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episode twelve

 コンビニで時間を潰し朝ごはんを買って、さらにのんびりあるいて遅刻ギリギリに学校へとたどり着いた。


 はあ。


 下駄箱で靴を履き替え教室に向かう。


 ガラガラ


「あ~……おはよ」


 とりあえず挨拶をしながら教室に入った。


「「「「「「おはようございます、冬夜くん」」」」」」


 ビク!


 あれ、何か予想と違うぞ。

 こっちの世界観的に、キャー! みたいな感じかと思ってたんだ。

 もっとこう、グイグイ来る感じ?


 俺はそれが嫌だったんだ。 


 しかし、蓋を開けてみれば拍子抜けもいいところ。

  

 ま、実際に開けたのは教室のドアなんだけどね。


 みんな柔らかい笑みを浮かべて、慈愛のこもった眼差しで俺を見ている。

 例えるなら。

 今までが『盛りのついた恋する乙女』なら、これは『愛した男に愛された女』の顔だ。

 幸せですオーラが出まくっていることには変わりはない。

 

 一体何が起きたと言うのだ。


 こっちに来てから、こんな表情を浮かべた女たちなど知らない。


 男? 節度を守ってヒャッハー! みたいな感じよ?


 ヒャッハーの温度差こそあれ、誰もかれもヤりたくてしょうがない男子高校生みたいな感じだったのに。


「……?」


 首を傾げて入り口に突っ立っていると、俺の前の席の女の子がやって来た。

 

 南海 那美って名前の子だ。

 頭から読んでも、逆さまから読んでも、どちらもミナミナミになる名前である。


 ミナミ ナミって名前だからな。


 俺の80センチほどまで近付いてきて、ゆったりした動作で鞄を持ってくれた。

 あまりの自然さでついうっかり鞄を渡しちまった。

 あれ? なんでや。


「おはようございます、冬夜くん。さ、もうすぐホームルーム始まるよ? 席に着かなきゃ」


「あ、はい」


 俺の目を見ながら、那美は優しくそう告げた。

 ここも今までと大きな違いだ。


 俺と話すとき、女性たちは多かれ少なかれ、唇首筋鎖骨肩腕手首手足股間股間股間を見てくる。

 

 いままでクラスの女子もそれは例外じゃなかったのに。

 今回は最初から俺の目だけを見て話しかけてきた。

 なんでや。


 それにいつもは誰か俺に話しかけようものなら、どっかしらで牽制と殺気が飛ばされるのに。

 一切ない。


 みんな笑顔で俺たちのやり取りを見ている。


 あれー?

 俺って違う世界にまた転生したのかな?


 そんなことを考えながら、俺は大人しく那美の後について自分の席に座った。

 鞄や中の荷物は、全部那美がしまってくれた。

 あくまでも自然に。

 違和感はまるでなく。


 キーンコーンカーンコーン……


 程なくしてチャイムがなり、先生がやって来た。


 教室に足を踏み入れるなり、この悟りを開いたような落ち着いた雰囲気の空気に困惑している。


 だよな!

 俺はおかしくないよな!


 しかし、見事な首のかしげっぷりだな。

 俺もあんなんだったのかね?


 ……ま、考えてもしゃーないか!


 終わりよければ全てよしって言うし?

 俺はヤれてよかったーこの子達もヤれてよかったー的な?


 昨日のこと話してくる気配ないし?


 ラッキートゥラッキー?


 win-winな関係ってことで。


 キーンコーンカーンコーン……


 あ、ホームルーム終わったわ。





■□■□





~当夜が来る前のクラスの会話~


「みんな、やっぱり早く来たんだね」


「うん、何となく、来ちゃった」


「やっぱり?」


「うん、昨日のことは夢だったのかなって思ったけど……」


「現実だよね?」


「「「「「「うんうん」」」」」」


「かーらーのー?」


「「「「「「っしゃああああああああああああ!!!!!!」」」」」」


「私たち?」


「天使と?」


「ヤりました!」


「「「「「「ふうぅ! ほぉい!」」」」」」


「ふふふふふふ……ははははははははは!!!!」


「あれ?」


「どうしたの?」


「ラリった?」


「朝からオナり過ぎて水分足りてないんじゃない?」


「昨日を思い出すとそりゃ捗るわよ、ねえ?」


「思い出すだけで……あ、ちょっと濡れちゃった」


「あんた早漏ね。昨日も即行でイカされてなかった?」


「えへへへ……嬉しすぎて……」


「「「あー、確かに」」」


「くふふふふふ……作戦どーり! いや、それ以上だよ!!」


「あら、復活した」


「で、何が作戦通りなの?」


「冬夜くんには間違えたって言ったけど、あれはわざとです!」


「あれって?」


「ジュースと偽ってワインを出したこと!!」


「うわ、あんたサイテー。だけど最高ね!」


「ほんとゲスの極みだよ! マジ感謝!」


「くそ女って称号を贈るよ!」


「え、呼んだ?」


「「「「「「死ね」」」」」」


「いや、私だってあんなに上手く行くとは思ってなかったよ? 願わくば介抱出来ればいいかな~位の気持ちだったの」


「確信犯でしょ?」


「いやいや、違うんだって! あんなにゴクゴク飲むなんて思わなかったんだもん! 男性だし、チビチビ飲むのかな~って」


「確かに冬夜くん、男性なのによく食べるよね」


「うんうん、あんなにほっそりな体なのに、どこに入るんだろうって感じー」


「あれ? みんな昨日ヤってて気付かなかったの? 冬夜くん、スタイル抜群だったよ?」


「え!? うそ、着痩せするタイプ?」


「あ、言われてみれば、この前体育で裾を捲ったとき。確かに結構筋肉ついてたよ!」


「「「「「「あーそういえば」」」」」」


「で、よくウチに来てくれるからm食べるのは知ってたんだけど。ジュースとかもゴクゴク飲むなんて知らなかったんだもん」


「ま、どっちにしても。よくやったわよ」


「そうね、グッジョブ!」


「あの荒々しい手つき、堪らなかった!」


「普段からの姿とはかけ離れすぎー!」


「ねー! お願いしたらいつでもヤってくれるのかな?」


「あー、オッケーかも?」


「いっそみんなで襲ってみる?」


「捕まるよ?」


「その価値はあるんじゃない?」


「確かに」


「で、どうすんの?」


「ほんとに襲うん?」


「あはは、無理だよー。やめときなって」


「じゃあ、私たちがレイプしたら混ざらないんだね?」


「ごめんなさい。私にもヤらせてください」


「うん、素直でよろしい」


「「「「「「あはははははは!!」」」」」」




「止めてよ!!!」




「ちょっと、どうしたの?」


「みんな、気がつかなかったの?」


「何が?」


「冬夜くん、ずっと私達を気遣ってくれてたんだよ?」


「どういうこと?」


「本当に? 何も?」


「何って……」




「一番辛い人から順に犯してくれて。ヤってる最中も、たしかに荒々しかったけど、全然痛くなかったし。

 手つきも繊細で、腰使いも絶対痛くならないように……それに、誰一人妊娠しないようにしてくれてたんだよ……? どう、気付いてないでしょ? 『妊娠したら大変だからな』って、小声で呟いたの聞いてなかったの? 

 みんな自分本位のセックスばかりして……冬夜くんだけが、私達の体まで気遣いながらセックスしてくれたの。

 『一人だけ仲間外れは、可哀想だよな……』って言いながら、妹の冬華ちゃんまで抱いてくれてた……

 家族の女とは、同じ家で住むのすら嫌、っていう男性がいるのにもかかわらずだよ?

 そんな冬夜くんの優しさや気遣いにも気付かないなんて……


 お酒の影響でも、なお私たちを慮ってくれた……

 その事実を知っても、笑って許してくれていた……


 ほんと最低だよみんな!!!


 私もそんな冬夜くんとヤったけど!

 ヤって満足だなんて思わない!


 本気で愛してるの? 子供を欲しいって思ってるの?


 私は本気! 本気で産みたい!!


 男性は16歳から結婚できるけど、私たち女は18歳からしか結婚できない。

 でも、私はそれでも今から冬夜くんだけを愛し続ける!

 きっとこれからも冬夜くんは女に優しいと思う……

 私より綺麗な女、お金持ちな女、たくさんいる。

 冬夜くんは頼めばきっと、ヤってくれるよ……


 でもね、みんなの言い方や、他の人は!

 男が欲しいだけ! 男とヤりたいだけ!


 ヤりマンがステータスだと思ってるような人達に、私は冬夜くんに近づいてほしくないよ!!


 でも、冬夜くんには優しいから、きっとそんな人たちにも……


 だけど私は違う!

 ヤりたいだけじゃない!

 心の底から愛してる!


 こんな歌しか取り柄のないネクラ女でも……愛してるんだよ!


 欲しいのは冬夜くんはだけ!


 冬夜くんがいれば他にはなにも要らない!……ことはない!!

 AVも、エロ本も、オナグッズも、俳優も、小説も!

 欲望を満たすだけのモノになんて、冬夜くんには敵わない!!

 

 だからみんなも考えてよ……

 うう、ぐず……


 その考えでいいの?

 ヤれればいいの?

 その優しさに甘えるの?


 『男』がいいの? 

 それとも『冬夜くん』が好き?


 冬夜くんの為だけに、総てを擲てる……?


 今に甘えたら、明日は来ないんでしょ?


 精子はお金で買えるけど、愛はお金じゃ買えないんだよ……?


 私はそれが欲しい。

 心の底から愛されたい。

 同情や、優しさでヤるんじゃない。


 愛してるから、セックスされたいの。


 夢物語なのはわかってるよ……


 でもね?


 私が……私たちが目指しているのは、ソコじゃないの?


 だから私は冬夜くんを愛してる。


 いつか、いつかきっと、私を愛してくれる、その日を夢見て……」




「「「「「「……」」」」」」


「私、間違ってた……」

 

「私も……」


「……いま、気づいたよ」


「そっか、冬夜くんは一人だけだもんね……」


「ずっと優しい、思いやってくれる冬夜くん……」


「それなのに私たちは、ヤりたいだけの目で彼を見て……」


「醜く争って……」


「……もう、会わせる顔が無いよ……」


「……いいえ、いいえ! 今からでも! 今からでも間に合う! 愛に気付いたのなら! それを態度に出すだけよ! いつか私たちを愛してもらえるように!」


「……大丈夫、かな?」


「きっとすぐには無理。でもね、いつかはきっと」


「そうだね、愛に気付けたアタシ達はラッキーだよね」


「有償の愛なんて無い……それは仮初め。いつか、いつか無償の愛と精子と子供が貰える、その日が来るの……」


「うん! 決めた!!」


「「「「「「私達は、冬夜くんに総てを捧げます!」」」」」」





 ~こうした謎の会話があって、あの空気が生まれた~





■□■□





 さて、そろそろ帰るか。


 一日が終わって、雰囲気が一変したみんなと別れた俺は図書館に来ていた。

 

 いままでのみんなも勿論可愛くて好きだったが、いまのみんなもいいかも。

 なんつーか、お淑やか。

 余裕があるような、なんとも言えない。

 なんか、こう、ゆったりした空気が流れてる。


 何があったかはしらんが、とにかくいい感じなのでおっけ。


 

 で、肝心の調べものもすんだ。


 家族での結婚は不可能だったが、別に子作りやら何やらは書いてなかった。


 つまりオッケー。


 記述がない=合法。

 この認識で間違いはない。


 この国が法治国家であるならば、だけどな。


 さて、いよいよ冬華と対面せねば。


 一応犯罪行為では無いことが判明はしたが、はてさてどうなることやら。



 さて、気合い入れて行きますか。


 

 んま、どうにかなるっしょ?


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