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虚無の空間~???視点~
いずれ幸希達の敵となる少年のモノローグです。
物語が始まるよりも遥かに前の事。
絶望さえ、意味をなさないほどの長い年月……。
『僕』は、自身にとって、一番大事で、失いたくなかった存在の前で、膝を抱えていた。
ここに光が差すことはない……。
ずっと、……ずっと……闇に浸食されたこの場所で、意識を保ったままだ……。
死ぬことも出来ず、未来永劫に続く虚無ともいうべきこの場所で、
『僕』は、怒る事も、泣く事も、笑う事もなく、
絶望なんて言葉なんて陳腐なものだと思えるぐらいの時を過ごし続けてきた……。
いっそ、意識さえも塗りつぶしてくれればいいのに……。
そう考えても、この闇も、無音の世界も……、終わることはないのだろう。
『僕』は傍にある温もりに身体を預けると、ひとときの解放を求めて眠りに堕ちた……。
眠る間際、その温もりに触れながら、僕は叶いもしない願いを想い浮かべた。
いつか……、必ずここから出よう……。
……必ず……、『アナタ』をここから……出してあげるから……。




