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入学式にはラノベ主人公がつきもの

 ピピピっ。ピピピっ。

 

 「う……、んぅ」

 

 どこからか聞こえる規則的な電子音に唸る俺。

 昨日は完璧な高校生を送るためのシミュレーションをしていたおかげで3時ぐらいまで眠れなかったので若干のまだ寝足りない。


 あと10分だけ。

 まぁ最悪いつものようにお母さんが起こしてくれるだろう。

 俺はなり続ける目覚まし時計の音を止めることなく布団をふかく被り直し眠りについた。


 耳に飛び込む轟音に俺は飛び起きた。

 慌てて布団を弾き飛ばし枕元に置いてあるスマホを見ると11時30分。

 念の為にかけておいたスマホのアラームが作動して見事に俺を起こしてくれた。

 そういえば俺は少し前から一人暮らしでしたね。

 代償として心臓が止まりそうになったがまだ遅刻では無い。

 俺が今日から通う高校の入学式は、12時から始まるので、今から遅めの朝食をとって顔洗って着替えれば充分……間に合わなくね?

 嘘だろおい。

 このマンションから高校まで走って20分はかかる。

 しかし俺はスタミナもなければ足も早くないので、今からどんなに急いでも遅刻ギリギリだ。

 それに高校最初ぐらいきちんとした身だしなみで行きたい。

 第一印象はとても大事だし。

 俺はこの高校生活で彼女を作りよく分からんトラウマを克服するのだ。

 だから慌てて寝癖ヘアーで入学式に向かう訳にはいかない。

 となると解決策はひとつしかない。


 「多少の出費はやむを得ない。お母さんは節約して無駄に金を使うなと言っていたがこれは高校生活の充実のため」

 

 朝食のトーストを焼いている間に俺は高校生としては反則であろうタクシー召喚の儀をスマホを通じて行っていた。

 どこからかもっと早くアラームかけとけよとか二度寝しなきゃいいだけだろとか聞こえた気がしなくもないが、今はそれどころではない。


 タクシーに乗り込みぼーっと景色を眺めていると徐々に同じ制服を来た人達が増えてきた。

 追い越す人のほとんどの制服には無駄なシワがなく、制服が身体に慣れていないような、俗に言う制服に着られている状態で気持ち悪いのか定期に身体を捩らせている人を見たり。

 なんというか中学の時とは違うなぁとひたすらに思う。

 中学の入学式は幼馴染が迎えに来て2人で並んで登校しだんよな。

 それでお互い似合ってねぇとかサイズ間違えたんじゃないとか言い合って笑って……。

 いや、やめておこう。

 自らパンドラの箱を開けて嫌な気持ちになる必要は無い。

 今の俺はそれなりに稼いでるプロゲーマーで高校生の西川アラタだ。

 間違っても勘違いイキリ中学生の西川アラタじゃない。

 ひとつ深呼吸をして気持ちを落ち着けてようとしているとタイミング悪くタクシーが止まった。


 「お客さん着きましたよ」


 「ありがとうございました」


 お金を払い車の外に出る。

 4月とはいえまだ寒く、冷たい空気が空気がつき刺さる。

 刺さるのは空気だけじゃなく視線もだ。

 タクシーを使ったおかげで入学式10分前に着くことができた訳だが、どうやらこの時間に新入生が集まって登校しているようで、俺はめちゃくちゃ目立っているようだ。

 二度寝してうっかりタクシーを使ったけど、もしかしかたら一般の高校生達ってタクシーで登校しないらしく、変人を見るような目で見ている人が数名。

 大多数は、好奇心で見ているのがわかる。

 これでも大舞台を経験してるので人よりは視線に敏感なのだ。

 目立っている時の対処は簡単話しかけられる前に逃げ出すしかない。

 人間話しかけるやつが1人いると自分も自分もなったりすることが多いので、1人目を作らないことが大切。

 経験に従って若干小走りで校舎の中に入っていく。

 

 入学式ってなんでこうも眠たくなるのだろうか。

 椅子に座っているからなのか、それとも体育館の暖房が効いていて暖かいからなのか。

 他の人がどうしてるのかと気になり覗いて見れば既に友達にでもなったのかヒソヒソ喋っている。

 俺の隣は遅刻してきたのか空席で逆側はいかにも真面目そうな生徒で楽しく話を聞かずにおしゃべりしてくれるようには見えない。

 喋る人がいないのも眠気を誘う要因ではあるが、最大の要因は校長先生の長い話だろう。

 新入生を歓迎するとか君たちはこれから高校生になり中学生の時よりも大人に近づいて、社会での責任が重くなるとか正直俺からすれば今さら感しかない。

 プロゲーマーとしての歴は1年と少しだが、責任はとっくに経験してるし。

 ゲームの世界ではそれこそ中学生も高校生も社会人もなく平等でミスすれば容赦なく責められる。

 だからこの校長先生のありがたい話は眠気しか呼び起こさない。

 あ、まずい。

 睡魔の限界が。

 

 「おっと、入学式で寝るとは感心しないぞ」


 周りに配慮した声と共に肩を触られた。

 物理的刺激はしっかり睡魔を吹き飛ばしてくれ目を覚ます。

 見るとそこには普通の少年がいた。

 例えるのなら学園もののラノベ出てくる個性もへったくれもない優柔不断でイラッとくるタイプの主人公みたいなやつだ。

 なよなよとして女の誘いはどんな理不尽でも断らなそうなヘラヘラした感じ。

 辺りを見渡せば100人ぐらい居そうな短く整えただけの黒髪と中途半端に崩れた制服がよりラノベ主人公感を醸し出してる。

 はっきり言ってウマは合わなそうだし仲良くなることはないだろう。

 そいつは俺を起こすと満足したように頷き隣に座った。

 こいつ、遅刻してきたくせに偉そうに注意してきたなぁ。

 さすがに言われっぱなしというのも勝負の世界に生きるプロゲーマーとしていかがなものか?

 もちろんここは1発きつい返しをしておくか。

 どうせ仲良くなれそうにないタイプなんだし嫌われても問題ない。

 俺の目的はあくまで彼女を作ることで男に好かれても仕方ないし。


 「遅刻してきたやつに寝るのを咎められる筋合いはない」

 

 「おっときつい返しだな。でも今日は仕方ないんだよだ。……って昨日の夜にいきなり父親が再婚するとか言い出してさぁ……しかも連れ子いるんだよ同級生の女の子、そりゃ眠れないと思わない?」


 は?

 なんだこいつ。

 確かにラノベ主人公みたいなやつだとは言ったけど誰もそこまでラノベ主人公ぽくしろと言ってないから。

 義妹持ちとは絶対仲良くなれん。

 実妹持ちから言わせれば義妹の方が絶対いい。

 おっと話が逸れたな。

 こいつと関わると俺の高校生青春物語が1話目にしてモブキャラ降格なんてことになりそう。

 なんとも恨めしい存在だ。


 「ラノベ主人公めっ」


 「おれはラノベ主人公じゃない。新道ユウマだ!」


 突然の大声に校長先生はこっちを睨みつけ、他の新入生達からも一斉に見られる。

 注目が集まるのは声の主のみ。

 俺はこれぐらいの注目は慣れているし声のボリュームには気をつけていたから怒られる心配はない。


 「あはははっ。すいません、どうも……」


 ラノベ主人公こと新道は、顔を真っ赤にして校長先生に謝りその直後スーツがはち切れんばかりにムキムキのおそらく体育教師らしき人につられ体育館の外につまみ出されてた。

 その後は特にトラブルもなく入学式は終わり教室へと戻ってくるとそのままホームルームとなった。

 まず始まったのは大量のプリント配り。

 全部で10枚以上。

 俺の後ろの席にはラノベ主人公が座っているが喋る暇がないぐらい連続で配られる。

 いくつか親に書いてもらうプリントがあるようだし帰りに実家に寄るか。

 

 「今配った最後に配ったプリントが明日からの時間割。そして君たちに宿題があります。明日の1時間目に自己紹介してもらうから考えておくこと以上」

 

 そしてようやく放課後となる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 好きになれないのはお前だよ なんで初対面の相手に敵対しに行く? 仲良くしないから嫌われても構わないってところがやばい。そんなんでプロ選手として他の選手と連携がとれるのか? [一言] …
[一言] 10分前なんて一番、通学が多い時間に校門前の乗りつけたり(10分前と言うなら何ブロックか離れたところで降りれば注目もそこまででもない)し、『ゲーマーの世界』で『ミスすれば容赦なく責められる』…
[気になる点] >こいつ、遅刻してきたくせに偉そうに注意してきたなぁ。  さすがに言われっぱなしというのも勝負の世界に生きるプロゲーマーとしていかがなものか?  もちろんここは1発きつい返しをしておく…
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