3-6:魔塔の決闘
「いやはや大変な騒ぎだねえ、これは」
案内役の魔術師の後をついてアーサーは、魔塔の中庭に面した東回廊を南に向かって歩く。
「あと二十分足らずで魔塔の出入口を完全閉鎖なんて。危ないところだったよ〜」
「我々としては、侯爵令息を入れるのは気が進まないのですが、ヴァスト卿」
黒ローブは上級魔術師を示す。それなりの者を警戒も兼ねて案内に寄越してきたらしい。
迷惑気かつ何故侯爵令息がと胡乱げに見られたが、アーサーに答える義理はない。
「ネイサンと閣下が魔術戦とは……セシリアはどこに?」
先ほどから早足の魔術師と何度もすれ違っている。「ここじゃ遠い……北より南が空いて」「死角だ、まだ上へ行く方がいい」とすれ違い様に聞こえた会話にアーサーが振り返れば、歩いてきた通路に人が集まりつつある。
「<深園の解錠師>殿は南回廊に」
「そうか……<深園の解錠師>セシリア・リドルだったねえ」
<深園の解錠師>でいる間はセシリア・リドルだ。アーサーの妹で侯爵令嬢のセシリア・ヴァストではない。
その才能を見出されリドル家の養女となった架空の経歴を持つ、平民育ちの少女。
正体を隠すのは様々な思惑も含んでいるが、セシリアの意思でもある。しかし妹を妹扱いできないのは嫌だ。
(セシリア・リドルも同じ屋敷に暮らす、ヴァストに連なる者。これはもう私の妹も同然と言ってもいいのじゃないかな。うん、愛しの我が妹でよしだ!)
どこまでもぶれない妹愛にアーサーが考え巡らせているうちに、南回廊と接続する角を曲がり、急拵えの事務局を設営する場所に辿り着いた。塔の幅に合わせ、小さな金属杭が南回廊との間の芝生に打ち込まれている。よく見れば回廊との境にも。
「これは?」
「特殊結界の範囲指定です。東西は南回廊まで、北庭全面を使います」
「つまり塔の南裏を残して全部。塔も封鎖。“第一級警戒”とは物々しいが、クリストファー閣下では仕方ないか」
単騎で翼竜四体を瞬殺し、二つ名を得た《白焔》の魔術師だ。対戦者はネイサンである。ここは魔塔。アルバス在籍時の彼を知る者もいるだろう。激しい魔術戦闘を危惧してと容易に推察することができる。
アーサーの考えを裏付けるように、南庭の芝生に救護のための天幕と数人の魔術師が待機している。
「えっ、おにっ……?」
周囲のざわめきにかき消えそうな声を、アーサーの耳は逃さなかった。
小ぶりな長椅子にちょこんと座らされている少女の姿を見つけ、案内の魔術師に礼を伝えアーサーは駆け寄る。
黒髪に菫色の瞳を、灰褐色の髪と薄青の瞳に容姿の色を変え、亜麻色の作業用ローブのフードを目深に被っていようと、アーサーにとってセシリアはセシリアで愛すべき妹だ。
「セシリア〜〜! ネイサンが大変な剣幕だったから、つい心配で来てしまったよ〜」
「あ、ああああわわわ……おにおに……いえ、あ、アーサー様っっ!!」
「嫌だなあ。そんな他人行儀に。お兄様だよ〜」
周囲をものともしないアーサーの言葉に、大慌てでおろおろ身をよじって必死で取り繕うセシリアを安心させるべく、彼は怪訝そうに二人をうかがう魔術師達に聞かせるように、愛しい妹へ笑いかける。
「セシリア・リドルだって、ヴァストに連なる者だ。同じ侯爵家に住まう私の可愛い妹さっ」
「あぅぅ……そ、そういう……し、心臓に悪いぃぃ」
ぎゅうっと抱きしめれば、アーサーの意図を理解したらしいセシリアにくすりと笑む。それにしても、金台にカメリア色の絹が貼られたソファは、まるで戦いの勝者を讃える姫君の席だ。
アーサーはさりげなくそのまま彼女の隣に座った。
「レディ・リドル? その人は……?」
「おや、どちら様?」
ソファの後ろから聞こえた固い声に、アーサーがふり仰げば、そこには細い黒縁の眼鏡をかけてアッシュブロンドの長い前髪を左側だけ下ろした男が立っていた。
年の頃はネイサンと同世代、几帳面さが服を着ているような容貌の男だ。
「あ、えっと……し、執行部長のキース・アストレイ様です。えっと……」
「アーサー・ヴァスト。アストレイ家のご令息とお会いできるとは光栄です」
セシリアの紹介と事務局の中心にいることから、この場を指揮する者かとアーサーは判断し、如才ない笑みをキースに向けた。アストレイは魔術家系の名門侯爵家だ。序列は少しばかりヴァスト家のが勝る。
「横着な挨拶で失礼。貴殿の索敵魔術の術式展開の方法論、大変興味深く参考にさせてもらっています」
「それは……どうも」
「どうしてこちらにと問われるなら、遠縁のネイサン・リドルが大変な剣幕で彼女と魔塔に向かったので、後始末が必要かと思ってね。なにより面白そうだっ!」
アーサーがそう言えば、しばらくの沈黙の後、キースとセシリアは揃ってため息を吐いた。
******
どうして……お兄様まで……と、セシリアは軽くめまいを覚えていた。
悪目立ちする小ぶりなソファは、キース・アストレイが用意し指定した席だ。エヴァから経緯を聞いた彼から、対戦する二人を刺激しないためと説明された。
アーサーが座ったことで、一人だけ目立つ状態からは解放されたものの、これはこれで心臓に悪い。
(クリストファー様がこの場にいないのは幸いかも……)
鋭い彼のことだ、絶対に怪しむ。
同じ屋敷に住む、遠戚の少女だから妹同然という理屈で、アーサーは普段通りを突き通す気でいるようだけれど。
「しかし、魔塔が邪魔だね」
「お兄様がいらっしゃるまで、わたしも考えてて……隠れていた方がいいけれど、二人の対戦は見たくて」
「考えてなんとかなるものではないでしょう。レディ・リドル。私も執行部でなければ……」
眼鏡の中心を指で押し上げて呆れ顔を見せたキースのぼやきに、セシリアは黙考する。
彼も見たいらしい。それはそうだ、一流同士の魔術戦なんて魔術師にとって学びが詰まっている。繰り出される魔術だけではない。使い方や応用の仕方、発動タイミングや威力など、人により見るべき点は様々ある。
ざわめきや遠目に見える範囲で、中庭に面した窓という窓、回廊という回廊、満員御礼のようだ。
(ここは完全に塔に遮られているし、他の場所だって、戦闘場所の全部は見えない)
たしか記憶の中の図案化された術式の中にあったはずだ。指定範囲の情報を信号化し写し出すものが。
「……なる、かも?」
セシリアの隣で彼女の小さなつぶやきを聞き漏らさなかったアーサーが、腕を組んで軽く寄りかかるように彼女に体を傾け「なんとかなるかい?」と小声で尋ねる。うーん……と握った手を口元にセシリアは小さく唸る。
「……塔に合わせ拡大……指定範囲の書き込み……あ、エンコードも……それと貼り付け条件……」
「なんだい? 魔法魔術は専門外だ」
「えっと、複写した術式が歪んだり、縦横の比率なども合わないと、上手くいかなくて……」
ひそひそアーサーと話し、セシリアは軽く唇を噛む。前世なら拡大なんて角を斜めに引っ張るだけでいい、比率も専用ソフトを使えば補正できる。だがこの世界はそうはいかない。計算し、術式を書き換えなければいけない。
(それに、塔の防御結界も重要……)
「あ、あの……アストレイ様っ」
セシリアはキースを仰ぎ見た。
クリストファーの、《白焔》と呼ばれる魔術を見たい。規格外の魔力と緻密な制御に長けた彼だから出来る、高精度高威力な白き火属性魔術だ。
「そのっ……塔は完全封鎖ですよね? 出入りがなく結界も揺らがない……」
「当然です。いくら特殊結界が物損なしにするとはいえ、危険素材もある塔を特殊結界内に入れられません。万一事故った時にも備え、完璧に固めています」
「でしたら、いけます!」
セシリアは勢いよく答えた。キースに尋ねながら、同時に計算もしていた。書き換え箇所も解析済みだ。
あとは塔の防御結界が固い殻のようであれば表面に貼れる。
「あ、この場所、特等席になると思います。塔の真正面ですから」
「は? いや……レディ? 貴女、一体なにを……」
すくっとソファから立ち上がってセシリアは、キースの困惑をよそにてくてくと塔の前へと進み出る。
イメージは前世の世界にあった、ビルの大型モニタ。
なにしろ魔塔は真四角にそびえ立つ塔である。それも透明の強固な結界の殻に包まれた状態。
結界、すなわち魔力が通っている。
四面すべてに複写した術式を貼り付け、接続すれば、結界の魔力で術式を一斉起動できる。大画面で四方向からライブビューイングが可能なはずだ。
「レディ・リ――」
セシリアは目を閉じて集中する。無数の魔術式がきらめく思考世界に沈み込めば、呼びかけるキースの声も周囲のざわめきもすべて聞こえなくなる。
ぶかぶかした作業用ローブの右腕をすっと持ち上げて、セシリアは薄青の目をわずかに開いた。
彼女自身は知らない。クリストファーが真理の高みから世界を見下ろすようだと感嘆した、賢者然とした眼差し。
――『七貴石と効能の書』第十七章、第二節から第十八節。
あるはずのない開いた書物を読むように、微量な魔力で術式を編むセシリアの姿が、燐光のように淡く青白い光に包まれて南庭を仄かに照らす。
塔の四つの表面が切り取られたように四角く金色に光り、観戦に集まった魔術師達がどよめく。しかしどこからか伝わってくる厳粛な静けさをまとう術式の気配を感知し、いつしかただ呆然と塔を見つめるだけになっていった。
「すごいすごい!」
おそらくいまこの魔塔内で唯一の一般人、アーサーが手を叩いて感嘆する声に意識を戻したセシリアは、ふうっと息を吐いて塔を見上げる。
塔の表面に、ネイサンとクリストファーがいる北庭の情景が映し出されている。像が歪んだり結界に干渉したりすることなく、上手く貼り付けられたようだ。けれど改善の余地もある。
「高さは塔の十階程度、北庭と東西の中庭半分まで、でっでもまるで見えないよりはっ……い、いいですよね……アストレイ様?」
振り返ってあんぐりと口を開けて塔を見上げるキースに、少し申し訳なさそうにセシリアが尋ねるも返事がない。やっぱり全部見えなきゃ駄目だったかなと……セシリアは反省する。
「あの、えっと……次はもっと……」
『――この大バカ娘っっっ!!!』
「ひゃぅっ!」
キースに次回はもっと上手くすると伝えかけて、突然、頭上から降ってきたネイサンの怒号にセシリアはほとんど反射的に頭を抱えて縮こまった。
(あれ、でもどうして……音声までは無理なのに?)
塔の画面を見上げれば、隅になにか細い糸のようなものがちらりと見えた。
映像ではなにかよくわからない。
なんだろうと首を傾げたセシリアの耳に、今度はクリストファーの笑い声が聞こえる。
『あはははは! すごいね、レディ! なにをしたのかあとで詳しく教えて』
『どうせ間抜けな顔して見上げてんでしょうがっ! ったく、言っとくけどこれ魔術じゃないから』
『知っているよ、魔術の構成要件から外れてる。術式の特殊転写技術。なるほど防御結界を使って……』
『そこまでよ、魔塔主様』
『そうだね、いまはリドル卿が先だ』
気が合いそうな二人だけどねえ、とソファからのんびりとそう言ったアーサーに手招きされて、セシリアは元の場所へと戻ってちょこんと腰掛ける。
「映像も音声も一方通行のようだ」
「……レディ・リドル、その……あれは、どのような?」
ソファの背もたれの後ろから、眼鏡を指で押さえてそろりと尋ねてきたキースに、どのようなもなにもとセシリアは少しばかり焦りながら答える。
「ええと、使える術式を少し変えてぺたっと貼っただけ……です」
「貼る?」
「ああああとで、ちゃんとっ、剥がしますっ……!」
「いえそうではなく……後ほど魔塔主に報告を」
「……はい」
全範囲映せるわけでもない。範囲内をただ映すだけで二人の表情などはあまりわからない。よかれと思ってとはいえ、威厳ある塔に中途半端なものを貼り付けてしまった。
しょんぼりうなだれると、アーサーに怒られたわけではないと思うよと慰められる。
「あ、でも声はわたしでは……」
『赤髪のでかいのに尖塔の拡声の魔術に繋げさせたわ。思いついたのはアタシでも魔塔主様でもなく、学生だけど』
『リドル子爵っ! わ、わたしはそういえば尖塔にって言っただけですよっ!』
『発想ってのは大事なのよ。これ見ればわかるでしょうが。誰が魔塔の防御結界をこんな使い方するってのよ』
『あー、まあ……』
『おい、派手な前座も終わった。俺達も離れるぞ』
『あ、待ってくださいー』
西庭へ退避していくジェフとエヴァの姿が画面の端からふっつりと見えなくなる。映し出す範囲外に出たのだろう。それにしても音声がつくだけで臨場感がぐんと増す。
「つ、次は……音声もがんばってみよう……っ」
「にこにこ銀髪魔塔主やネイサン・リドルもですが、どこまで斜め上を突き抜ける気ですか……あなた方」
両拳を握ってよしっと言ったセシリアを、キースが呆れた眼差しで見下ろす。
そんな彼の言葉にこれまた魔力波動研究といった、画期的技術の開発に取り組むアーサーが首を傾げた。
「アストレイのご令息。それがその道の性というものでは?」
「これだから天才は、まったく度し難い……起動したようですね」
キイィイイイン――ッ。
金属音にもなにか軋む音にも感じられる、そんな音が魔塔の中庭全体に響き渡った。
大きな音ではない。小さなかそけき音だが、セシリアは空気の震えも感じた。
なにか起きているわけではない。しかしこの中庭を構成する要素の一部が組み替えられるような、見えない断層ができるような、そんな感覚があった。
「なにか妙な雰囲気だね」
「ねぃ……先生の、特殊結界の魔道具です……」
「へえ、これが」
空を見上げれば、塔の十階の高さを頂点に、薄く黄緑色の透明な膜が北庭と東西の庭を覆っている。
そっと、セシリアはキースを見たが平然としている。アルバス出身者にはお馴染みのものなのだろう。
魔塔に属する魔術師の大半はアルバス卒のはずだ。
さて、とキースが黒ローブのポケットから手の中に収まる、半円状の結晶を取り出した。
セシリアがなんだろうと思う間もなく、中庭の四隅からキースの声がしてわかる。前世の道具に置き換えるなら、無線マイクとスピーカーだ。
「午後五時を知らせる鐘で魔術戦を開始する――」
魔法魔術以外の攻撃はすべて無効化され、制限時間は九〇分。制限時間がくれば残存魔力量の低い側は、強制的に魔力を奪われる。
勝利条件の、一方が戦闘不能状態に合わせる形だ。
結界外に出れば失格負け。使い魔等の使役攻撃は有効、しかし第三者介入は無効かつ失格負け……などの説明がキースによって行われ、鐘が鳴るのを待つ。
あと三分ほどだ。それだけあれば両者共に、魔術を展開する準備はできる。
(ネイサンおじさまも、クリストファー様もほとんど詠唱や道具なしで高度な魔術が使える……)
「楽しみだねえ、どちらが勝つと思う?」
「アーサー殿、愚問では? リドル卿とはアルバスで同期生でした。彼は強い。しかし魔力量で圧倒的な差がある以上、魔塔主の圧勝でしょう」
「そういうものかい?」
「魔塔の一員だからではなく、魔術師なら誰もがそう考える。見所は勝敗ではなく卓越した魔術の応酬ですよ」
その解説はもっともであり、正しい。だがセシリアは少々疑問に思える。
(クリストファー様の魔力は圧倒的だけど……たぶん初回は負けるのじゃないかな……だって)
時間を知らせる鐘が鳴り、セシリアは考えを中断させられた。
鐘の音が止むと同時に、中庭も塔の画面も白い閃光に真っ白に塗り潰される。
(白焔!? 違う、これは目くらまし)
光に染めげられた半球体の頂点に、ひらりと白い鳥のような影を見つけてセシリアは目を細める。
(白焔のための時間稼ぎと、上から撃つ気だ……)
クリストファーのローブがひらめき、キラッと銀色の光が瞬いた。
高温の炎を凝縮させた白い光の筋が放射状に放たれ、鳥籠の檻を描くようにネイサン目掛けて襲いかかる。
白焔、と複数の声が聞こえてすぐ、連続した凄まじい爆音と共に土煙が結界内に立ちこめた。
地面に残る白い炎の余韻が煙を揺らし、ガラガラと飛び散った土や砕けた石畳の欠片の落ちる音が、残響のように鳴っている。
各門の建物や回廊から見物する人々は、初っ端から放たれた魔術の威力に慄き、静まり返っていた。
「……閣下も容赦のない。一瞬で勝負ありかな?」
アーサーの言葉にセシリアは眉を顰める。
「いいえ、まだです。おそらく先生は……」
ガラッと、足場を軽く蹴り上げる音が、特殊結界内の音声を届ける尖塔から降ってくる。
ああやっぱりと、薄れていく土煙の中、長く真っ直ぐな髪をなびかせて立つ影にセシリアは思った。
『ま、大体、この手の奴等は初手から叩き込んでくるのよね』
ネイサンは地上にいる。しかし尖塔の高みから彼が話しているような錯覚をセシリアは起こした。そんな高慢さと余裕に満ちた声。ネイサンの姿が見え、驚愕する人々の声に中庭がどよめく。
無理もない。かつて翼竜を四体を正確に撃ち抜き瞬殺した白焔を、まともに受けたのだから。本当なら地面に倒れ伏し、四肢がばらばらになる負荷に魔力も削られ戦闘不能になっているはずだ。
「なっ、無傷だとっ!? いくら結界術でも防げるものでは……っ」
「違います」
キースの言葉をセシリアは否定した。ネイサンは結界術にも長けている。クリストファーの執務室に押し入った時、放たれた彼の攻撃を当たり前のように弾くほど。だがそれは彼の手の一つに過ぎない。
きっとアルバスにいた頃は、そう見せかけていたのだろう。
『やはり、あの結界術は欺瞞か』
『勘はいいようね。でも、気がつくのが少し遅くない?』
クリストファーも察したようだ。
ネイサンには攻撃が“当たらない”。
上位精霊のリトラの攻撃すら防ぎ切るのだ。だって。
「ネイサンおじさまの空間魔術は無敵です……身体から数センチ、わたし達のいる空間と溝が……その境界上で力の向き加減も捻じ曲げていて、それは物にも付与できます……」
最初から仕組んでた。セシリアは胸の内でひとりごちた。
執務室でクリストファーの攻撃を弾いた一手も、執務室を空間ごと区切るのも結界術でも出来る。ネイサンはクリストファーに結界術に長けると印象づけた。
『魔塔主様ともあろう者が!』
たしかにクリストファーは容赦ない、けれどネイサンを警戒したからこその攻撃だ。
執務室を区切る魔力を感知しても、どんな魔術かまではわからない。
結界なら、その強度を上回る魔力を叩き込めば、撃ち抜き砕くことができる。違っていても損はないとクリストファーは初手から撃つ。ネイサンにダメージを与え、次の攻撃を繰り出すために。
「どんなに威力のある攻撃も、当たらないんじゃ意味ないねえ」
アーサーの言葉にセシリアはうなずき、キースが生唾を飲みこみ喉を鳴らした。
始まる前からの心理戦。それにしても後始末(=迷惑かけた示談)に来たはずのアーサーはほぼセシリアのことしか気にしていません笑
振り回され執行部長キースの心中は「どいつもこいつも化け物じみてる」です。
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