表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/37

episode thirty-one

宜しくお願いします

「……冬華」

 

 俺はスマホを見詰め呟く。

 

 楓さんが居たにも関わらずか。

 しかもこの人混みで拉致るかよ。


 気が狂ってやがるな。 

 

「真璃、麻友、愛奈。ありがとう」


「あれ?」


「もういいの?」


「まだ途中だよ?」


「うん、大丈夫。ありがとな!」


 冷静を装い、マッサージ三人娘に声をかける。

 似たような名前だが、3人とも赤の他人だ。

 仲良しなのは変わりないが。


「じゃ、俺ちょっと用事が出来たんだ」


 そう言って衣装のまま早足に校舎の裏手に向かう。

 緊急時の合流地点にしておいた。


 人も居ないし、ちょうど良い。


 ポイントに着くと、先に楓さんが到着していた。


 彼女は俺の顔を見るなり、その場で即土下座。

 声を震わせ謝ってきた。


「も、申し訳ございませんっ……!」


「いいんだ。それより詳しい状況を」


「は、はい……」


 楓さんを立たせて、情報を聞く。


 彼女の車に移動して、すぐさま移動開始。


 ついでに春賀も乗っけた。


 俺が適当に理由を付けて引っ張ってきた。

 今日はこのまま家に待機してもらう。

 今から母さんを迎えに行き、2人を家に放り込むのだ。


 こうなった以上、最早四の五の言ってる暇は無い。


 楓さん経由で、軍と警察に出動を要請。

 今までの映像やら何やらも一緒に送信する。

 特に楓さんの元所属で、動ける部隊を出してもらうのもお願いした。

 

 ……多分無理だろがな。

 

 動いてくれるといいんだが。


 その間に俺たちは車をぶっ飛ばして、母さんを迎えに行く。


 母さんの職場に着いた。


 受付のお姉さんに母さんを呼んでもらう。


「冬夜くん、どうしたの?」


 この後会議が……とか言っている母さん。

 残念ながら会議は出れないな。


「母さん、今すぐ家に帰るんだ。ほら、車乗って?」


「え、ちょ、冬夜くん!?」


 母さんの手を引っ張り、無理矢理連れて行く。

 モタモタしている時間はない。


「ワケは後で話すから。会議は欠席して」


 母さんを後部座席に放り込み、ドアを閉める。


 再度車を走らせる。

 

 自宅に到着すると、既に警察が到着していた。


 車庫に車を滑らせ停車する。


 道中、既に春賀と母さんへ事情を話した。

 ストーカー云々は言ってないが、簡潔に冬華が拉致された事を伝えた。


 すぐさま警察官達の元へ寄る。


「霧桐さんですね? 私達は警視庁公安警察の--」


 --バタバタバタバタ!!!


 突如ヘリコプターのエンジン音が、紹介をかき消す。

 空を見上げると黒塗りの皇国軍ヘリが3機、低空ホバリング。

 

 ハッチが開いているタイプのヘリで、形状はヒューイに近いな。


 すると3機からワイヤーが垂れ、4人ずつ計12人人員が降下してきた。

 かなりの練度だ。

 覆面で顔を隠しているが、胸元には皇国軍の紋章が入っている。


 俺たちの前まで走ってきて、整列。

 敬礼をした。


「我々は皇国軍の者です。私は如月弥生、階級は大尉。所属は伏せさせて頂きます……久しいですね、郡山少尉」


「お、お久しぶりです、如月大尉」


 キサラギ ヤヨイか。

 楓さんの知り合いで良かった。


 敵だったら俺たちは終わってたな。


 まさかこんなに迅速に動いてくれるとは。

 ヘリで来るとは思ってなかった。


 ついで、公安警察の連中にも敬礼をする。


「ご苦労様です。この件に関しましては、国際テロ組織『女神の使徒』の関与が認められています。よって、軍による掃討作戦を実施。既に作戦は進行中のため、以降は我々が引き継ぎます」


「……了解しました。公安でも彼らの関与が濃厚の見方を示しております。警察もできうる限りの協力は致します。失礼します」


 警察の人らは俺たちにも敬礼をして、帰って行った。

 警察を追っ払うのか。


 もう俺たちは軍の保護対象なワケだ。

 対応が早い。


「詳しい話は後ほど致します。もうすぐ追加の人員が……来ました」


 再びヘリのローター音。

 それから輸送車両と移動基地がゾクゾク押しかけてきた。


 すげえな。


 覆面達が家の中の不審物等を念の為確認してくれた。

 

 俺たちは家の中に入る。


 すぐさま機材を運び込み、人員を警戒に当てる。


 ついでリビングにて、如月大尉らと話に入った。

 

 楓さんの話によると。

 

 拉致の発端は、俺の握手会終了数分前。

 突然楓さんがお面をした3人組の女に襲われたそうだ。

 当然楓さんは応戦した。


 しかし、3人組はつきず離れず手を出してきて、楓さんも決めきらない。


 周りの人間は、学校祭のイベントかなんかかと思い、人集りを作っていたそうだ。

 だから楓さんも殺すつもりでの攻撃は出来なかったそうだ。


 万が一殺しちゃったら大惨事だからな。


 半分以上の人間がパニックになるだろう。


 そんな感じで時間を稼がれ。


 その隙にまんまと出し抜かれて、冬華を拉致られた、と。

 

 学校祭というある種異常な空気が、俺たちに不利に働いたのか。

 それを狙って今日誘拐を実行したのだとしたら、敵は相当知的で大胆だな。

 

 クソッタレが。


「そして、郡山少尉……郡山さんから送られてきた映像で、我々の派遣が決定しました」


 さらに如月大尉が引き継ぐ。


 さっきも出た通り、国際テロリスト集団の関与が認められた。

 映像の人物達のうち1人が国際指名手配されているテロリスト、『女神の使徒』幹部だとスパコンが認めた。

 

 算出されたデータは一致率94.3%。


 最早本人確定だ。


 というわけで、軍はテロリストを一網打尽にする機会だと、即座に動いてくれたらしい。 

 

 映像保存しといて良かったわー。


 楓さん神。

 学校を常時俯瞰監視とか、天才っすよ。


 因みに『女神の使徒』ってのは、女性至上主義、男性家畜化推進を掲げるテロリスト集団だ。

 爆破テロや自爆テロ、無差別殺人、男性拉致など、国際的に数々やらかしているヤバいヤツら。


 冬華はそんなウンコ集団に捕まった可能性が高い。


 一刻も早く助け出さないと。


 俺が。

 この手で。

 何としても。


「……」


 それにはまず、この軍人共をどうにかせねば。


 母さんは話を聞いて泣き出してしまった。

 だから俺は母さんに春賀を付けて別室へ入れておいたから、2人が居ない今がチャンス。


 楓さんは俺に従うだろうしな。

 

 最早身も心も俺のモノだし?


 こんないい女誰にもわたさん。



 閑話休題 



 さて、どうしたもんか。


 拉致されたということは、何らかの目的があるはずだ。

 殺すのならばその場で殺ればいいのだからな。

 ヤバいテロリストなんだ、今更民間人の被害なんて気にはしないだろう。


 爆弾放り投げて終わりで構わない。


 それなのに拉致された。

 高確率で冬華はまだ生きている。


 発生から30分強。


 早く居場所を特定しなきゃならん。


 ~♪ ~♪


 数分悩んでいると、突如俺のスマホに着信が来た。

 

「……冬華だ」

 

 俺はスマホを手早く逆探知装置に繋ぐ。

 軍に借りたヤツだ。


「……もしもし」


『もしもし、霧桐冬夜さんですか?』


 知らない女の声。


「……ええ、そうですが」


『では単刀直入に、これからお送りする場所に1人で来て下さいね。失礼します』


「おいテメェ、冬華は無事だろうな? ……クソが、切りやがった」


 続いて一件のメールに、指定の場所がついて送られてきた。


「……探知は?」


 如月大尉が担当の人間に問いかけた。


「通話が短すぎて……」


 クソ。


 徹底してやがる。


 強襲するのは無理だな。


「……冬華のスマホの位置情報は?」


「探知できません……恐らく本体はもう破壊されているかと」


 俺の質問にも答えてくれる軍人。


 俺の容姿が幸いしたか。


 ……はぁ、仕方ねぇ。


 どうやら連中の目的は俺か。

 ここ最近のストーキングで、俺が家族と仲がいい事が知られて。


 だから冬華が狙われたのか?


 俺には楓さんがついていたから、弱い方を。


 ああクソが。


 ムカつくムカつくムカつくムカつく。

 

「楓さん、車を」


 席を立ちながら、楓さんに言う。

 彼女は俯き、下唇を噛み締めた後顔を上げた。


「……………………は、はい」


 俺の後には続く楓さん。


「……お待ちを」


 そこに待ったをかける如月大尉。

 行く手を阻む隊員。


「それは了承しかねます」

 

 もういいよ。


 冬華の居場所も分からない。

 ちんたら探してたら、冬華の身に何があるかも分からない。


 ここはいっちょ賭けに出るしかねぇだろ。


 つーわけで、そこを退け。


 邪魔するなら--

 


「押し通るぞ?」



 ジロリ。


 本気の殺意を乗せて、目前の隊員を睨み付ける。


 だが流石覆面、特殊部隊員は伊達じゃ無い。 

 ほんの僅かに身じろぎしたのみで、道は譲らない。


 男があいてでもパンピーみたいにラリッたりしないで、私情を殺して職務を遂行するその精神。

 軍人の鏡だ。


 けどな。


 今は道を譲ってもらうぞ。


 是が非でも、俺が通る。


「……楓」


 まさに阿吽の呼吸。


 楓が右手の隊員に襲い掛った。

 その一瞬、俺から全員の意識が逸れる。


 その隙を突いて、左手の隊員を攻撃。

 

 昏倒させ、手榴弾と拳銃を奪い取った。

 

「そこまでです」


 如月大尉以下他の隊員が、俺たちに銃口を向ける。


「テメェがな」


 ニヤァと頬をつり上げて、俺は振り返った。


 拳銃を足蹴にしている隊員に突き付け、手には手榴弾。

 既にピンが抜かれた手榴弾は、俺がレバーを押し込むだけでひき肉を沢山作ってくれる。


 楓は不意打ちに対処するべく、俺の背中と周囲を警戒。


「早く銃を下ろせ。この場で仲良くハンバーグの材料になりてぇか?」


「……」


 如月大尉は右手をあげて、銃を下げさせた。


「おっと、その手は何だ? 抜き撃ちしても構わねぇが、俺は撃たれた瞬間全身筋肉が強ばってどのみちドカンだぜ?」


 もう誰がテロリストか分からんセリフを吐いている。

 落ち着け俺。


 もっとクールに、よりスマートに。



「いいか、よく聞けよ?」



 如月大尉の目をみながら告げる。



「俺の、邪魔を、するな」



 助けに来てくれた人達にこの仕打ち。


 だが罪悪感など微塵も感じない。


 どこの世界に女を助けに向かうの邪魔されて喜ぶ馬鹿野郎がいるってんだ?

 

 居るなら教えてくれ。

 そんなやつぶん殴ってやる。


 なあ、俺が1人で向かうことに意味があるんだ。


 敵が確実に油断した、その瞬間。


 その瞬間が欲しいんだ。


 だからな。


「俺は一人で向かう」


 邪魔してくれるなよ?


 










結局Twitterで言ってた通りの展開になっていきます(笑)


読んで下さってありがとうございました!


それでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ