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茶が繋ぐ友情

 翌日、私は急いでリーリア様の元へむかった。リドニー宰相から、茶会の日取りの連絡がきたのだ。茶会の時間は近づいている。


「城に行ったかと思えば、急に会いに来たり……貴方も勝手な人ねぇ」

「申し訳ありません。リーリア様にお願いがあって」


「何かしら。聞いてあげなくもないわよ」


 リーリア様は相変わらずの高飛車だったが、その変わりのなさが、かえって私を安心させてくれた。


「リーリア様、以前言ってらっしゃいましたよね。茶会を開く上で重要なのは、主賓の好むお茶を熟知し、それを用意する事だと」

「そうね……。わたくしもアルブム中の貴族の好みは調べ上げておりますわ」


「では皇室の皆様のお好みは?」


 リーリア様が瞬きをして驚いてみせると、ほう……と小さくため息をついた。


「もちろん知ってますわ。皇室の方々がお認めになった品は、御用達として格があがり、高級品として扱われますもの。それを知ってどうするのかしら?」

「今度皇室の方々が集まる、茶会の準備を任されたのです」


 リーリア様は優雅にあおいでいた扇子を取り落として、間抜けなくらい口をぽかんと開けて大きく驚いていた。


「そんな……重役が……それでその茶会はいつ行われるのかしら?」

「2週間後です」


 リーリア様は俯いて、両手で頭を抱えこんだ。


「無茶が過ぎると思いますわ。通常はそれだけの格式のある茶会なら、数ヶ月前から準備が必要ですのに……」

「だからリーリア様にご協力願いたいのです。茶会に使用するお茶を集めたり、茶会に出す茶菓子を選んだり。私は茶については詳しくなりましたが、茶菓子や茶会の演出はまだまだなので……」


 リーリア様は取り落とした扇子を拾い上げて、一度ぱらっと広げ、顔を隠す。しばらくそうした後、ぱちんと音を立てて閉じて、その扇の先を私に突きつけた。


「よろしい。わたくしリーリア・クレメンスの名にかけて、その茶会が成功するように、協力してあげますわ。今日から寝る時間もないと思いなさい!」

「はい。ありがとうございます」


 私は心の中でガッツポーズをした。リーリア様が協力してくれたら、きっと茶会も成功する。この方と茶会を何度も開いたが、その采配ぶりは見事だった。

 リーリア様は閉じた扇を口元に当てて、微笑した。


「それだけの難事をさせるのですから、何か見返りがほしいですわね」


 私は少し悩んでこう言った。


「ロンドヴェルムの紅茶の販売権はいかがでしょうか? これからロンドヴェルム産の紅茶はますます人気が出てくると思うので、大きいと思いますが」

「ロンドヴェルムの茶なら、貴方が売ればいいんじゃないかしら?」


「私はこの茶会が終わったら、国に帰ろうと思ってるんです。また国で茶を作って過ごします」


 リーリア様はまた瞬きをして驚いた後、そっと目を伏せて、憂いを帯びたまなざしになった。


「そう……寂しくなるわね。せっかく茶について、色々話せる友人が出来たと思ったのに」


 リーリア様に友人と言われて、私は嬉しかった。短い間だったけれど、二人で茶について語り合い、研究した日々は、私にとってとても大きな財産だ。


「また……いつか会えますよ。さよならではなく、これからも一緒に茶について研究しましょう」


 リーリア様はまっすぐに私を見つめ直して、にっこりと微笑んだ。


「そうね。まだ終わりじゃないわ。これから茶会の準備をしなければ行けないですものね。さあ……燃えてきましたわ。まずは茶会に出す茶のリスト作りね」


 そう言ってさっそくリーリア様はさらさらと紙に、皇室のメンバーと彼らの好みのお茶を書き始める。


「参加者は皇帝陛下と皇后陛下。それにラルゴ殿下とジェラルド殿下の4名でいいのかしら?」

「それにリドニー宰相とソフィア様も参加されます」


 リーリア様は、思わずペンを取り落としそうになる程驚いた。


「リドニー宰相はともかく、なぜソフィア・ティモシーを?」

「今回の茶会に必要な人物だからです」


 リーリア様は納得いかないのか不満げに顔をしかめた。


「あの娘の好みなど知りませんわよ。茶会になんてめったにこない変わり者ですもの」

「それは私が確かめたので、大丈夫です」


「そう……。それにしてもリドニー宰相も……となると、ますます大変ね」

「リドニー宰相が何か?」


 リーリア様は悩むように眉根を寄せて答えた。


「リドニー宰相はお茶好きで、お茶にこだわりを持ってらっしゃるようなのだけど、政務が忙しすぎてあまり茶会には参加されないのよ。どのような茶がお好みなのかもわからないわ。かといって下手な茶は出せないし……」

「難しいですね……今考えているのは、ロンドヴェルムの紅茶をお出ししようかと思っているのです。まだ珍しいものですし、面白いかと思いまして」


「あら、それはいいかもしれないわね。珍品を出してもてなす茶会もよいわ。何かとっておきの紅茶でもあるのかしら?」

「まあ……とっておきと言う程ではないのですが……。今までアルブムでは出してなかったお茶で」


「まあ……それは一度飲んでみたいわね。今度もってらっしゃい。わたくしの舌で見極めて差し上げるわ」

「はい。リーリア様」


 その後リーリア様と相談しながら、茶会の骨組みを作って行った。これから準備をしつつ、しっかりと仕上げて行くのだが、リーリア様がいれば大丈夫。そんな風に思える心強い味方だ。

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