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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓


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74/118

2 辻視点・1

+αは、いろんな視点で書いてきます。

ちょい、ややこしいかもしれませんが、よろしくお願いしますm--m

辻はHRが終わったばかりで騒がしい自分のクラスをさっさと後にして、原田と佐々木がいる一組へと廊下を歩いていた。

辻は手に持った携帯のメール画面を見て、それをズボンのポケットにしまい込む。

「なんなんだか」

小さく呟いた辻は、HRが終わってすぐに送られてきた佐々木からのメールに首を傾げた。


――へるぷ


カタカナでも英単語でもないその書き方に佐々木の焦りを感じて、クラスメイトとの会話もさっさと打ち切って来たわけだけれど。

一組の教室の前についてドアを開けようとした辻は、違和感を感じてその手を止めた。

しかし違和感の正体に思い当たる節が無く、少し考えてからいつも通りがらりとそのドアを開けた。

一歩踏み出して、その違和感が強くなる。

眉を顰めながら、いつも通り原田と佐々木のもとに向おうとして――


「……どうしたの」


教室に、辻の少し低めの声が響いた。

響いたのだ、それはもう。

なぜならば、教室内が静まり返っているからに他ならない。


違和感の正体は、音、だ。


自分のクラスがそうだったように、普通ならHRが終わったばかりの教室内は帰宅準備をしたり部活へ行く人もいれば、だらだらと話しをしている人もいる。

――はず。


だというのに、自分の呟きにも近い声が教室内にこうも響くとは。


そしてその原因は、近づいているのに全くこっちを見ない友人にあるだろうと察して顔を上げた。


「ね、どうしたの? このヒト」


原田を指さしながら後ろの方の席に座る佐々木に声を掛けると、ちょいちょいと手を振られる。

辻はもう一度原田を見てから、佐々木の側に歩み寄った。

「佐々木が来いっていうから来たけど、なんなの。怖いよこのクラス」

静かすぎて。

そう続ければ、佐々木は辻の耳元に掌を寄せて小さい声で話し始めた。

「つっか、朝から原田があの調子なんだよ。無表情はデフォだけど、なんかもやもや感っていうかイライラ感っていうか、漂ってくる雰囲気が怖くてよ。担任まで怖がって、話聞いちゃいないのに一度の注意で引き下がっちゃうし」

「……なんか、あったの?」

佐々木に問いかけながら、原田に視線を向けた。

「こっちが聞きたいよ」

辻の視線の先には椅子に座る、原田の後ろ姿。

でかいがたいが小さい椅子についてる姿は、いつみても笑える。

――じゃなくて……と

両腕を前で組むと、ふむ、と呟いた。


「体調不良は治ってるだろうし、アオさんに面倒見て貰えて機嫌いいはずじゃないの?」

一昨日、原田の姉の三和から迷惑をかけたという謝罪とお礼のメールが来ていた。

その話からすると、翌日までアオさんに看病してもらってから自宅に戻ったって事だったけど……。



だったら、あんなに不幸駄々漏れ状態にはならないよね?

そこまで考えてから、辻はゆっくりと原田に近づいた。

真横に立っても、頬杖したままの原田は気付かない。

辻は首を傾げながら佐々木を見て、小さくため息をついた。



佐々木だけではなく、このクラス全員が固唾を飲んでこっち見てるとか。

一体なんなの、これ。

ふと気づけば、教室の入り口から井上がひょっこり顔出してこちらを窺ってる。

いや、そこにいるなら入ってこいよ。

目でそう訴えてみたけれど、ぶるぶると頭を振ってドアにしがみついた。


――馬鹿じゃないの、井上


辻は深く溜息をついて、原田を見下ろした。

いつもは平均より背の高い自分でも見上げる高身長の原田のつむじを見ながら、どうしようかな、と首をやや傾げる。

まぁ、考えたって何にも思い浮かばないから、やる事は正攻法。


「原田」

とりあえず、声を掛けてみる。

「……」

じっと黒板を睨みつけたままの原田は、何も反応しない。

「ねぇ、原田ってば。怖いんだけど、顔も雰囲気も。ていうか顔が」

「……」

それでも何も反応しない。


「部活の話合いするの、忘れてないよね? このままだと、始められないよ?」

とりあえず興味を惹くだろう話題(生真面目な原田は、遅刻が嫌い)を出してみたけれど、やっぱり反応は無し。

「……面倒だなぁ、もう」


辻はもう一度深々と息を吐き捨てると、ぐるりと教室内にいる生徒を見渡した。


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