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絶対にダメージを受けないスキルをもらったので、冒険者として無双してみる  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第16章 揺らぐ未来

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9 「どうして」

 いよいよ、決戦の日が来た。


「今回はみんな一緒のチームになったな」


 俺はリリスやアリス、ルカ、サロメを見回した。

 俺たちの担当区域はルーディロウム王都周辺である。


 大量の『黒幻洞(サイレーガ)』が出現する予測時間はおおよそ二時間後。

 王都には強力な結界が張られているため、魔の者はその効果範囲外──城壁から少し離れた位置に降下するだろうと予測されている。


 出現次第そこへ向かうため、今はギルド本部の入り口付近で待機状態だ。


 周囲には、同じチームの面々──いずれもランクSやAの冒険者が数人いる。

 武器の整備をしたり、いつでも魔法を使えるように瞑想を繰り返したり──思い思いの準備をしていた。


「がんばろうね、ハルト。一緒に」


「ふふ、嬉しそうですね、リリスちゃん」


 元気よく言ったリリスに、アリスが微笑んだ。


「……顔がにやけてる」


 ぼそりとつぶやいたのはルカだ。


「そういうルカちゃんもちょっとにやけてますよ?」


 アリスの微笑みが今度はルカに向いた。


「私は、別に……一緒になれたのが嬉しいとか、そういうのは……」


「あ、目が泳いだねっ」


 サロメがはしゃいだ。


「すっかり恋する乙女になっちゃって」


「恋……分からない……」


 かしましい彼女たちを見ながら、俺は戦いの前に気持ちが安らぐのを感じた。


 おなじみのメンバーで戦えるのは、やっぱり心強い。


 同時に、身が引き締まる思いもあった。

 俺のスキルで全員守ってみせる──って。


 すでに他の区域を担当するチームはすべて出発した後だ。


「結局、ルドルフさんは戻ってこなかったね」


 と、リリス。


 そう、ルドルフさんは二日前に出かけてきり、帰ってきていない。

 冒険者三強の一角と称される『天槍』のルドルフ──当然、今回集まった冒険者たちの中でもルカと並んで戦力の要だ。


 一体、どこへ行ってしまったのか。

 ギルドのほうでも捜索したけど、足取りはつかめなかったそうだ。


 逃げたとは思えない。

 むしろ、こういう戦いなら真っ先に飛び出していきそうなイメージなんだけど──。


 とにかく、今はこのメンバーを守りきることを考えよう。

 そして、王都の人たちを守ることを。

 と──、


「おい、ここは冒険者以外は立ち入り禁止だぞ」


「すでに魔の者が出現するという警報が出ているだろう。一般市民は避難するんだ」


 入り口から声が聞こえた。


 警備の人を押しのけるようにして、一人の男が歩いてくる。

 俺たちの方に向かって。


「……ハルト」


 やって来たのは、ジャックさんだった。


 その顔つきは、いつにも増して精悍だ。


 まるで何かを決意したように。

 まるで──何かを吹っ切ったように。


「もしかして、一緒に戦ってくれるんですか」


 この前会ったときは乗り気じゃなかったみたいだけど、気が変わったのかもしれない。

 だとすれば、これほど心強い味方はない。


「お前に伝えたいことが……うっ、ぐぅ……っ」


 言いかけたところで、ジャックさんの全身から、バチッ、バチッ、とまばゆいスパークが散る。


 なんだ……!?


 様子が、変だ。


「俺はやっぱり……戦えない……くっ、うぁぁ……そいつ……は……!?」


 ジャックさんの全身から一際激しいスパークが弾けた。


 その視線が、俺の側に向けられる。

 ──リリスとアリスに。


「その杖……魔族の……気配……!」


 ぞくり、と背筋にすさまじい悪寒が走り抜けた。


「やめろ!」


 ほとんど無意識のうちにスキルを発動していた。


 ──護りの障壁(アーマーフェイズ)


 あふれた虹色の輝きが、リリスやアリス、ルカ、サロメの周囲を覆う。


 ほぼ同時だった。


 ごうんっ!


 爆発にも似た衝撃音が響き渡る。


 その場の誰も──卓越した戦士であるルカですら反応できないほどの超スピードで、ジャックさんが拳を叩きつけたのだ。

 リリスとアリスに向かって。


 そして、間一髪で発動した俺のスキルがそれを防いだ。


 仮にジャックさんの動きを見てから対応しようとしても、とても無理だっただろう。

 俺には彼の動きすら見えなかった。


 何も──見えなかった。


「ジャックさん、どうして……!?」


「魔族は……滅ぼす……平穏を脅かす者は……すべて破壊する……」


「何を……言って……!?」


「邪魔をするなら──」


 ジャックさんの瞳に妖しい赤の輝きが灯る。


「お前も、破壊する」


 その体が青黒い甲冑に覆われ、顔には狼の仮面が出現した。

 魔族が獣騎士形態(コードビースト)と呼んでいた、異形の姿。


「すべてを壊す……滅ぼす……」


 黒い獣戦士が、静かな殺意を放った──。

次回から第17章「封絶の世界」になります。

12月4日(月)から更新再開予定です。

更新後は2日おきの投稿ペース(投稿→2日休み→投稿)で、章の終わりまで更新していくと思います。

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