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【完結】ほんわか令嬢、優しくはない  作者: 秋色mai @コミカライズ企画進行中


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34/61

34. それぞれの思惑


「あの、雪山に埋めるとは一体?」


 フローラは心優しい令嬢らしく、か細い声で問う。

 何かの隠語か、それとも全員殺して隠滅するということだろうか。どちらにせよ、それは止めなければならない。色々と後処理が大変になるのは嫌だ。

 アーサーは少し躊躇った後、意を決したように話し始める。


「フロスト領は、殺しが日常だ。殺らなければ、守れない命がある。だからこそ少しでも人道から外れぬよう、教育している。それでも必要以上に甚振るような人道から外れた者や死者を冒涜する者もいる。そいつらは厳しく罰し、改善の余地の無い者は俺が雪山に埋めてくる」


 語るにつれて、アーサーの目はどんどん暗くなっていった。そういう輩を思い出しているのだろう。

 高位の貴族が自ら手を汚すことは珍しい。アーサーは正義感の強い男なのだと、フローラは理解した。


「貴女の実家の人間は、そいつらとあまり大差がない。奴らは、許されるべきではない」

「私は別に……」

「クズに慈悲は無用だ。貴方は麻痺しているのかもしれないが、一歩間違えば死んでいたのかもしれないんだ」


 自分で仕向けておいて何を言っているのだという話かもしれないが、会ってまだ一日も経っていないのに何をそんなに怒っているのだろうと、フローラは内心呆れていた。

 そもそも、フローラの死生観は狂っている。強者ゆえの、自分は死なないという絶対的自信。そこからくる、いつ死んでもそれは運命だという考え方。だから、そんなに深刻に考えたことはなかった。

 物語のヒロインなら、ここでキュンとする場面だというのに、フローラには無意味だった。


「私のために怒っていただけて、本当に嬉しいです。初めてそんなことを言われました。ですが、私はもう、両親の顔も見たくないのです」


 要するに、めんどくさいから関わりたくないということである。

 中等部のある時、エマは言った。


『フローラ様って悪趣味なのに、自分自身は報復とか復讐とかまったく興味ありませんよね』


 エマは正しい。フローラは自分の利益にならないことはしない。利益を得る上で相手を酷い目に遭わせることはあるが、その場合は大抵相手が悪いのであり、そういう馬鹿はフローラによるものだと気づけない。

 決して悪人ではないが、究極の自己中心的人間だった。


「大丈夫だ。貴女には関わらせない」

「……なぜ、そんなに親身になってくださるのですか?」


 本当に不思議だった。アーサーから下心は感じられない。いくら自分の見目が良く、アーサーが容易に落ちてしまったとしても、ここまで親身になって怒らない。


「貴女が、俺の妻だからだ」


 アーサーは真剣な顔で、フローラを見つめる。さっきまで目が合うだけであたふたしていた人とは思えない。フローラはその言葉にはどうとも思わず、ただ端正な顔だと思った。眉毛や目元は涼やかで、鼻筋がスッと通っている。なんて惜しい人なのだろうか。自分のように魅力を最大限理解し、利用すればもっと簡単に他人をコントロールできるだろうに。


「……どうかしたか?」

「いいえ。ただ、アーサー様が綺麗だと思っただけです」

「なっ!!」


 フローラは何も考えずにそう答えた。ボフンと湯気を立てて赤くなるアーサーに、フローラは笑った。


「ふふ、あははっ」


 より楽しそうだから、そんな理由でフローラは辺境伯領へやってきた。アーサーの元へ嫁いできた。

 フローラの目標は、学園の時のように全員を誑し込み、好き勝手に悪趣味な品をコレクションすることだった。


「私は何も手出ししません。アーサー様のお好きなようにしてください。……ですが、私も好きにさせていただきます」


 だが、アーサーが好みの部類だったため、話は変わった。

 この可愛い人を手懐け、甘やかし、揶揄って愉快に日々を過ごすことにした。

 しかし、フロスト領には軍備費が足りない。人手が足りない。平穏が足りない。このままでは悠々自適な日々は過ごせない。


 ────だから、自分の持てる最大の力を使って、フロスト領の汚名を晴らすことにした。

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  ↓次に読むのがなければ是非! 普段はこういうグルメコメディを書いています
【コミカライズ進行中】魔王城の絶品社食、作っているのは生贄です!
― 新着の感想 ―
割れ蓋に綴じ蓋。。。これはこれでとても良いカップルでございます。少なくとも実家よりイキイキ過ごせそうでフローラちゃんよかったね! 絵画の趣味もここなら大っぴらにできそうで!さすがに拷問道具とかは微妙な…
アーサーを押さえればフローラがトップになる。つまり、誰にも止められない⋯ 領地も潤うとかWin-Winっすね(•▽•;)
恐怖政治が始まる予感
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