表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/39

第二十六話 「復縁」

 正式な婚約発表を終わらせた後。

 私たちは純粋に祝賀会を楽しんだ。

 豪勢な食事と上流階級の人たちとの交流。

 婚約発表に対する祝福の言葉と、開拓作戦の成功を賞賛する声も直接もらうことができた。

 楽しくてそれでいて有意義な時間を過ごすことができて、改めてこの祝賀会に来てよかったと思った。


 それからあっという間に時間は過ぎていき、祝賀会も終了の時刻が迫ってくる。

 観客たちもまばらに帰り始めていて、私たちもタイミングを見て王宮の方へ戻ろうということになった。

 そんな時……


「あっ、ローズマリー様」


「……?」


 不意に見知らぬ男性に声を掛けられる。

 燕尾服に身を包んだ淡黄色の髪の青年。

 見覚えのない人だったので、私はつい眉を寄せてしまう。

 どうして声を掛けられたのか疑問に思っていると、青年は心配するような顔で言った。


「先ほど手巾を落としませんでしたか?」


「えっ?」


「レースをあしらった青色のものが、休憩室の方へ届けられていました。あなたがそれと似ている手巾を先ほど使っていましたので、一応声を掛けておこうと」


 言われて懐を確かめてみる。

 すると確かに持っていたはずの手巾が無くなっていた。


「ありがとうございます。たぶんそれ私のです」


「そうですか。お伝えしておいてよかったです」


 青年はそう言うと、「それでは失礼いたします」と続けて立ち去っていった。

 そして今の会話を横で聞いていたディルが、親切に言ってくれる。


「取りに行っておいでよ。僕はここで帰っていくお客たちに挨拶をしておくから。それでローズマリーが戻ってきたら王宮へ帰ろう」


「うん、わかった」


 私は青年が言っていた通り、王宮劇場の休憩室へ向かった。

 劇場には控え室があり、パーティー時はそこが休憩室の代わりとして開放されている。

 しかし祝賀会の終わり際ということで廊下には人がおらず、休憩室からも人気はまるで感じない。

 中に入ってみると、すでに灯りも消されていて、窓から差す月明かりだけが卓上にある私の手巾を照らしていた。

 手巾が自分の持ち物であることを確かめると、それを取って会場の方へ戻ろうとする。

 けれど、手巾に手を伸ばそうとした寸前……


「久しいな、ローズマリー」


「えっ?」


 不意に後ろから声を掛けられた。

 先ほど青年に話しかけられた時以上に、私は驚愕しながら振り返る。

 なぜならその声に、強烈な聞き覚えがあったから。

 聞いた覚えがあって、何より聞きたくなかった声……


「マーシュ、様……?」


 休憩室の扉を背に立っていたのは、青髪と翠玉色の瞳が特徴的な長身の男性。

 私の元婚約者の、マーシュ・ウィザーだった。

 思わぬ人物が目の前に現れて、私は呆然と立ち尽くす。

 彼はいつも以上に豪勢なフロックコートに身を包み、多くの装飾品を着けて着飾っていた。

 どうして彼がここにいるのか。そして私の前に姿を現したのか。

 それらの疑問を解消するべく、私は声を震わせながらも問いかける。


「祝賀会に、参加していたのですか?」


「あぁ、父の伝手で招待状をもらってな」


 マーシュ様は懐から一通の封筒を取り出す。

 それをすぐに仕舞うと、彼は私の頭から足先まで視線を動かして、唐突に微笑んだ。


「そのドレス、とても似合っているじゃないか。まるで見違えたよ」


「…………」


 耳を疑う言葉を聞かされて絶句する。

 マーシュ様の口から出たとは思えない台詞だった。

 今までそんなこと、ただの一度も言ってくれたことがないのに。

 彼のこんな微笑みを見たのもこれが初めてだし、この人はいったいここに何をしに来たんだろう。


「……なんのご用でしょうか?」


 募るばかりの警戒心を表に出すように、顔をしかめながら再び問いかける。

 明らかに私に対して用事があるように、この休憩室に入ってきた。

 これで警戒するなと言う方が無理である。

 するとマーシュ様は、優しげな微笑みをそのままに、信じがたいことを告げてきた。


「ローズマリー……俺たち、やり直さないか?」


「はっ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ