表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第19章 守護者VS修復者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

193/224

7 「過ぎた力、か」

「お前は──」


 ギルドを訪ねてきたセフィリアに、俺は警戒をあらわにした。


「……何かを企んでいるのか」


 彼女はかつて、『修復』のスキルを使い、ジャックさんに妙なことを仕掛けた疑いがある。

 それはバネッサさんの推測でしかないし、確証もないんだけど──。


「やだなー、企むなんて」


 セフィリアがのほほんと笑った。


「同じ冒険者同士だし、神様から力を授かった者同士でもあるし、親睦を深めようと思って。えへへ」


 こうして見ると、本当に純朴な女の子にしか見えない。

 本当に、無害な女の子にしか見えない。


「ふーん……?」


 セフィリアが俺に近づいてきた。

 くるくると猫のようによく動く瞳が、俺の顔をしげしげと覗きこむ。


「ハルトくん、体の調子がおかしくなったりしてない?」

「えっ」

「ほら、前の戦いでスキルがすごーくパワーアップしたでしょ? その影響が出てないかな、って」

「……どうして知ってるんだ?」


 あのとき、戦いの場にはバネッサさんしかいなかった。

 彼女に聞いたんだろうか。

 それとも──。


「うん、バネッサから聞いたの」


 俺の内心を読んだように微笑むセフィリア。


「それにスキル保持者(ホルダー)同士が出会うと、能力がパワーアップするよね? ハルトくんって、かなりスキルが強化されてるんじゃない?」


 つぶらな瞳は無邪気な輝きをたたえ、俺を見つめ続ける。


「でも、それって人間には過ぎた力かもしれないね」

「過ぎた力、か」

「強すぎる力で体に変な作用がなければいいけど。たとえば──怪我をしても治癒魔法を受け付けないとか」

「……!」


 俺は思わず絶句した。


「あ、図星だった?」


 こいつ──。


「よかったら、あたしが治してあげよっか?」

「治す? できるのか?」


 俺は思わずたずねた。


「……いや、やめておく。だいたい、お前はそうやってジャックさんに妙なことをしただろ」

「ひどいなー、誤解だってば。ハルトくんを治してあげたいのも、ただの好意だよ」


 笑うセフィリア。


「好意……」

「スキル保持者(ホルダー)も少なくなっちゃったからねー」

「えっ……?」

「あ、知らないんだっけ。バネッサもエレクトラも死んじゃったんだよ?」

「っ……!?」


 俺は絶句した。

 数分の間、呆然としていた。


 理解が、追いつかなかった。


 こいつは今、なんて言った……?


 バネッサさんと、エレクトラが死んだ──?


「どういう……ことだ」


 ごくりと喉を鳴らす。


「んー、仲たがいかな?」

「仲たがい?」

「二人は何か大きな計画を進めてたんだよね。あたしもそのお手伝いをしてた。いい感じのチームだったんだけどね。でも、方向性の違いとかでケンカしちゃって……」


 セフィリアがニヤニヤと笑いながら説明する。


「計画……だと」

「その辺は、ここじゃ話せないかなー」


 セフィリアはチラチラと周囲を見た。

 冒険者たちが、俺と彼女を興味深げに見ている。


 神の力のことといい、確かに関係がない人間には話せない内容だ。


「だからデートしようよ、あたしと。そこであらためてお話しよ?」

「へっ?」


 唐突な申し出に、俺はキョトンとなった。


    ※


 ──あたしに残された時間は、あとわずか。


 セフィリア・リゼは、かつて医者から受けた宣告を思い出す。

 まさしく──死の宣告を。


 最初は泣きわめき、不幸を憂い、やがて諦念が心を支配していった。


 なぜ、あたしなの。

 なぜ、他のみんなは元気に生きているのに、あたしだけが死ななければいけないの。


 つらい。

 苦しい。

 死にたくない。

 もっと楽しいことがしたい。


 もっと、もっと──。


 朗らかだった彼女は、見る影もなく暗く──沈んでいった。

 やがて病状は悪化し、彼女は十六年の生涯を閉じた。


 そして、出会った。

 不思議な空間で、二つの顔と四本の腕を持つ女神に。


「すべてを治し、直すスキルを与えましょう」


 女神はセフィリアにそう言った。


「ん? じゃあ、あたしの病気も治る? っていうか、あたし死んだよね?」

「確かにあなたの命は一度尽きました。ですが、その死を今から取り消し、新たな生を与えます」

「生き返れる……ってこと?」

「ええ、これは神の遊戯。あなたは『修復』のスキルで何をしても構いません。己の欲のため、あるいは人や世のために使おうとも──」

「何をしても……か。ふふ、面白そうだね」


 セフィリアは満面の笑みを浮かべた。

 不治の病に侵されて以来、諦めていた生の喜びが、幸福が──爆発的に膨れ上がる。


「ワクワクしてきた。えへへー、女神さまありがと」


 言って、セフィリアはアーダ・エルを見つめる。

 正確には、その胸元を。


「何を見ているのです?」

「おっぱい、大きいなー、って」

「……人間の品性は理解しがたいですね」


 アーダ・エルは眉を寄せ、わずかに戸惑ったような顔をした。




 こうしてセフィリアはよみがえった。

 手に入れた『修復』のスキルは、不治の病に侵された体を一瞬で完治させた。


 死の運命から救われた彼女が考えたことは、きわめてシンプルだった。


 これからは楽しいことをいっぱいしよう。

 今まで諦めていた楽しいことを、思う存分に。


 ──人が死ぬ瞬間を見るのって、楽しいよね。


 最初に浮かんだ考えは、それだった。

 彼女が興味を持つのは、人の『死』だった。


 自身が常に『死』を意識してきたからだろうか。


 さまざまな死の形を見たい。

 味わいたい。

 感じたい。


 そんな気持ちが心の内に充満している。

 あふれ出し、暴れ出しそうなほどに満ちている。


 以降、彼女は己のスキルを使って、次々と他者の死を招いた。


 あるときはパーティを組んだ冒険者たちと魔獣退治のクエストに挑み、その魔獣を『修復』でサポートしながら仲間を全滅させた。

 あるときは『修復』のスキルを逆回転させ、かすり傷を負った者に致命傷を与えた。

 あるいは、軽い病気にかかったものを重病レベルにまで引き上げて殺した。


 ジャックを暴走させたのも、多くの死を招いてくれると考えたからだ。

 この間のエレクトラの死に際など最高だった。

 思い出すだけでもゾクゾクとする。


 自分が美しいと感じたり、気に入ったものが壊れる瞬間──。

 そこに至上の興奮を覚えるのだ。


 そして、彼女は新たな獲物に手を伸ばす。


 ハルト・リーヴァという少年に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!




▼こちらの新作もよろしくです!▼



▼新作です! こちらもよろしくです~!▼
「攻撃されたら俺の勝ち!」悪役転生特典でスキルポイント9999を【カウンター】に極振り→あらゆる攻撃を跳ね返すチートスキルに超進化したので、反射無双します。

冴えないおっさん、雑魚ジョブ【荷物持ち】からEXジョブ【上位存在】に覚醒して最強になる。神も魔王も俺には逆らえない。俺を追放した美少女勇者パーティも土下座して謝ってきた。




▼書籍版全3巻発売中です! 画像をクリックすると紹介ページに飛べます!▼

5z61fbre6pmc14799ub49gi9abtx_112e_1d1_1xp_n464.jpg 97vvkze3cpsah98pb0fociarjk3q_48b_go_np_cmbv hkcbaxyk25ln7ijwcxc7e95vli4e_1e1o_1d0_1xq_rlkw

漫画版全3巻発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます。
8jyvem3h3hraippl7arljgsoic6m_15xf_qm_bx_d8k6
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ