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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第17章 封絶の世界

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2 「答えてくれ」

 俺は、殺意をむき出しにしたジャックさんと対峙していた。


 ──魔の者との決戦を控え、俺たちはギルド本部に待機していた。

 そこを訪れたジャックさんが、突然リリスやアリスに攻撃してきたのだ。


 俺がとっさに防御スキルを発動して防いだものの、下手をすれば二人は大怪我をしていたかもしれない。


 いや、たぶん──殺されていた。


「どういうことなんだ……!?」


 明らかに様子がおかしい。

 いつものジャックさんじゃない。


「壊す……滅ぼす……」


 暗い声でつぶやく獣戦士。


 確かこの前会ったとき、ジャックさんには『支配』のスキルの影響が残っている、ってバネッサさんやセフィリアが言っていた。

 それはセフィリアが治してくれたという話だったけど──。


 まだ影響が完全に消えていなかったのか?

 ジャックさんの変貌はそのせいなのか?


 分からないことだらけだった。


 いや、考えるのは後でいい。

 とにかくリリスやアリスに危害を加えようとするなら、全力で止めるだけだ。


「魔の気配はすべて破壊する……」


 言いかけたところで、ジャックさんの動きが止まった。

 上空をふり仰ぐ。


 黒い穴──亜空間通路『黒幻洞(サイレーガ)』が三つ出現していた。

 レーダーによる予測出現時間はおおよそ二時間後だったけど、それよりも早い──。


「まずお前たちからだ……」


 告げて、ジャックさんは地を蹴る。


「なっ……!?」


 俺は驚きの声をもらした。


 すさまじい勢いで跳躍したジャックさんは、あっという間に数百メティル上空まで達したのだ。

 信じられないほどの、常軌を逸したジャンプ力だった。


 空中に浮かぶ黒い穴の一つに向かって、ジャックさんが拳を叩きつける。


 ぎぃぃぃぃぃぃっ!?


 鉄が軋むような苦鳴が聞こえた。


 黒幻洞(サイレーガ)から数体の魔族を無理やり引きずり出すジャックさん。

 そのまま拳や蹴りで、すべての魔族を粉々にしてしまった。


 クラスA以上の力を持つ魔族たちを──まさしく瞬殺だ。


 いったん着地すると、ふたたびジャックさんは跳躍。

 二つ目、三つ目の黒幻洞(サイレーガ)からも同じように魔族や魔獣を引きずり出し、一瞬ですべて殺してしまう。


「な、何、あれ……!?」


 傍でリリスが呆然とした顔になっていた。

 他のメンバーも同じような反応だ。


 黒幻洞(サイレーガ)から現れる前に、魔の者を無理やり引きずり出して倒すなんて。

 こんな戦い方は見たことがない。


「この近くに降りてこようとしていた魔の者は……全員殺した……」


 すべての魔の者を倒して着地したジャックさんが、俺たちに歩みを進める。


 全身を覆う異形の甲冑は魔族や魔獣の青い血にまみれていた。

 濃密な血臭でむせ返りそうだ。


「次は……そいつらだ」


 俺はごくりと息を飲んだ。


 ジャックさんの眼光はリリスとアリスを見据えている。

 正確には、彼女たちが持つ杖を。


 おそらくは、そこに休眠状態で宿っている魔将メリエルを──。


「そいつらを殺したら、他の魔も、すべて……壊す……滅ぼす……」


 全身を覆う甲冑から火花のような光が散る。


 先日、スキル保持者のバネッサさんやセフィリアに会ったときにこう聞いた。


 ジャックさんには『支配』のスキルの影響が残っている。

 それが彼をむしばんでいる、と。


 ただ、その悪影響はセフィリアが治癒したはずだ。

 なのに、なぜ──?


 いや、とにかくジャックさんを止めるのが先決だ。


「滅ぼす……壊す……」


 まるでうわごとのように繰り返すジャックさん。

 と、


「なんだ、お前は!?」


 周囲の冒険者たちが剣を抜き、あるいは魔法の杖を構えた。


「壊す──邪魔をする奴らも、すべて」


 ジャックさんが振り返る。

 その全身が大きく盛り上がり、青黒く変色し──。




 変貌、する。




 竜を思わせる顔と翼、そして尾。


 竜戦士形態(コードリンドヴルム)


 魔将ビクティムとの戦いで見せた、さらなる強化形態。


 異形の竜戦士と化したジャックさんは、腰を軽くひねった。

 長大な尾が旋回し、それだけで小規模の竜巻が発生する。


「うあっ!?」


「がはっ!」


 冒険者たちはまとめて吹っ飛ばされた。

 強烈な勢いで壁に叩きつけられ、動かなくなる。


 いずれもランクSやAの猛者たちが、たったの一撃で。


 今のジャックさんは味方じゃない。

 認めたくはないけど、認めるしかない。


 敵も味方も無差別に襲い、傷つける──。

 そんな存在になっている。


 そしてジャックさんの赤い眼光は、次に俺たちへと向けられた。


「戦うしかないのか……」


 苦い思いが胸の中に渦巻く。


「答えてくれ、ジャックさん。どうして、こんな──」

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