行商とプレゼント
今日はマルクスで価格調査している。悪い意味ではない。
旅をしながら行商人の真似事をしようとしているのだ。適正価格を知らなければお客さんにぼったくるかもしれないし、その逆だってあり得る。それを防ぐために、調査をしているのだ。
服は庶民の新品で金貨1枚〜金貨10枚、古着は銅貨5枚〜銀貨7枚くらい。お皿や食器はピンからキリまで。砂糖や塩は時価。村で商売しようとしてるから、野菜は論外。調味料は私が料理苦手だから価値が分からない。他、カバンや雑貨、靴なんかもピンからキリまで。
良い商品を仕入れても売れるか分からない。悪い商品は私が販売したくない。
まぁ趣味でするような事だからそこまで真剣にしなくてもいいかもしれないけど、お客さんと対等に取り引きしたいんだ。地球通販で買うにしても、そこまで奇抜な物は売れないし。ウィンウィンで終われる関係がいいよね。
そこらじゅうのお店に入って価格をノートにメモった。これで大丈夫だろう。屋敷に帰って、地球通販で仕入れをしよう。
るんるんと屋敷に帰る。ノアの部屋で良さそうな品、気に入った物を購入していく。大量にあるくらいが良い。
1日が仕入れで終わった。
翌日、朝食後。インビジブルを自分に掛けて、旅が進んだところまで瞬間移動で飛ぶ。そこから飛行魔法で飛んで行く。
村を見つけたら、インビジブルを解いて歩いて行き、近くの村人に村長の家を聞く。村長に行商をしているので場所を貸して欲しいとお願いする。村は行商人を歓迎しているので、すぐに場所に案内される。
シートを敷き、ハンガーラックを準備して、ハンガーに服を掛けていく。女性はワンピースで生活しているので、ハンガーにワンピースを数種類掛けて、男性は上着だけをかける。ズボンは紐で調節できる物だけ並べて、子供服は綺麗に畳んでカゴに入れておく。各サイズの革靴・ブーツを並べて、櫛などの雑貨も置いていく。食器やナベ、フライパンや調理器具を並べて塩と砂糖の袋も置く。塩は200g、3銅貨、砂糖は200g、1銅貨だ。隅にこっそり、果物をお手頃価格で置いている。極めつきは手書きの看板だ。銀貨1枚で怪我人・病人治します。文字が読めなければ読んであげるよ。折りたたみ椅子に座り、客が来るのを待つ。
食器は地球通販で食事を買った時に消えなかった物をさりげなく一緒に置いている。売れたら不要在庫が消える。
朝の作業を終えた人がポツポツ見に来てくれる。「商品は自信がある物を揃えてますよ〜」と声を掛け、少しずつ売れていく。看板を見た人が「これは何だ」と聞いてきたので、読み上げた。治癒魔法が使えるのかと驚かれたが、銀貨1枚ならとそこらじゅうの家に声を掛けたそうだ。今は並んでいる人から銀貨1枚を貰い治療をしている。私が探知で探して1人1人治療するよりも効率が良い。
お客さんがあらかた来て、いろいろ購入してくれたので、行商は成功だと思っても良いだろう。店の隅に小さな女の子がしゃがんでいたので「どうしたの?」と声を掛けると「お家売ってくれる?」と聞いてきたので「あるけど」と答えた。女の子は立ち上がって私を連れて行こうと引っ張る。ちょっと待ってもらい、並べた商品をそのままアイテムボックスに入れる。
女の子はナチと言うらしく、家が壊れそうになっているらしい。
確かにペイターとリンについて行った時に村人が建てた家を、複数所持している。
女の子について行くと、ボロい今にも崩れてしまいそうな家に着いた。子供が親を呼んでいる。両親が来たが、身なりが特別悪い訳じゃない。他の村人と同じような格好をしている。どうして、こんな家に住んでいるのかと聞くと、両親は元冒険者らしい。子供も出来たし、引退して住む村を探してた所、この村が受け入れてくれたそうだ。でも住むのはこの家しかなくて、それでこの家で暮らしていたそうだ。
中古の家を持っているので、金貨50枚で売ると言った所、是非、家を売って欲しいと言われたので、家の中の荷物を全て外に出してもらう事にした。元は金貨100枚の家だからお得だろう。余り荷物の無い家だったが、ベッドは移動出来ないと言われたので、見にいくと粗末なベッドが置いてあった。追加で金貨10枚払うなら新しいベッドを用意すると言ったら「お金は用意するのでお願いします」と言われた。
家をアイテムボックスに入れて、更地にした後、地面を圧縮してから平らに慣らし、ペイターの村人が作った家を出した。中に入り寝室にクイーンサイズのベッドを置いたあと、子供部屋に1人用のシングルベッドを買い置いた。布団はサービスだ。外に出てぼんやりしている夫婦にお金を精算してもらい、売買は成立した。
親子が恐る恐る家の中に入って行き、その後喜びの声が聞こえた。う〜んいい仕事したな。あっ!スライムどうしよう。地面の中を探知して、スライムを探して、アイテムボックスからバケツを出して、瞬間移動で呼び出し手元のバケツに入れた。親子が喜んでいる横でトイレの穴を掘り、中にスライムを入れる。これで良し。私は村長に挨拶して村を去った。
屋敷で昼食を食べた後、また街道を飛んで行く。だんだん獣人が少なくなって来た。カーマイン領が終わりに近づいているかな。マップで確認すると点在する村はあるが、大きな街はない。
村に寄り、行商をする。やはり塩が1番の売れ筋だ。その次はナベとフライパン。服や靴はぽちぽちと売れている。食器は安いので、気に入ったものがあれば買ってくれる。果物の盛り合わせは高いので、単品で買ってくれる人もいる。看板を見た人が、病人怪我人を連れてきてくれるので、行商は成功と言えるのではないだろうか。私も楽しいし、村人も満足そうだ。買い物に来た子供に果物を1つあげたのは内緒だ。
後、数カ所村をまわったら、カーマイン領での治療が終わる。その後はカリオンから王都に出発だ。
「この鍋をくれるかい?あと塩を1kgと砂糖を2kg」
「金貨1枚と銀貨2枚と銅貨5枚です。はい、まいど」
今は初めての場所で行商をしている。新たにベッドを展示して販売している。
村では職人さんがいない場合、いる所に注文して運んでもらわなければいけない。大きな家具なんかは割高になるのだ。村で器用な人に作ってもらっても、プロには敵わない。そんな訳でベッドの事を聞いて来た人には欲しい家具を聞いて、値段をつけて販売している。大体はそれで満足してくれるが、金は無いがベッドは欲しいと言う人は相手にしない。ちゃんとお金を払って購入してくれる人に失礼だし、私もぼったくりなんかしていない。地球での価格をこの世界の通貨に合わせて販売している。一部は安くしているくらいだ。
今日の販売は終わったし、引き上げよう。商品をしまうと、1人の獣人男性に声をかけられた。家で嫁が病気だから治して欲しいとの事だ、先払いで銀貨1枚貰い。男性についていく。
家に着いたら、女性が寝ている部屋に案内される。上着の服をお腹が見えるまでぬいで、不自然にぽこっとしているお腹をサーチする。女性は子宮外妊娠だった。普通なら子供は諦めて母親だけ救う所だが、子供がかなり大きくなってしまっている。旦那さんの男性に言うと顔を青くしていた。でも私ならどちらも助けられるかもしれない。失敗するかもしれないが、治療しないよりマシだと言うと、私に任せると言ってくれた。
私は創造魔法と治癒魔法を平行して使いながら、赤ちゃんの場所を少しずつ移動していく。見ていてお腹のぼこっとした部分が動いているのが見えるのだろう。奥さんは苦しそうにしていて、旦那さんはそんな奥さんの手を泣きそうになりながら握りしめている。
私は集中して子供を子宮まで移動して、そこが本来の居場所だったように創造魔法を使う。赤ちゃんは正しい位置にきて、状態を見ても健康のようだ。
私は夫婦に成功した事、今は妊娠5ヶ月だと言う事を話していった。苦しそうな様子から一転、喜びに溢れた。何度もお礼を言われて、帰った。
病気と一言で言っても、いろいろあるんだなぁと思った。母子共に助けられてよかったと。
他の村もそんなふうに行商は終わった。
ノアの仕事が休みのある日、屋敷のノアの部屋に仕立て屋からたくさんの品が届いた。ノアに箱を開けてみてと言われて、開けてみると可愛い色のワンピースが入っていた。ノアの顔を見ると「カヨにプレゼントだよ」と言われた。嬉しくなって、ノアに抱きついた。
服をよく見るとちょっと襟ぐりが広い気がした。ノアに来て見てと言われて、服を着ると結婚の印が丸見えだ。ノアは満足そうにしている。そういやノアは私が神官の印を隠している事も気に入らないんだった。結婚の印ならもっとだろう。まぁ恥ずかしくないから、いいんだけども。これじゃ服全部、襟ぐりが広いかも知れない。ノアの前でファッションショーをしながら思った。
プレゼントは嬉しかったからいっかと思い、全ての服に劣化防止をつけないとなぁと考えた。私の3着しか無かった服が数えきれないほどたくさんになった。




