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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第19章 守護者VS修復者

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6 「もっと見せて」

 エレクトラは絶望と逡巡の中にいた。


 どうすればいい。

 どうすれば、こいつから逃れられる──。


 思考だけがぐるぐると回るが、打開策が見つからなかった。


 セフィリアのスキルの前では、彼女の予知スキルは使えない。

 精霊召喚も不可能だ。


 あらゆる手段は封殺されてしまった。


「さすがに心折れちゃったかな? あたしが一番楽しいのはね、そういう顔を見ることなんだ」

「わたしは、ただ生きたいだけだ……平穏に暮らしたいだけなんだ……」

「だーめ。人が絶望する顔って、大好きなの。特におねーさんみたいに綺麗な人のはゾクゾクしちゃう」


 ふうっ、と異様に艶っぽい笑みを浮かべるセフィリア。


「さあ、もっと見せて。あたしに。絶望を。苦悶を」


 ──わたしの運命は、ここで終わりなのか。

 恐怖が、戦慄が、絶望が、心の中を漆黒に覆い尽くす。


 ──いや、まだだ。

 エレクトラは込み上げる恐怖を押し殺し、ふたたび思考を巡らせた。


「わたしは、絶対に生き延びてみせる」

「往生際が悪いねー。でも無駄だってば」

「破滅の未来なんて……認めないっ」


 笑うセフィリアを見据えるエレクトラ。


 誰が相手でも。

 たとえ神を敵に回しても。


 必ず生き残ってやる。


「予知が使えないなら、わたしは──」


 刹那、腕や足に小さな痛みが走った。

 セフィリアが死角から放った攻撃呪文が傷をつけたのだろう。


 これ自体は致命傷に程遠い。


 だが、エレクトラは知っていた。

 先ほど彼女のしもべである精霊たちを葬り去った攻撃を。


「よ、よせ、セフィリア! わたしは──」

「さあ、見せて。おねーさんの絶望を」


 セフィリアが左手をかざす。


「お願い……やめて……た、助けて……」


 そこに紋様が浮かび上がるのを見て、エレクトラは恐怖で顔を引きつらせた。


葬送の超速再生リジェネレーション・レクイエム


 虹色の光が、弾けた。


「これ……は……!?」


 愕然と気づいた。


 予知で見た、虹色の輝きでエレクトラを消し飛ばす能力者──。

 それはハルトだと思っていた。


 だが、間違いだったのかもしれない。

 あるいは本来はハルトがその役目を負うはずが、未来が変わってしまったのか。


「嫌だ……わたしは……生き延び……」

「さよなら」


 冷ややかな声とともに、エレクトラの全身を激痛が襲う。


 これが……わたしの、終局なのか……!


 無念と悔恨と絶望の中で、エレクトラの意識は闇に飲まれていった。


    ※


 力が、あふれる──。


 俺の防御スキルは日増しに強大化している感覚があった。


 軽く集中すると、周囲に黄金の輝きが広がっていく。

 第七の──神域の形態『封絶の世界(エリュシオンゲート)』だ。


 それはまたたく間に町全域を覆い、さらに広がり──。


「……すごいです。アドニス王国の端まで広がっていました」


 飛行魔法で上空から確認していたアリスが、俺の側まで降り立った。


 ──スキルテストはさらに進んでいた。


 炎や雷撃といった攻撃呪文だけじゃなく、毒や呪い関係の魔法もすべて自動的に封じてくれる。


 他にも、アリスに百メティルほどの高さまで引き上げてもらい、そこから落下する──という実験もしてみた。


 空から見下ろすと、アドニスの地形が変わっているのが確認できる。

 南部にあった湖は蒸発してクレーターのようになっていた。

 北部に連なる山脈は大きく削れ、東部の森林には紫色をした不気味なモヤがたゆたう。


 いずれも聖天使と魔族たちとの激突の余波によるものだ。


「放しますね、ハルトさん」

「ああ、頼む」


 アリスにうなずき、俺は落下した。


 墜落死間違いなしの高さだが、恐怖はまったく感じない。


 いちおう地上でリリスに待機してもらっていた。

 万が一のときには魔法で救助してもらう手はずだったけど、まったく必要なかった。


 地面のところで防御フィールドが広がり、なんの衝撃もなしに着地できたからだ。


 他にも風魔法を利用して真空状態を作ってもらい、そこに入る──という実験もやってみた。

 が、自動的に発現したスキルが、風魔法自体の発動を事前に止めてしまい、真空状態を作ることさえできない。


 墜死や窒息死といった事象も防げそうだ。

 しかも、俺の意志とは無関係に、自動的に。


 これが──防御スキルの完成形なのか。


 だけど、治癒呪文まで受け付けないのはなぜだろう。


 スキルの性質に関係があるのか。

 それとも無関係の、別の何かなのか……?




 数日後、冒険者ギルドで一人の少女が俺を訪ねてきた。


「ハルトくん、久しぶりだねー」

「お前は──」


 セフィリア・リゼ。

 ランクCの冒険者であり、俺と同じスキル保持者(ホルダー)でもある。


 一体、なんの用だ……!?

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