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尋常じゃないミスして修正(名前とか)

土下座しながら穴に埋まりたい。

 あれからしばらく経った。

 美春ちゃんと料理に舌鼓を打ちつつ感想を言い合っていた。

 あの後から私に話しかける人はいなかった。

 今回分かったのは鶴岡家の情報収集能力が高いということだけだ。

 やっぱり私が白鳥家の人間だと気づいたのはほとんどいなかったんだろう。

 そもそも私が存在していると気が付いた人自体が少ないのかもしれない。

 なにせ部屋に押し込まれて夜会やパーティーどころか、外にすら出ていないのだから。


 終わりが近づいているパーティーは、寝ちゃった子や具合を悪くした子、様々な理由でパーティーを抜けていく。

 人もだいぶ少なくなってきている。

 鶴岡様や鷲宮様は既に退場したことでお目当てなくした令嬢やその親も退場していく。

 白鳥家も既に退場している。

 小鳥遊家は父親が理事長の知り合いということで最後まで残るのだそうだ。

 私は白鳥家の関係者から声がかかるまで待っている状態だ。


「日陰様、お迎えに上がりました」

「そう、ついに来たのね。美春ちゃん、また明日、学校で」

「うん、また明日ね!…その方は?」


 美春ちゃんには嘘はよくないよね。


「…白鳥家の人間だよ、今日で私と白鳥家の関係を終わらせる契約をするの。これ、他言無用だよ」

「わかった、あ、そうそう。これ、私がいつもつけているお守りなんだけど、日陰ちゃんに貸してあげるね。でも明日にちゃんと返してもらうけどねー」


 それ、意味あるのかな?


「いいの?ありがと、それじゃあね」

「うん、ばいばーい」


 じゃあねと挨拶を終えて白鳥家の関係者の後に続く。

 外は春だというのに肌寒く体が震える。

 駐車場に行き意外や意外、リムジンに乗り込む。

 中には陽向様(・・・)のお父様が乗っている。

 契約先で会うかと思ったが、まさか車の中で会うなんてな。


「日陰よ、今から弁護士事務所に向かう。今更後悔しても遅いからな」


 おおう、睨んできやがった。

 面倒になったとか今回は特別に許すとか言ってあんな監獄に戻されるのは困る。

 殴られる覚悟で怒らせてでも契約しないとな。


「後悔ですか?それは白鳥家に生まれてしまったことですね」

「貴様ッ!私たちの後悔は貴様を産んだことだ!貴様の顔など二度と見たくなどない!おい、運転手!早く出発しろ!」


 ふぅ、挑発成功かな?

 これで契約が出来れば私は自由になれる。

 いろいろと問題は山積みだけど、白鳥家と縁を切る。

 これだけはなにがなんでも絶対に譲れない。


 学校から5分ほどのところで車が止まり、陽向のクソ親父がビルに入っていく。

 私も車を降りてビルに入り、弁護士事務所に入ると予め予約していたのだろう、個室案内される。

 さて、こっからが正念場だ。


「初めまして、私は坂本(さかもと)忠志(ただし)といいます。本日は白鳥様の契約とその契約書の管理に関することでこのような場を用意させていただきました」

「おい、さっさと終わらせるぞ」

「はい、わかりました」


 お互いに向き合う形で席に着く。

 はぁ、今まだ4時だよね?なんでこんな疲労してるんだろ?

 いやまぁ、仕方ないけどさ。


「それで、今日はどういったご契約で?」

「ふんっ!このクソガキとの決別、離縁だよ」

「離縁、でございますか?しかしそれは…」


 ざっくり言い過ぎだろバカが。


「あ、社会人になったとともに離縁をするという契約です。それとマンションビルの管理者を私に変えたという事実確認の話もします」

「はぁ、その…こんなことを言うのもどうかと思いますが…。本当によろしいのですか?」

「「構いません(わん)」」


 お互いの意思を確認をした弁護士は深くは聞かずに契約書を持ってくる。

 普通なら聞くんだろうが権力って恐ろしいな。


「…では社会人になると同時に離縁との事でしたが…、たしか日陰様は6歳ですよね?社会人になるまでの間、どうするのですか?養子にというわけではないのですよね?」

「それまでは生活費を払ってもらえますよね?隔離するのですから」

「言われんでも払ってやる!だが、貴様も契約を守れよ!」

「もちろんです」

「では、こちらの用紙にお互いが希望する契約内容を書いてください。日陰様は…」

「契約に問題ありません。言われなくても理解できます」

「…そうですか」


 渡された書類に希望を書き込んでいく。

 しばらくしてお互いに書き終わり書類を弁護士に渡す。


 クソ親父の希望する内容は

・契約期間中、契約成立後も二度と白鳥を名乗らない事

・18になると同時に必ず家族関係を断つ事

・今後白鳥家には一切頼らない事


 私の希望する内容

・高校生活の終わりまで金銭面での援助

・私と私の管理することとなるマンションビルに干渉したり関わったりしない事

・断った後も白鳥家全体が私や私の子孫に関わらない事


 最後の子孫っていうのは未来への希望だったりする。

 いや別にせっかく可愛くなったんだしいいよね?


「お互いにこの内容でよろしいですか?」

「私は構いません」

「…まぁ、これで貴様との縁がきれるなら安いものだ」

「金銭面での援助については後で話し合うとして、日陰様社会人になる間の保護者はどうするのでしょうか?」


 しまった!そこを全く考えていなかった!

 まずい、このままじゃ奴の都合のいい奴に…


 ―――――――コンコン


「おや?どうしたのですか?………はぁ、そうですか」

「どうかしたのですか?」

「いえ、お二人に会いたいという方がいらっしゃっております」

「俺たちに会いたいだと?」

「ああ、悪いが失礼させてもらうよ」


 そういって現れたのは美春ちゃんのお父様、繁様だ。

 え?なんで?


「その保護者に関する事なんだが、私が面倒を見よう」

「…なに?」

「愛していないのだろう、なら別に構わないではないか。もちろん彼女への金に一切手を出さないと約束しよう。日陰ちゃんも私に任せてくれるか?」

「えと、それは…」

「ああ、もちろん妻や子供たちには話している。それに君はマンションビルで一人暮らしするのだろう?それに干渉したりもしないよ」


 …下手に知らない人よりはいいよね。


「…よろしくお願いします」

「ちっ、小鳥遊だったな?邪魔しやがって」

「悪いな、浩介様よ。ああ、そういえば貴様が仕掛けているマンションビルに住んでいる問題児共はこちらで処分させてもらうからな。というか既に排除させてもらってる」

「…なんのことだかさっぱりだな」


 へぇ、あのクソ親父、浩介って言うのか。

 それと問題児どもって…、つまり私がこのまま一人暮らししていたら何かしらの被害が当たってことか…。

 うわぁ…、繁様、本当に助かったよ。


「っと、日陰様の保護者は小鳥遊繁様でよろしいですね?」


 弁護士が凍りつく空気を感じてすぐさま切り替える。

 うん、ナイス判断だ。


「はい、繁様、これからよろしくお願いします」


 それを確認した後に弁護士は契約書類を作成していく。

 作成が終わりお互いに拇印を押し契約を終了させる。

 金銭面でのお話は私ではなく繁様がしてくれた。

 結果的に月に前世の給料の何十倍って額が来るようになったけど、一体どんな話し合いがされたんだろう…。


「それではこれで契約は終了です。お疲れ様でした」


 弁護士が終わりを告げると同時にクソ野郎が出ていく。

 けっ!二度と会いたくないね。


「…行こうか、日陰ちゃん」

「あの、本当によろしいのですか?」

「ああ、もちろんだ」

「そう…ですか、改めて、ありがとうございました」

「それでだ、この後少し話さないか?」

「はい、分かりました」


 はぁ、やっと契約が終わった。

 やっと一人暮らしライフだ。

 その前にお話ししなくちゃのようだけどね。


 事務所を出ると繁様が用意してくれた車に乗る。

 車の中での会話はなく、どうしていいか困った。

 そのまま私の住むことになるマンションビルの前に着いた。

 そこでやっと繁様が口を開く。


「日陰ちゃん、これはマンションビルの管理所なんだが君が社会人になるまでは私が預かることになっている。君の部屋は最上階にさせてもらったよ」


 え!?まじ!?最上階なの!?

 やった!なんとなく夢みたいなものだったんだよね!


「それでね、君の最上階には専用のカードか君の許可がなければ上がれないようになっているらしいから、マンション内での安全に関しては安心して欲しい」

「はい」

「それと君の生活に関するものなのだが、登下校は小鳥遊家の車でしてもらう。ああ、もちろん白鳥家から金は出されているから遠慮しなくても結構だよ」


 そこは安全なんだ、よかった。


「それで、その他の事に関しては君の隣の部屋に私が信用している女の使用人を住まわせることにした。悪いけど生活ができると判断できるまでは彼女に住んでもらうからね?もちろんこれに関してもお金貰ってるからね」

「はい、問題ありません」


 …やっぱ白鳥家めっちゃ金持ちだなぁ


「で、ここからが個人的な話なんだが、言いたくないなら言わなくていいし、聞きたくないなら言ってほしい」


 たぶん、私自身の事だろうな。

 私は少し考えた後に頷く。


「…君のお父さん、いやお父さんだった人に、君と私の家族以外には他言しないことを約束して君をどんな扱いをしたのかを聞いたんだ。そしたら思った以上に…その…酷い事をしていたみたいだね」

「…」

「最初は君が冗談を言っているのかもしれないと思った。でも、君の目を見ていると嘘ではないのかもしれないと思って聞いてみたんだよ。そしたら聞いていた以上にあの人は君を虐げすぎていた」


 ほとんど覚えてないけど、私が見ただけでも最悪と言える環境だった。

 あんまり直視しなくて正解だったかもしれない。


「私達で君の心を立ち直らせることが出来るかは分からない。でも、信じてはもらえないかな?」

「…最初から信じてますよ。美春ちゃんも、繁様も」

「それは嬉しいな、一応いうと美春の兄の優一(ゆういち)や妻の香奈(かな)とも仲良くしてくれよ?」

「もちろんです!」

「あ、そうそう。美春から借りているお守りあるかい?それ、娘に返しておくから渡してくれないかな?」

「えと、これですしか?」


 胸ポケットに入れていたお守りを繁様に渡す。

 なんで胸ポケットに入れていたかというと守られている気がするからだったりする。

 お守りを受け取った充様はお守りの袋の中から薄い機械を出して私に見せる。

 ん?これって…。


「これ、GPSと盗聴器の効果があるんだよね」


 そういうと繁様は機械のスイッチを切ってポケットにしまう。

 ってことは渡された時から会話が効かれてたってこと!?

 …本当にお守りだったんだね。

 後で美春ちゃんに感謝して抱きつかなきゃ…。


「で、これが君のお守り。このスイッチが私たちが盗聴出来るようになるスイッチで、このスイッチは録音だよ。何かあったら使ってね」

「なにからなにまでありがとうございます」

「全く、君は大人びているな、子供なんだから気にしなくていいんだよ」


 繁様は私にお守りを渡すと話し終わったのか長く息を吐くと同時に私の隣に住むのだろう使用人の人がマンションビルの中から出てくる。

 話し合い終了、ここから私は白鳥家から解放されるんだ。


「それじゃ、君の部屋に荷物等は部屋に既に入っているからね。明日から美春をよろしくね」

「はい、むしろ美春ちゃんによろしくされます!」

「あははっ!学園生活、楽しむんだよ!」


 車から降りて繁様が見えなくなるまで見送る。

 その後は使用人の佐藤由香里(さとうゆかり)さんの後に続いて部屋に案内される。

 ふぅ、なんだか全身から力が抜けるのを感じる。


「日陰様」

「は、はいっ!」

「お疲れなのは分かりますがお風呂に入って着替えてから寝てくださいね。もちろん私は寝るまで傍にいますのでそのまま寝るという選択はありませんからね」

「はーい」


 …やっぱり普通のメイドさんはしっかりしているのね。


 部屋に入ると本当に荷物は整理されている。

 メイドさんにいろいろ小言を言われながらお風呂にパジャマに着替える。

 途中で何回か意識が飛びそうになった。

 …まぁ、小1のするべき負担とは思えないほど無茶したもんね…。


 やっとの思いでベッドに入ると、用があれば連絡するようにとナースコールのようなボタンをテーブルの上に置きメイドさんが電気を消して部屋から出ていく。


 ああ、やっと今日が終わるんだ…。


 ストレスから解放された私は目を閉じて眠りに落ちた。

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