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その目を開くとき 3 <マキア視点>






聖女様が居るだけで周りが光り輝く、そう言い伝えられてきた。奇跡の体現者、そうとも呼ばれている。

でもマキアは、初めて会った聖女の姿に気が付いてしまった。

その言い伝えの正体はただの魔力だ、身体から溢れた魔力が光の属性を持っていて、だから輝いて見えるのだと。

其れだけの魔力があるのだ、色々な魔法が使えるのだろう、でも神の寵愛はそれだけなのか、疑問が浮かぶ。

余裕がないのか、アルフェンスと対峙した聖女は強張った表情のまま、笑みを縁取る。そんなことをしても取り繕えていないと指摘はできなかったが。

去っていくアルフェンスを、切ない表情で見送った聖女はただの女の子に見えた。









「…聖女は、俺の母親と同じだ。“気味が悪い”と血の繋がった子を見捨て、一度も見向きもしなかった母親と」


聖女の言葉に微かに震えたアルフェンス、傍にいたマキアにはわかってしまった。彼が酷く傷つき、悲しみ、苛立ち、怒ったことを。


「“可哀想”と決めつけ、俺を縛り付けるな!」


慟哭に似た叫び、マキアより背も高く立派な身体、それなのに、その姿は小さな子のように途方に暮れているように見えた。

あぁ、ごめんなさい。

私には聖女を責める資格はない。

ちゃんとアルフェンスを見ていなかったのは自分も同じ。

王子なのだから、魔力が私よりあるのだから、同い年の人である彼をそう線引きして、呪いについて語ってくれた、その時も秘密を話してくれたことを何処かで喜んでいた。

アルフェンス様、喉の奥からどうにか呟いた名は彼の元にも届いたようで。

抱きしめられて、彼の鼓動を耳で感じ取る、どうか、どうか、神様がいるなら彼を救ってください。彼は呪いを受けるほどの罪を犯したのですか?十分罰は受けているではないですか。

実の母には気持ち悪がられ、偽りの仮面をつけることを強いられ、勝手に死ぬことも許されない王の子に、どうして、こんな仕打ちを。


こんな身分もない自分に兄を引き合わせくれた存在。


いつだって優しかった。


いつだってマキアの領域を踏み荒らさないように気をつかってくれた。


いつだってすんなりと価値観を合わせてくれた。


自分に怯える者に、どうしてこんなに、親しくできるの?









「ありがとう、マキア。君が見つけてくれて、本当に良かった」


いいえ、いいえ、其れを言うなら私の方です。

私を見つけてくれたのが、アルフェンス様ですよ。







ハラハラと頬を伝う涙が、視界の邪魔をする。

衝動で手を伸ばして、彼の顔に触れて確かめる、形を、その存在を。

縫い付けられた糸、禍々しいと思っていた其れは、彼の温もりを宿していて。切なさに堪らず、両目に愛しくキスを送る。











マキアの行動に驚いた彼は、少し固まった後、年相応に照れて頬を染める。


アルフェンスは何のしがらみもなく、朗らかに微笑んだ。


つられて、マキアも笑う。




弧を描く、吸い込まれそうな銀色の瞳はマキアだけを映し出す。





二人の笑みは、とてもうつくしかった。







お待たせしてすみません。完結表記した小説をどう続きを投稿すれば良いのか、忘れてしまって、書き終わっていたのに投稿できなかったとかそんな…。

これにて本当に完結です。

ご愛読、ありがとうございました!

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