて生きているようなアレクさんだから、
風邪や体調が悪くない時なら……、あの時のように強引なアレクさんも……。
「(好き……かもしれない、かな)」
全身全霊で私を好きだと伝えてきたアレクさんの必死さに、
あのキスで感じた深い想いに……、いつも以上にドキドキしてしまったから。
壁ドン! シチュ第一弾~アレク編~
カイン
「ん~……、壁ドンつーか、番犬野郎が熱で暴走してるだけの情けない話だな」
ルディー
「切羽詰まった時か、そういう時しか強引な手段出来ねーもんな、アレクは……」
ルイヴェル
「元々、相手を尊重して行動するタイプだからな。
ふっ、しかし壁ドンか……。色々遊べそうな設定だな」
カイン
「おい、誰かセレスフィーナ呼んで来いよ。
この腹黒眼鏡……、
IFルートやバレンタイン話の時みてーに行き過ぎた事やらかす気だぞっ」
レイル
「ここが『なろう』サイトだという事を肝に銘じてほしいものだ。
万が一、暴走でもされた日は……、はぁ」
サージェスティン
「はははっ、そうだねー。
ルイちゃんや俺ランクになると、
規制入らない限り、好き放題やっちゃいそうだもんねー。
……月関連とか行っちゃう?」
カイン&レイル&ルディー
「絶対やめろ!!(てくれ)」
カイン
「古都助にムーンに行く技量はねぇし、まず俺が妨害してやる!」
ルディー
「つーか、ルイヴェルはバレンタイン話で壁ドンしてんだから、
今回は出番なしでいいんじゃねー?
サージェスティンもIFルートでやってるしなー、壁ドン」
カイン
「よし、壁ドン!計画表からルイヴェルとサージェスの名前消しとくな」
サージェス
「ちょっと……、裏まで来ようか? 皇子君」
ルイヴェル
「皆、平等に話を振り分けるべきだろう?
お子様組が果たせない部分を補うのが、俺達大人組だからな」
カイン&レイル&ルディー
「お子様言うな!!」(怒)




