私の帰る場所
日々は過ぎ、翌週の水の日。孤児院に美容室で雇う女の子を迎えに来た。
院長に用件を言い、女の子を呼んでもらう。準備が出来たようで「今日からよろしくお願いします」と挨拶してくれた。彼女の名前はエマちゃん。
エマちゃんに服屋で服を買ってもらい、雑貨屋で生活必需品を買ってもらう。それから家に行き、玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えてもらい、準備した2階の部屋に案内する。
買ってきた物の整理が終わったら、店の制服を渡して、明日から仕事の時に着るようにと言う。
1階に行きダイニング、キッチン、リビング、トイレに風呂を案内した。美容室に行き、タエ達に新しい従業員だと紹介した。お互いによろしくと挨拶していた。
リビングに行き、魔法は使えるか聞いたら「生活魔法が使えます」と答えてくれた。これなら生活に困らない。制約魔法を掛けて、魔法の質問をした。物怖じしない子ですっぱりと答えていった。全問正解だ。鑑定をさせて貰い、生活魔法と氷魔法の適正があった。
何の魔法が使いたいか聞いたら、アイテムボックスが使いたいらしい。彼女にアイテムボックス大を付与して、苦しみが終わった後「アイテムボックスが使えるようになったよ」と教える。思わずソファから立ち上がって喜んでいたので、こんな所はまだ子供だなと微笑ましくなった。
今日はゆっくりしていて良いよと言い、明日から仕事よろしくねとお願いする。元気に挨拶してくれた。
昼食はカーマインのお屋敷で家族と食べて、ノアとお昼のお別れをした後、カリオンから表街道をインビジブルと結界を掛けて、飛行魔法で飛んでいった。
途中に村があったら、行商人として商売して怪我や病気の人を治していった。
行商人も案外楽しい。私が選んだ商品を買ってくれたら嬉しくなるし、可愛いワンピースをどれにしようか悩んでいる姿も結構好き。女の人は可愛いものと綺麗な物が好きだからね。
意外なもので、ハンガーなんかが売れている。ハンガー、服をかけるだけで置いてあったんだけど、村のおばちゃんが欲しいと言って商品になった。ステンレス製のハンガー3個で1銅貨、安いのも人気の1つかもしれない。
家も売れたのでベッドを展示してある横に「家、販売します」と書いて置いてある。今のところ1軒売れた。引き取った古い家はアイテムボックスのゴミ箱行き。いろんな匂いなんかが付いているから、薪にも出来ない。臭い木材なのだ。
ベッドは以外と売れてるよ。お客さんも行商人でこんな販売初めてと言ってくれる。大きいアイテムボックスがないと出来ないからね。引き取ったベッドがまだ使えそうだったら、格安で売っている。銀貨5枚くらいで。クリーンはちゃんと掛けてるよ。子供が多い家なんかに売れる。
まぁ道行は順調だ。
ある日、ノアの部屋で目を覚ましたら、ノアが「ふーふー」言って熱が出ていた。慌てて治癒魔法を掛けたんだけど、お兄様に言ってノアの仕事をお休みにしてもらった。
いつも元気だから心配だよノア。食事も部屋まで持ってきてもらってノアは1日ベッドの中。
本人、不満そうにしてるけど、何も無いなら熱なんて出ないんだからね!
私はベッドの横に椅子を出して、座って本を読んでたんだけど、ノアが暇でちょっかいをかけてくる。
「寝てないとダメ!」
って言うんだけど、本人からしたら元気で眠くないから暇でしょうがないみたい。子供みたいにして……。
昼食をノアと一緒に食べてたんだけど、お兄様からの伝言で領主館に一緒に来て欲しいとの事だった。
ノアにちゃんと寝るように言って、お兄様とお父様と一緒に領主館に来た。どうも領主館で熱を出している人が多いみたいだ。ウィルス感染だね。熱を出している全員に治癒魔法を掛けていった。領主館全体に浄化を掛けて、屋敷に帰った。もちろん自分にも治癒魔法を掛けた。
ノアの病気の原因がはっきりしたので、安心してノアの部屋に帰った。ノアが寝ていたので、私は自分の部屋に行きルーフバルコニーで果物の収穫をしていた。
夕食前にノアの部屋に帰ると、ノアが起きていたので、水分補給がてらマスカットを食べさせてあげた。ノアも嬉しそうだった。
夕食が来たので、ノアと食べる。気分も良さそうだし、明日には普通に生活していいだろう。
夜は一緒に寝て、おやすみ。
翌日、すっかり元気なノアと手を繋いで食堂へ。
お兄様に「昨日はありがとう」と言われた。役に立てて嬉しい。ノアの給餌を受けながらやっぱり日常が1番良いと思う。
旅も順調だ。町に寄り、門で孤児院の場所を聞くと、この町には孤児院が無いらしい。
人気がない所でインビジブルをかけて、貧民が住んでる所に行く。創造魔法で透過魔法を作り、1つ1つ家の中を見ていきながら、どこかにいるだろう孤児を探す。
一応すべての家を見て、当たりをつける。子供達しかいない家。インビジブルを解いて、ノックをして子供が出て来るのを待つ。中から声がかかる。
「誰!」
「はじめまして、カヨといいます。ここは親がいない子供達が住んでいますか?」
「……そうだけど、何しにきたの?」
「支援ができないかと思い、来ました」
中の子供が黙った。私は辛抱強く待つ。しばらくしてドアが開いた。10歳少し過ぎたくらいの子供だ。
「中に入ってもいいかな?」
「いいよ」
子供について行って中に入る。痩せた子供達が6人ほどいた。
「ここで、食事なんかはどうしてるの?」
「知り合いの食堂の家族が余った食事をくれる。たまに市場で形の悪い食材を貰えることもある」
私は子供達にクリーンを掛けた。部屋全体にもクリーンを掛ける。
「姉ちゃんは魔法使いか!?」
「そうだよ。ここにいる子供達で全員?」
「そう、俺たちで全員」
「そっか。ねぇごはん食べない?お腹すいてない?」
「姉ちゃんがくれるの?」
「そうだよ、今は食べたくない?」
「たべたい!」
小さい子が叫んだ。私は床に座り、キッチン組が作ってくれた料理を出していく。
「みんな、食べよ?」
わっと子供達が器に飛びついた。美味しそうに料理を食べている。果物を器に取り出し、真ん中に置く。私はぶどうを食べた。
子供達がお腹いっぱいになって、うとうとしてきたので布団を敷いて、その上に小さな子を寝かす。可愛い寝息が聞こえて来た。
私は1番大きな子とお話しする。
「あなた達が、する選択は2つ。このままここにいるか、それとも私についてきて孤児院に入るか、どちらか選んで。私としては孤児院がおすすめ。食事に困らないし、勉強も教えてくれる。大人が守ってくれる」
子供は喉を鳴らした。緊張した声で言う。
「俺たち全員か?」
「そう。全員で行くの。私が連れて行ってあげる」
男の子は期待しているような、信じきれないような複雑な顔をしている。私は手甲を外した。
「神官の私が神に誓うよ。今ここに居るより貴方達は孤児院にいけばもっと幸せになる。信じてくれる?」
「……神官さま……信じます。僕たちを助けてください」
「いいよ。今までお世話になった人に挨拶してきて。何人いる?」
「えっと、3人です」
果物バスケットを渡して、これから孤児院に行くと挨拶に向かわせた。私は子供達の頭を撫でながら、ある計画を練った。まだまださきの事だけど。
お昼になったので私は屋敷に帰る。家族と食堂で食事をしながら、子供達にこんな当たり前の日常をあげたいと思った。
食事が終わったら、子供達の所に瞬間移動で行く。男の子が不安そうに立っていた。私を見てホッとしたような顔をした。「家に帰っていたの。不安にさせてごめんね」と抱きしめた。おずおずと抱きしめ返してくれた。しばらく頭を撫でる。
寝ていた子供達が起きてきた。ボウの乳を飲ませてあげる。あまりの美味しさに歓声をあげていた。美味しいよねぇ。
布団を片付け、子供達にもう帰ってこない事を伝えて、準備させる。
子供達に私に触るように言い、全員触ったら、カリオンの孤児院に瞬間移動で飛んだ。孤児院についたら、みんなびっくりしていた。
院長を探知して、子供達に付いてくるように言って、院長の所まで行く。
院長に子供達をお願いしたい事を伝える。院長は1人1人子供を抱きしめていた。院長が「頑張りましたね」と言うと泣きだす子供もいた。
ベッドの上にたくさんの服と下着に靴下と靴を出すと、院長が子供達に服を合わせて、私は子供達の髪を切る。全員終わったら、子供達を部屋に案内して荷物を置かせていた。
私は男の子に「幸せになるんだよ」と声を掛けて孤児院を後にした。
瞬間移動で町に戻り、変身魔法を掛けて手甲を外す。役場に行き紹介状を渡して、しばらく待つ。役人さんに呼ばれて町長の所へ行く。
紹介状の事を確認されて、「噂に聞いて待っていました」と言われる。住人にすぐ御触れを出すみたい。
2日後に役場の1階で行う事になり、当日また来る事を約束して帰った。
2日後の当日。インビジブルを掛けて瞬間移動で役場の近くまで飛んできた。
いつものことで、もう列が出来ている。インビジブルを解いて役場に入る。椅子と机とお金を入れる箱が用意されていた。用意は完璧だ。これも噂で聞いたんだろう。
役人さんに挨拶されて、返す。椅子に座り治療の開始だ。
治療をしていると、患者さんに声をかけられた。
「子供達を孤児院に連れて行ってくれて、ありがとうございます」
「貴方は子供達に、食料をあげていた人?」
「はい、そんな事しか出来ませんで……」
「貴方は子供達の為に正しい行いをしてくれた人。貴方が幸せになりますように」
私はサッとプラチナ貨を果物バスケットに入れて、男の人に渡した。男の人は恐縮したように受け取ってくれた。
小さな事でも子供達を気にかけてくれる人がいる。それは素晴らしいことだ。あの男性のような人がたくさんいてくれたら良いのに。
治療は夕方に終わった。手伝ってくれた役人さんと兵士の人に果物バスケットを渡して、お礼を言う。箱の中のお金だけアイテムボックスに入れて、町長に果物バスケットを渡して、お礼を言って帰る。
今日は屋敷の夕食に間に合いそうだ。
誰もいない物かげで、瞬間移動してノアの部屋に帰る。変身魔法を解いてクリーンを掛けてから、食堂に行く。
今日も疲れたなぁと椅子に腰掛けていると、お母様方と子供達がやって来た。挨拶をして、話しをしながら男性陣を待つ。
男性陣が帰って来た。私はノアとハグをするとホッとした。いつのまにかノアの腕の中が帰る場所になっていたんだなぁ。




