3-5:アルバスの悪魔
どうしてこんなことになっているのだろう……。
セシリアは深いため息を吐きそうになるのを抑え、扉側の壁の前に立っていた。
背後の壁には、彼女が拙い線で描いた地図が貼られている。ネイサンの指示で、丸めて作業用ローブの内側のポケットに差し込み持ってきたものだ。壁に傷がつかないよう貼り付けているのはクリストファーの魔術である。
(局地的な風圧で留めてる風属性魔術。圧縮された無駄のない魔術式、行使できる魔力もすごい……けど、いまは全員どうでもいいみたい)
「――と、いうわけよ。これは明らかに魔術師の領分。そうじゃないこの弟子がこれ以上関わる案件じゃない」
ネイサンに促されて、東部のペトラ病と竜害についての調査結果の説明をし終えたところだ。
いま、セシリアの前にある、ソファセットの向かって右側の長椅子にはネイサンが、真ん中を陣取り足を組んで座っている。左側の二つ並べた一人掛けの奥にはジェフ、手前にはジェフの臨時補佐扱いになったエヴァが腰掛けていた。
(小規模な討伐が方々で重なって、ジェフさん付きの魔術師まで駆り出されて臨時補佐らしいけれど……まだ学生なのにすごい)
セシリアの視線に気がついたエヴァが、にこっとふわふわした髪と同じ栗色の目を細める。離れていて声を掛けたわけでもない。どう反応していいか分からず、セシリアは結局恥じらうように目を伏せる。
(貴族の社交なら、王族を除いて一番序列が上になるから、話しかけるのを許してあとは相手の語り掛けに応じるだけでやり過ごせるけど……うぅ)
前世の感覚もあり、この世界での人付き合いがいまひとつわからない。そんなセシリアの悩みなどよそに、ネイサンが調査報告をふまえて話を進めている。
「大体、この娘のヴァスト家の伝手も利用し調査させてること自体、王の直臣に対する越権行為じゃないかしらね。魔塔主様?」
「人から魔力を奪い、移動させる魔法魔術的干渉……十日もしないうちにここまで検証を進めてくれるとは、さすがと言う他ないね。レディ・リドル」
セシリアの真正面。最奥の執務机の席。
ソファと同じ黒革張りの立派な椅子にクリストファーは座っていた。机に右腕を立て頬杖をついて、にこやかにセシリアをほめる。
ネイサンの言葉は完全に黙殺している。怖い。棘をまぶしたネイサンの嫌味も、凍える気配をまとった穏やかさでそれを流すクリストファーのにこやかさも。
氷色の眼差しをまともに見る勇気がなく、セシリアは頭に被っている作業用ローブのフードの端を両手で掴んでさらに目深に引っ張ってうつむく。
そんな彼女の耳に、ひそひそとエヴァとジェフが話す声が聞こえてくる。
「……ジェフさん、これってちょっとまずくないですか?」
「それより、俺は本当に嬢ちゃんの言う通り、扉ごとぶち抜いて乗りこんできたのが衝撃だ……魔塔だぞここ。でもって、あの嬢ちゃんのアレ、精霊……か?」
「<深園の解錠師>様の説明といい、もう、色々と理解が追いつきませんね」
セシリアはそろりと視線を動かし、執務室の入口を見た。
床に倒された扉は壁にはめ直されている。ふよふよと尻尾のような足を動かし、リトラが職人のように小さな手でペタペタと、土属性魔法で仮止めした枠と崩れた壁を固めて修復している。
ネイサンの「おとぼけに修復させりゃいいでしょ」の一言で、セシリアが愛玩動物の白リスとして、びくびくしながら隠してきたリトラの秘密はあっさり開示された。隠せと言ったのはネイサンであるのに。
「でかい赤髪の青二才、アンタ馬鹿なの? 魔塔に侵入できる悪人が、馬鹿正直に鍵開けて入るわけないでしょうが」
「っ! たしかに!」
(そんなのネイサンおじさまくらいで、自分で悪人って言ってるも同じぃぃ……!)
セシリアは心の中で叫ぶが、心の中の声は誰にも伝わらない。
綺麗に扉を蹴破ったネイサンは、同時に入口が崩れないよう支える魔術も施していた。
ついでに言えば、いまこの執務室はネイサンによって箱のように区切られている。
(きっと蹴破る前かな。騒ぎになってないから、下の階には音も衝撃も伝わっていない)
落ち着き払ってジェフとエヴァをこの場に待機させた、クリストファーも察しているようだ。
ネイサンの魔術が珍しいと言ったのは、扉を蹴破ったことに対してではないとセシリアは考える。
「実地で危機意識の甘さを指摘してくれるとは、リドル卿は親切な方だ」
「いーえ、それほどでも」
執務室にネイサンが足を踏み入れた時の、張り詰めた空気を思い出すだけでセシリアは身がすくむ。
ネイサンが扉を蹴破ってすぐさま、白い閃光が襲ってきたのを彼はわざわざ結界術で弾いた。きっと手の内を隠すためで、まだ企みがありそうで怖い。
一瞬の高度な魔術の応酬と駆け引き。その直後にセシリア達を穏やかに迎えたクリストファーも怖い。
(せっかく良好な関係を築けそうだったのに……殺される……魔塔の襲撃犯として処理される……)
「もちろん嫌味ですよ。辺境伯領やペトラ病に関しては解錠技法だけでなく、魔法魔術に精通した見識者としての支援も国王陛下に了承いただいている。ヴァスト家についてはレディ・リドルの厚意としか……」
「ク、ククククリストファー様の……仰る通り、です」
「鳩みたいに鳴きながら同意してんじゃないわよ、アンタも」
「でも、わ、わたしが引き受けたお仕事なのでっ」
うつむけていた顔を上げ、セシリアがネイサンの琥珀色の目をまっすぐに見て言えば、ふんっと鼻であしらわれた。ひどい。ぐすんと再びセシリアがうつむくと、柔らかな美声が鋭さを宿して「レディ」と呼びかけた。
「リドル卿は、君に対しいつもこんな態度なのかな」
怖くてクリストファーの顔を見ることができないが、明らかに怒気を含んでいるとわかる。彼の言葉を肯定したのにどうして怒るのかわからない。魔塔を襲撃した罪に問われると恐れるセシリアは混乱する。
「……え……と、あの……」
「はっ、甘い顔もしながらやっぱりそうやって威圧してんじゃないの」
「あ、あああ……ネぃ……せっ、先生。そうだけどそういうわけでは……」
「は? なによ」
「リドル卿。たしかに魔塔主の立場で<深園の解錠師>はぜひとも招きたい存在だ。けれど僕は魔術師としてレディ・リドルに敬意を払っている」
思いがけないクリストファーの言葉に、セシリアはうつむけていた頭を少しだけ持ち上げる。いまのこの状況で、彼からそんなことを言われるとは思わなかった。
(もしかして、処刑はない?)
喜んだのも束の間、セシリアの希望を打ち壊す感じの悪さで、ネイサンがクリストファーを嘲笑う声を漏らす。どうしてそんなに挑発的なのか、もうやめてほしい。
「敬意? この娘を魔術界に認めさせるのに二年もかかった若輩者が。こっちは解錠技法の前からこの娘の師で、弟子への態度をとやかく言われる筋合いないわね」
「若輩者なのは認めますよ。しかし卿も、彼女の師である以前に元教育者として問題ありでは? ヴァスト家のつながりで巡り合ったというだけで大きな顔をされても困る」
「ああああの……敬意とか態度とかそういうのいいので……その……やめて……」
「なに言ってんの、アンタの安全保障の話でしょうがっ! 王家といい魔塔といい都合よく、この貧相な小娘に寄ってたかって、アタシがどんだけ苦労してると思ってんのよアンタは!」
「ご、ごめんなさいぃぃっっ!」
バンッ! と執務机を両手で叩く音がして、白ローブの袖をひらりと揺らしてクリストファーが立ち上がる。
その音につい、彼の姿を見てしまってセシリアは固まった。彼女の過去を呼び起こす、あの冷ややかな眼差しが、セシリアではなくネイサンへと向けられている。
「卿こそ……彼女の才能や活躍を認めて尊重しては? 先ほどの調査報告も途中にしても成果は大きい。解錠技法ではなく彼女の知見と才気を僕は必要としている。卿は弟子をご自分の所有物と思い違っているようだ」
どうして……と、セシリアは口の中でつぶやく。
「おまけに僕とあの男をうまく牽制し合うよう仕向けて、都合よくとはよく言う……」
クリストファーがなににそんなに怒っているのか、さっぱりわからない。
セシリアはもう混乱の極みだった。二人ともちっともセシリアの言葉を聞いてくれないし、その応酬が一往復するたびにどんどん険悪さを増している。
「なんのことやら。この娘を尊重しないって? はっ、この娘は王家とも魔塔とも関わる気はないの。魔塔主様もそれを察したから、本人に直接ではなく王城経由で魔塔にこさせたのよねぇ」
「っ……!」
たしかにネイサンの言う通りだ。
クリストファーも痛いところを突かれたように顔を顰める。
セシリアは王家とも魔塔とも関わりたくない、関わりたくないけれど、いまは少しだけ違ってきている。
「魔塔に取り込む気でいて、まるで庇護者のような物言いするとこ、本当似た者親子よ」
「先生っ、そこまで言わなくても! く、クリストファー様も落ち着いてっ! わ、わたしはっ……そう、じゃなく……て……」
悪辣な琥珀色の目と、冷ややかな氷色の目。二つ同時に向けられ上手く言葉にできずセシリアは縮こまった。
もはやペトラ病と竜害の関係性も東部のことも関係なく、何故かセシリアに焦点を当てて険悪なネイサンとクリストファーをとりなす術もなくおろおろすることしかできない。
そんな彼女に、うわぁとエヴァがつぶやき何故か気の毒そうな目を向けられる。
「私のために争わないで! って感じですねえ」
「違うぅぅ……」
「なによ、アンタは本当に」
セシリアが弱々しく否定したのとほぼ同時に、はあっとネイサンがため息をつく。
そしてエヴァへと顔を向け、少しばかり懐かしそうに琥珀色の目を細めた。
「そっちの下っ端。アルバスの制服ね。どうして学生が魔塔主の執務室に?」
「あ、はい。第五学年のエヴァ・コレットです。一応、初級魔術師で、魔塔にはアルバイトに。本当は庶務ですが、いまは臨時で魔塔主補佐の補佐で、こちらのジェフさんについてた時にリドル子爵がドッカンと……」
「お前、そうぺらぺら喋んなよ」
呆れ顔でジェフがエヴァの額を軽く指先で小突く。魔術師に平民出身者は珍しい。そのためなのか平民出のこの二人は上司部下というよりは、歳の離れた友人のように親しい。
「えー、自己紹介の範囲ですよ。機密なら守秘義務契約が働いて喋れないし」
内部情報は漏らせない契約魔術を結んでいることを、口元に人差し指を当ててエヴァは答える。セシリアも部外者のはずだが契約を結んでないのは、王の直臣で王城から派遣の形できているからかもしれない。
官吏や技官には守秘義務がある。破れば最悪極刑もありえる。
(そういえば、そんな処刑フラグもあった……)
「アルバス……そうね、言い合ってても埒があかない」
「先生……?」
「魔塔主様はマーゴット・ディズベリーの弟子よね? なら白黒つけ方は一つじゃない?」
にっ、と口の端を釣り上げてクリストファーを顧みたネイサンの言葉に、これまた迎合するように氷色の目を細めたクリストファーを見て、セシリアはなにかものすごく嫌な予感を覚えた。
「条件は?」
「アタシが勝ったら、この娘の意思を尊重すること」
「いまでもそのつもりでいるけれど。では僕が勝ったら師公認ということで。引き分けはなし」
「当然、どちらか戦闘不能になるまでよ」
戦闘不能などと物騒な単語が出てきて、セシリアは急に二人してなんの相談と顔を引きつらせる。そんな彼女の疑問に答えるように、ジェフが声を上げた。
「ちょっと待てクリス! まさかリドル卿と模擬戦やる気か!」
模擬戦とは、専用の特殊結界内で行われる魔術戦だ。
どうしてそうなるのと、ますます混乱したセシリアは顔色を青くする。
「今日は一般公開日ではないから中庭は使えるよね。実技試験用の結界なら用意もすぐできる」
「あんなちゃちな結界じゃお話になんないでしょ。持ってきて正解ね」
茶色がかった灰色のフロックコートのポケットから、ネイサンは大人の手に乗る大きさの真鍮製の立方体をこの場にいる者に見せるように取り出した。
それはアルバスの術式複写可能な古代遺物を模した、模擬戦用の特殊結界を作る魔道具。
誰より早く反応したのはジェフだった。いつもの人をからかう兄貴分な調子ではなく、真面目に低めた声音で隣に座るエヴァへ声をかける。
「執行部の連中に諸々状況を伝えて手筈を整えてくれ。時間は稼げても止められる気がしない……」
「はい。でもこれ私闘ですよね?」
「あー、王城にも一報入れとくか。結界効果はあるが、あくまで本人の決定ってことで」
ジェフの言葉にエヴァがソファから立ち上がる。
「あ、あの……」
「大丈夫です。<深園の解錠師>様はどーんと構えていれば!」
そうじゃなくてぇぇ……っ、リトラに扉を開けてもらっているエヴァを見送りながら、セシリアは胸の内で訴える。
何故、魔術戦? それもセシリア自身がまるで戦利品みたいな扱いに?
本当に、どうしてこんなことになっているのだろう……涙ぐみながら、すんとセシリアは鼻を鳴らした。
*****
愛されすぎるのも大変だなあと、実に人並みな感想を抱きながら執務室を出たエヴァは廊下の階段を降りていく。
「可愛いですもんねえ<深園の解錠師>様。小動物系な感じで、なのに魔法魔術の知識と演算はごりごりの強者ってとこがまた。魔塔主様も彼女には甘いし……んふふ。あ、でも下は大変なことになってるかも」
最上階の一階下に執行部はある。
上で扉が蹴破られ、魔塔主が侵入者に攻撃を放ち、さらにそれが弾かれる騒ぎが起きている。さぞ執行部は大慌てだろうと慣れ親しんだ部署にやってきたエヴァは、何事もなく人々が仕事を粛々と行う光景に呆気にとられた。
「え、どうして?」
「コレット嬢、そんなところに立ち塞がれると邪魔なのですが」
「あ、アストレイ執行部長。丁度よいところに!」
背後から声をかけられて振り向いたエヴァに、執行部長キース・アストレイは迷惑そうに細い黒縁の眼鏡の中心を指で押し上げた。
眼鏡と、左側だけ下ろしたアッシュブロンドの長い前髪が特徴の彼に、真っ先に出くわすなんて幸運だ。
「実は、魔塔主様の執務室が襲撃を受けまして」
「は? なんの冗談です?」
「本当です。で、色々あって襲撃者の方と魔塔主様が模擬戦することになりました。ジェフさん曰く、魔塔主様本人の決定だと、一応、王城に一報入れとけとのことです」
エヴァが伝えた内容に、キースは固まった。
数えて五秒、停止した魔道具が再起動するように緑色の瞳の焦点がエヴァと合う。
「あの馬鹿……魔塔主補佐はどこにいる」
「ジェフさんですか? いま時間を稼いでくれてます。一触即発って雰囲気ですから急いだ方がよさそうです」
「……どうやら、冗談ではないようですね。まったく経緯がわからない。順を追って説明を、コレット嬢」
はい、かくかくしかじかで、執行部に来てみればいつも通りで驚きましたと、エヴァがクリストファーの執務室で起きたことを手短に説明する。
「この魔塔に……襲撃者は……ネイ、サン……」
半分も話さないうちからうなだれ、両肩をわなわなと震わせていたキースは、握りしめた拳と共に顔を上げると執行部内に響き渡る声で叫んだ。
「ネイサン・リドルだとおおおお――っ!」
それまで、忙しく立ち働いていた人々の音とざわめきがぴたりと止んで、執行部中がしん……っと、静まり返る。
がっと、エヴァの両二の腕を掴み、キースが切羽詰まった表情で詰め寄ってくる。
「本当っに、ネイサン・リドル本人か? 近年、解錠技法がらみで名は目にするが、魔術界には依然として姿を見せないっ」
「ええと、わたしはお顔を知らないので。でもおそらくご本人かと。<深園の解錠師>様といらして、魔塔主様は“リドル卿”、解錠師様も“先生”と呼んでいましたから……あのぉ」
近いです、とエヴァが言えば、はっと我に返ったようにキースは彼女から離れた。
「失敬。たしかにそんな襲撃が起きて騒ぎにならない芸当……アルバスの悪魔に他ならない」
「アルバスの、悪魔……?」
首を傾げたエヴァに、キースはアルバス生が知らないのかと訝しむ。
「そうか、もう辞めて十年以上……伝説も廃れたか。あの男は私と同期生です。在学中に飛び級し、さらに上級魔術師を取って強制卒業。上級講師、教授と駆け上がり、たった二期だが教室主宰となった」
早口で聞かされた経歴がすさまじい。エヴァもアルバスで飛び級してはいるが初級魔術師がやっとだ、次元が違う。
上級魔術師は教授の必須条件。魔術師の上位二割。強制卒業にもなる。
「だが人格は最低最悪! 受講生の天才奇才秀才ことごとく半殺し以上の目に合わせた地獄の指導者。だがその約半数が“二つ名”持ちになってもいる」
「え?」
「魔術師の師弟関係は強いですからね。色々あってアルバスを辞め、魔術界から忽然と姿を消した」
魔塔、特に執行部所属で正規員の魔術師は、圧倒的にアルバス卒が多い。
執行部はキースと同年代と少し上の世代が主力だ。
ふとエヴァが執行部を見渡せば、室内の執行部員が固唾を飲んでエヴァとキースのやり取りを見守っている。
「近年、<深園の解錠師>の師にして養父と名は出るものの、本人の姿はない。弟子にやられて死んだ噂もある。我々世代は半信半疑でした。あの低姿勢で可憐なレディ・リドルを見ればなおさら信じ難い」
「たしかに態度も口もものすごく悪い方ですね」
「コレット嬢、模擬戦用の特殊結界はネイサン・リドルの魔道具だったな」
「はい、アルバスで使用するものそっくりでした」
「そうか……」
戸惑うエヴァの前で、すうっとキースが深く息を吸い込む。
そして、執行部の長たる威厳と声量をもって、彼は命じた。
「手を止めろ、諸君! 魔塔主より、<アルバスの悪魔>ネイサン・リドルと対戦の通達があった! 尋常ならざる魔術戦闘が想定されるため、現時点より第一級警戒を発令するっ!」
キースの号令に、それまで各自の仕事をしていた人員が一斉に慌ただしく動き出す。
こんな執行部、大型討伐の準備でもエヴァは見たことがない。
「塔内の魔法魔術実験はすべて停止し、可能な限り各門施設へ退避! 防御結界は二十分後に全出入口を完全閉鎖する! これから割り振る執行部所属の人員以外、中庭への立ち入りは一切禁止だ! まず各所への連絡を急げ!」
(え、えええっ!? なにこれ、どういうこと!?)
「コレット嬢、あの馬鹿とにこにこ銀髪魔塔主には三十分待てと伝えてください」
「あ、はい」
「ったく、ただでさえ国内各所で小規模討伐が起きて人員不足の、この糞忙しい時に!」
うがーっと吠えて頭を掻きむしりながら己の机に向かうキースにお気の毒……とつぶやき、エヴァは彼の伝言を届けるため魔塔主の執務室へ戻った。
前々から互いに微妙に気に食わないが、つのりにつのっての初対面。二人の執着には無頓着なセシリアです。
なお、クリストファーに「父親に似ている」は回帰人生の確執の記憶もあって地雷です。それをセシリアを絡めてわざと踏み抜くネイサン……。
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