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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第19章 守護者VS修復者

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8 「単なるゲームだって」

「ね、デートしよ?」

「いきなり何言ってるんだ……」


 にこやかに笑うセフィリアに俺は困惑していた。


 ただ、バネッサさんやエレクトラが死んだ、というさっきの言葉が気になる。

 もう少し詳しく聞く必要があるだろう。


「ち、ちょっと、デートってどういうこと!?」

「その方はどなたですか、ハルトさん!?」


 廊下の向こうからリリスとアリスが駆け寄ってきた。

 二人とも息が荒い。

 顔が真っ赤だし、やけに鋭い視線でセフィリアを見ている。


「えへへ、ハルトくんはあたしにメロメロなんだよ~」


 セフィリアが邪気のない笑みを浮かべ、俺の腕にしがみついてきた。

 むにゅっ、と意外に豊かな胸の弾力が二の腕に押しつけられる。


 正直、ドキッとしてしまった。


「……なんかデレデレしてない、ハルト?」

「……ハルトさん、けっこうだらしないんですね」


 リリスとアリスが一気に不機嫌な顔をする。


「いや、その……えっと、二人で話したいことがあって」

「「二人で話したいこと!?」」


 しまった、よけいにツッコまれるような言い回しをしてしまった。


「ふーん……?」


 二人がそろって俺に顔を近づける。

 ジト目×2の視線が突き刺さるようだ。


 ……まずいぞ、これは。


 とはいえ、二人を巻きこみたくないしな。

 セフィリアがどこまで信用できるのか、分からない。


 彼女とは俺が二人だけで話したいところだ。


「ごめん、リリス、アリス。でも俺はセフィリアと行くから」


 俺は真剣なまなざしで二人を見つめた。


 しばらくの、沈黙。


「……事情があるんだね。分かった」

「……ハルトさんがそう言うなら」


 二人はちょっと拗ねた顔だったけど、それでも矛を収めてくれた。




「あ、これかわいー、あ、これもかわいー。っていうか、全部かわいー」


 雑貨屋に入ったセフィリアは嬉しそうにはしゃいでいた。


 綺麗な刺繍がされたハンカチやら、花飾りのついたポーチやら、可愛らしい猫のぬいぐるみやらを目を輝かせて見ている。

 とても何か企みがあるようには見えなかった。


「……本当にただデートしたかっただけなのか?」

「ねーねー、プレゼントしてよー。ハルトくん、ランクA冒険者でしょ。お金いっぱい持ってるよね?」

「お前だって冒険者だろ」

「あたしはランクCだもん。っていうか、男の子は女の子にプレゼントするものでしょ」

「うーむ……」


 セフィリアはますます目をキラキラさせ、俺を見つめる。


 むむ……断りづらい雰囲気だ。

 しょうがない、買うか。


「じゃあ、このハンカチとポーチとぬいぐるみちょーだい」

「全部買うのかよ」


 せめて一つにしてくれ。


「えー、けち」


 ぶーっと口を尖らせるセフィリア。

 拗ねた様子だ。


「バネッサたちの計画のこと、教えてあげないよー?」

「むむむ……」


 さっきから俺のペースは乱されっぱなしだった。


「いいのかなー? んん、どうするの、ハルトくん?」


 しょうがない、全部買うか……。




「ふふ、こういうのって初めて。男の子とデートするのって、憧れてたんだよねー」


 レモンティーを飲みながら、嬉しそうにはにかむセフィリア。


 雑貨屋の次は喫茶店だった。

 こうして見ると、普通の女の子にしか見えないな。


「もう、さっきからあたしのことジロジロ見てばっかり。もしかして──惚れちゃった?」

「目的はなんだ」


 俺はコーヒーを一口飲み、セフィリアを見つめた。


「怖い顔しないで。本当に、ちょっとお話したかっただけだから」


 セフィリアは俺を見つめ返す。

 つぶらな瞳に浮かぶ光は、どこか濁った印象を受けた。


「話か。それなら、いくつか聞きたいことがある」


 俺は身を乗り出し、


「まず……バネッサさんやエレクトラが死んだっていうのは、本当なのか」

「そだよ」


 平然とうなずくセフィリア。


「神さまを怒らせちゃったみたいだねー」

「神さまを……?」

「うん、地と風の王神(アーダ・エル)ちゃんから聞いたの」


 セフィリアが笑った。


「あたし、神さまの声が聞こえるんだ。いちおう僧侶だからね」


 神の声なら、俺も聞いたことはある。

 正確には俺のスキルに宿った、女神さまの意志であって、女神さまそのものじゃないらしいけど──。


「色々と聞いたの。あたしたちがなぜスキルを与えられたのか。神さまの目的はなんなのか。これからどうするつもりなのか。何が起きるのか──」


 セフィリアの言葉に俺は耳を傾けた。


「俺たちがスキルを与えられた理由は……?」


 ごくりと息を飲み、俺は緊張気味にたずねた。


 胸の鼓動が高鳴る。

 半ば無意識に全身をこわばらせ、彼女の答えを待つ。


「うん、単なるゲームだって」


 セフィリアがあっけらかんと答えた。


「ゲーム……?」

「あたしたちがスキルを使って何をするのか、人間の社会にどう影響を与えるのか──それをただ見守る遊び。神さまにとっては暇つぶしなのかなー? それともあたしたちを見てるだけで楽しいのかな?」

「暇つぶし……」

「あるいはその裏に、もっと違う思惑があるのかもしれないねー。アーダ・エルちゃんははっきり言わなかったけど、なんとなく雰囲気で分かったの。もしかしたら、神や魔、竜以上の存在に──」

「えっ」

「ううん、これ以上はいいや」


 微笑み、首を振るセフィリア。




 ──あなたの魂は特別製なのです。したがって今回の『死』をキャンセルし、もう一度生きるチャンスを与えられることになります。


 ──魂には製造番号のようなものがあり、特定の番号には『やり直し』のチャンスを与えています。


 ──その際に、あなたは強大無比な力を宿すことになります。先ほど申し上げたように、どんな攻撃でも絶対にダメージ受けない体になるのです。使いようによっては、世界を一変させることもできるでしょう。




 俺が一度死んだ際、女神イルファリアから告げられた言葉を思い出す。


 あのときは、単なる幸運や偶然なんだと思っていた。

 生き返れることも。

 スキルをもらったことも。


 だけど、神々の思惑は別にあった。


 ゲーム──俺たちを駒か何かだと思っているのか。

 あるいは演劇の役者でも見るような気持ちなのか。


 分からない。

 なんだか、嫌な気分だった。


 イルファリアに対しては、特別な悪感情はないんだけれど……。

600万PVを突破していました。

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