episode twenty-four
それからは怒濤の日々を過ごした。
俺と楓さんで勝手にスケジュールを組んで、春賀に渡し生活させる。
春賀は日曜日、母親の見舞いに欠かさず行くそうで、そこにはちゃんと配慮したが。
早朝基礎訓練、テスト勉強、劇の練習、夕方から夜まで各種訓練。
この繰り返しだ。
今は6月の終盤、期末テスト明けの時期である。
春賀を持ち帰ってから、一月ちょっと経った。
俺たちをつけ回している連中に、依然動きはない。
結局、俺は楓さんに頼んで、彼女の″個人的″な知り合いに協力してもらっている。
楓さんの名前と俺をだしに上手く使って、監視体制を整えてもらったのだ。
その際少なくない額の金が動いた。
主に楓さんの口座から。
ごめんよ、楓さん。
警護官の人数は変わらないが、最先端の複合監視システムを使用できるようになったのはでかい。
軍用監視衛星と無人哨戒機、それから防犯ネットワークの三側面から、追跡者を捕捉している。
ただ、これを使えるのは3ヶ月が限界だと楓さんが言っていた。
しばらくは十分だろう。
ま、この一月でとりあえずのパターンは春賀に叩き込んだ。
もしもの時は、その場凌ぎくらいはできるだろう。
1日最低5時間訓練に費やしている。
4ヶ月で一通り終わるだろう。
そのあと半年かけて仕上げにはいる、と楓さんの言。
「ふ……ふ……」
因みに今は早朝の走り込み中。
ぶっちゃけ普段の俺と楓さんのトレーニングに春賀を混ぜたようなもんなんだけどな。
1日の流れとしてはこうだ。
朝、起床午前4時10分。
春賀、俺と楓軍曹に叩き起こされる。
ランニング+ダッシュ+筋トレ+柔軟+α。
7時半登校するため、家を出る。
授業中は授業を聞かず、専らテスト勉強。
もちろん先生にバレないようにである。
各教科のテスト範囲は、アバウトだが俺が教科担当の先生から聞き出した。
色仕掛け、万歳。
もともと学力はトップレベルな春賀だ。
これでテスト対策は十分だろう。
頑張れ学年一位。
放課後は帰宅後は即、楓さんのシゴキが始まる。
当初は教官モードと普段の楓さんとのギャップに驚いていた春賀だが、今はもう慣れたようだ。
期末テストが終れば本格的に学校祭にむけ準備が始まる。
午後の授業は五時間目まで、後は4時まで学校祭の用意となるのだ。
その後、部活に行く生徒は部活へ、帰る生徒は家へという流れ。
劇の練習もいよいよがっつり入ってきて、春賀は大変そうだ。
ファイトー。
俺もセリフを覚えなきゃダメなので、ボケッとはしてられない。
「……ふぅ、到着。じゃ、シャワー浴びよう」
「は、はい……おい、返事はどうした?」
「……ぜぇ、はぁ、ひゅぅ……さ、sir……」
ギャップが(笑)
「まあまあ、楓さん。春賀、ゆっくりでいいから、ちゃんと呼吸を整えろよ?」
ウチの方針は飴と鞭、オンとオフ。
飴は俺、鞭は楓軍曹。
オンは楓軍曹、オフは普段のヘッポコ楓さんと俺。
メリハリは大切だよね。
■□■□
「おはよう」
朝の食卓を囲っていた母さんと冬華に挨拶をして、俺も席につく。
楓さんと春賀も遅れてやって来た。
なお、母さんたちには俺のプランは知らせていないため、普通に生活している。
にしても、楓さんと春賀は一緒にシャワーしてたのか……いいなぁ~……
想像するだけでムラムラしてくる。
最近ヤってないから性欲が。
もう一月以上か?
ヤバイよ、色々。
些細なことでも気になったり、勃っちゃったりする。
盛りのついた童貞かよ。
自分が恥ずかしい。
ああ、畜生。
いい匂いがするぜ……
「じゃあ、お母さんはもう行くわ。みんな、気を付けてね?」
「はーい、行ってらっしゃーい」
おっと、もうこんな時間か。
俺は慌ててご飯を口に詰め、制服を着て玄関に向かった。
「楓さん、よろしく」
「は、はい」
もう俺は送迎を楓さんに託した。
歩くのがダルいわけではない。
何かあったときのためにだ。
車に乗り込む。
助手席には俺。
後ろに冬華た春賀だ。
「……出します」
出したい。
あ、ついぽろっと願望が。
声に出さなくて良かった。
ところで、楓さんの車は白だ。
セダン型で、スポーティーなフォルムをしている。
多分車体は防弾仕様。
ガラスも恐らくポリカーボネート辺りの防弾ガラスだろう。
無論、タイヤもだ。
パッと見ただけではわからないが、ハンドルの下らへん、左手でとりやすい所に拳銃の弾倉が収納されている。
探せばまだまだ秘密がいっぱいだろこの車。
夢で溢れてんな。
これが本当のロマンスカーじゃん。
スマホを確認する。
リアルタイムで位置情報が更新され、航空画像が送られている。
安定のストーカーだな。
4台後ろか。
「……」
あーイラムラする。
初めての学生時代くらい満喫させてくれよ。
「と、到着です……行ってらっしゃいませ」
学校だ。
行きますか。
「行ってきます」
「行ってきまーす!」
「ん」
春賀は車内で船を漕いでいたため、とても眠そうだ。
楓さんはそれについてなにも言わない。
何故なら、今の彼女はヘッポコだから。
「またね、お兄ちゃん! 春姉も!」
「おーう」
「ん」
冬華と別れ教室に向かう。
そろそろ期末の個表が返されるだろう。
成績に関しては問題ないはずだ。
それよりも劇の演技とセリフだよ。
案外難しいもんだ。
だがそれすらもしっかりこなす俺氏。
練習の時間になると、こうだ。
「お疲れさまです、冬夜くん。はいタオル」
「お、ありがと」
「すごいね! あんなに気持ちのこもった演技、相当練習たでしょう?」
「確かにやってるかな。でも、やっぱりみんなの期待に応えたいからね。気合いも入るよ」
てな具合で、ポイント稼ぎも忘れない。
ん~、少し露骨すぎか?
いや、でも大丈夫――
「……冬夜くん♥」
――ですよね。
目がハートよ。
リアルタイムプリクラ加工アイだ。
すげーすげー。
この子はうちのクラスの子だな。
あー、めっちゃフェロモン出てる……
この子達ともご無沙汰だし。
欲求不満だよね。
はぁ~……
「じゃ、今日はここまででーす!」
「「「「「「お疲れさまでしたー!」」」」」」
今日はもうおしまいか。
今日も今日とて帰宅後トレーニング。
別に嫌なわけじゃないが、なんかこう、ね。
言葉に出来ない不愉快さがあって、それが俺のストレスを加速させる。
「帰ろ」
「ああ」
春賀に促されて、昇降口に向かう。
ここまで気持ちが乱れることも、以前は無かったのに。
やっぱり体の影響を受けているか……?
そんなことを考えながら、冬華と合流して楓さんの車に乗った。
■□■□
やっぱりもう限界かも。
めくるめく欲求。
迸る性欲。
暴れまわる野性。
ソイツらが、俺の心っつー檻の中で暴れてやがるぜ……そう、手負いの獣のようにな!
つづく
続かねーよ。
もう無理だ。
も う 限 界 だ ! ! ! !
「っんの!」
ブンッと音をたてて俺の鼻先を楓さんの裏拳が通過する。
今は俺と楓さんで模擬戦の最中。
今日は春賀を先に寝かせた。
疲れが溜まっていたようだし、無理をさせて体を壊したら元も子もない。
「ふっ……しっ!」
「ん……」
技術は俺の方が上。
だが、こっちの世界でこの道が長い楓さんの方が、パワーやスタミナは上。
腹部を狙った楓さんの回し蹴りを受け止めた腕がビリビリしびれる。
しっかり腕の腹で受け止めて、流したのにこれかよ。
俺の負けか……いや、そうでもない?
鋭い顔狙いの拳を捕まえ、腕を引き戻す力に逆らわず楓さんに突っ込む。
「ッ!?」
予想外の行動に楓さんが驚くが、ふふふ、驚くのはまだ早いぞ?
「――っあん♥」
くふふ、突っ込んだ胸に手を当て、右の首筋を舐めてやった。
さっきから言っていただろう?
限界だってさ。
動いたことでかいた汗。
俺に届く洗剤の匂いと、女特有の甘い香り。
だっさいジャージ越しに揺れる胸、尻。
触れ合う度に、俺の中の理性が削られていった。
どこか不安げな顔つきも、泣きそうな瞳も。
楓さんの全身から感じる″雌″が、堪らなく俺を″雄″に変える。
お陰で俺のスジは乱れ、とうとう理性の箍が外れた。
「ああ……ククク、もう、ダメだ」
小さく呟き、楓さんをそのまま押し倒した。
ここは3階の一室。
俺の部屋と廊下を挟んだ反対の部屋だ。
楓さんや春賀とのトレーニングに使っている。
シアタールームっぽい作りで、音が外に漏れたりはしないので重宝している。
「んっ……や、やぁ……と、冬夜、さま……?」
俺の掌でフニフニと形を変える山脈。
十代の少女には出せないこの柔らかさ。
だが、熟れた女ほど柔らかくはなく、程よく弾力がある。
ぬろぉ、と楓さん、いや、楓の耳の凹凸に舌を這わす。
「あぅ! んん、ひゃぁ……」
俺の体の下で、モゾモゾ動く楓。
無意識だろう、俺の足に腰を押し付け細かく動かしている。
彼女の足の付け根の三角洲は、汗かはたまた別のナニかか。
ズボン越しにわかるほど、湿り気を帯びていた。
するっと、俺の手がソコへ浸入。
「!? と、冬夜様ぁ! そ、そこは、ん、あ♡」
そこはかつて、恐らくサバンナだったのだろう。
だが今はその影も形もない。
たっぷりと水分を蓄える、熱帯雨林。
アマゾンでしかない。
「クク、そこは何だ? 言ってみろよ、ほら」
浸入を果たした手を引き抜き、楓に見せつけるように掲げた。
「うぅ……き、やっぱり鬼畜です……ん、ちゅ……んう♥」
「ん、むぅ……ぷは、いいんだろ? なら黙ってろよ、ちゅ」
「ん、はぁ、んん♥ い、痛くしないで……ください♥」
俺は返事をせずに、うっすら笑ったまま楓の服に手をかける。
ああ、今夜は長引きそう。
模擬戦じゃなくて、本番になっちまったぜ。
ま、こっちじゃ負ける気はしないんだけどな。
「あ、あん……うぅん、あぅ……♥」
俺の下で細いあえぎ声しかあげてない楓を見ながら、俺はどんなプレイをしてやろうか考えていた。
コトの最中。
俺はふと思った。
あ、このパターン父さんが母さんとヤったシチュエーションと同じじゃね、と。
「もっと、奥までぇ……うぅ、冬夜さまぁ♥」
「こう、か!」
「あうぅ、そ、そうれす……んん」
蕩けるような楓の声。
ま、どうでもいいか☆




